トンネル栽培とは
トンネル栽培(とんねるさいばい)とは、畝の上にアーチ状の支柱を設置し、農ポリ、農ビ、農PO、不織布、防虫ネットなどの被覆資材で作物を覆う栽培方法です。英語では「Tunnel Cultivation」または「Low Tunnel Cultivation」と表現します。
主に低温期の保温、風や霜の影響軽減、作期の前進などを目的として行われます。使用する被覆資材によっては、降雨や害虫の侵入を抑える用途にも利用できます。
露地栽培で利用されるほか、ビニールハウス内に小型のトンネルを設け、保温性を補う場合もあります。トンネルの大きさや設置時期は、作物の種類、栽培地域、生育段階などによって異なります。

トンネル栽培の特徴と主な効果
低温期の保温と生育促進
透明なフィルムで被覆すると、日中は日射によってトンネル内部の気温が上昇します。地表からの熱の移動や風による熱損失も変化するため、被覆条件によっては地温の維持・上昇にも役立ちます。
この効果を利用して、寒い時期の発芽や苗の活着、生育を促し、露地栽培より収穫時期を早める作型が行われています。
ただし、トンネルは暖房設備ではありません。日没後は内部の気温が低下し、夜間から早朝には外気温に近づくことがあります。フィルムで覆っていても、強い冷え込みによる凍害を防げるとは限りません。
低温に弱い作物や寒さの厳しい地域では、べたがけ資材の併用や、被覆方法、品種、栽培時期の見直しを検討します。
風・降雨・害虫からの保護
トンネル被覆には、強風による葉の損傷や乾燥を軽減する効果もあります。農ビや農POなどの連続したフィルムを使用すれば、降雨が作物へ直接当たることも抑えられます。
一方、不織布や防虫ネットは通気性や透水性を持つため、フィルムと同じ雨よけ効果は期待できません。
防虫ネットを用いる場合は、対象害虫に適した目合いを選び、裾や端部の隙間をできるだけなくすことで、外部からの侵入を抑えます。ただし、すでに作物に付着している害虫や、土壌中に生息する害虫まで防げるわけではありません。
トンネル栽培の温度管理と換気
晴天時の高温障害を防ぐ
透明フィルムで覆ったトンネルは、春先や冬の晴天日でも内部温度が急激に上昇することがあります。
温度が作物の適温を超えた状態が続くと、高温障害や生育不良、品質低下などにつながります。特に苗の活着期や生育初期は、温度変化による影響を受けやすいため注意が必要です。
換気には、フィルムの裾や端部を開ける方法、フィルムに換気孔を設ける方法、あらかじめ穴の開いた有孔フィルムを利用する方法があります。
必要な換気量は、作物の種類、生育段階、地域、日射、外気温、風、トンネルの大きさによって変わります。すべての作物に共通する換気開始温度や開孔率は設定できません。
実際の管理では、作物の高さに近い位置でトンネル内気温を確認し、必要に応じて地温や土壌水分も測定します。有孔フィルムを使用していても、高温時には追加の換気が必要になる場合があります。
湿度と結露の管理
フィルムでトンネルを密閉すると、蒸発や蒸散によって内部の湿度が高まり、被覆材の内側に結露が生じることがあります。
高湿度が長時間続くと、作物や病原菌の種類によっては病害の発生を助長します。例えば、灰色かび病などが問題となる作型では、温度だけでなく湿度や葉の濡れにも注意します。
ただし、低温時に換気を増やしすぎると、保温効果が低下することもあります。気温、湿度、天候、作物の状態を確認しながら管理します。
トンネル栽培に使用する被覆資材
トンネル用の被覆資材は、保温性だけでなく、光の透過特性、通気性、作業性、耐久性などを考慮して選定します。
| 被覆資材 | 主な特徴と選定時の注意点 |
|---|---|
| 農ポリ | ポリエチレン系のフィルム。比較的軽量で扱いやすいものが多く、短期被覆などに利用されます。夜間の保温性能は製品仕様を確認します。 |
| 農ビ | 塩化ビニル系のフィルム。保温用途に利用され、製品によって柔軟性や防滴性能などが異なります。 |
| 農PO | ポリオレフィン系のフィルム。保温性や光線特性を調整した製品、有孔タイプなどがあります。 |
| 不織布 | 通気性を持ち、風や霜の影響軽減などに利用されます。透明フィルムとは昇温特性や透水性が異なります。 |
| 防虫ネット | 害虫の侵入抑制を主目的とする資材。目合い、糸径、通気性、固定方法によって防虫性能が変わります。 |
農ポリ、農ビ、農POの性能は素材の種類だけでは決まりません。同じ分類でも、厚さ、保温性能、光線透過率、防滴性能、有孔・無孔などの仕様が異なります。
特に低温期の栽培では、製品の保温性能を確認したうえで、必要な換気量や使用期間とのバランスを考えます。
トンネルの設置と管理で注意すること
支柱と被覆材の固定
トンネルの幅や高さは、畝幅、作物の草丈、生育後の葉の広がりなどを考慮して決めます。
支柱は、フィルムの張力や風による荷重に耐えられる間隔と深さで設置します。被覆材の端部や裾を確実に固定し、風によるばたつきや飛散、破損を防ぎます。
固定には、トンネル用のバンド、押さえ具、土留めなどが使われます。パッカーを使用する場合は、支柱やパイプの直径、被覆材との適合性を確認してください。
水分管理と被覆の撤去
連続したフィルムで雨を遮る場合、降雨による水分補給は期待できません。栽培期間中は土壌の乾燥状況を確認し、必要に応じて灌水します。
また、作物が大きくなると葉がフィルムに接触したり、トンネル内部が過密になったりすることがあります。生育段階に応じてトンネルの高さ、換気方法、撤去時期を見直します。
果菜類では、開花・受粉期の管理にも注意します。虫媒受粉を必要とする作物では、被覆の開閉や撤去が訪花昆虫の利用に影響するため、作物ごとの受粉方法と栽培暦に合わせて管理します。
トンネル栽培と他の被覆方法の違い
トンネル栽培と似た方法に、キャップ栽培、べたがけ、マルチングがあります。いずれも作物の生育環境を調整する技術ですが、被覆する範囲や目的が異なります。
- トンネル栽培:畝の上にアーチ状の支柱を設置し、複数の株や畝の一部をまとめて覆う方法です。保温、風よけ、作期調整などに利用します。
- キャップ栽培:主に定植直後の苗などを、小型のキャップで株ごとに覆う方法です。局所的な保護に適しています。
- べたがけ:不織布などを作物や畝の表面に直接、または緩くかける方法です。通気性のある資材を使い、霜や風の影響軽減、防虫などを目的とします。
- マルチング:主に土壌表面をフィルムなどで覆う方法です。地温調節、雑草抑制、土壌水分の保持などを目的とし、地上部を囲うトンネル被覆とは異なります。
トンネル栽培とマルチング、べたがけを組み合わせる場合もあります。ただし、被覆を重ねるほど必ず生育がよくなるわけではなく、光量や換気、温湿度の変化を考慮する必要があります。
トンネル栽培で誤解されやすいこと
- フィルムで覆えば凍害を防げる:夜間は内部温度が外気に近づくため、被覆だけでは凍害を防げない場合があります。地域の最低気温と作物の耐寒性を確認して対策を選びます。
- トンネル内は暖かいほどよい:高温によって苗の障害や品質低下が発生する場合があります。作物と生育段階に応じた温度管理が基本です。
- 有孔フィルムなら換気管理は不要:開孔率や孔の配置によって換気性能は異なり、日射や風の条件によっても内部温度が変わります。実測温度に応じた管理が必要です。
- どの被覆資材でも雨よけ・防虫効果は同じ:不織布やネットは水や空気を通すため、連続したフィルムと同じ効果にはなりません。目的に合う資材を選びます。
- 被覆すれば水分管理を省略できる:フィルムで降雨を遮ると土壌が乾燥する場合があります。地温だけでなく、土壌水分も確認します。
トンネル栽培の参考動画
トンネル栽培では、支柱の組み立て方やフィルムの固定方法が作業性と耐風性に影響します。基本的な施工方法を確認するには、次の動画が参考になります。
【家庭菜園】トンネル1.骨組み作り・杭打ちと支柱の固定
JAとぴあ浜松・とぴあch(営農指導員監修)
トンネルの骨組み作り・杭打ちと支柱の固定(YouTube)を見る
フィルムの展張や固定、裾上げについては、JAとぴあ浜松が公開している続編も参考になります。
動画について:この動画は、トンネルの基本的な設置作業を理解するための参考資料として紹介しています。農材ドットコムが制作・管理している動画ではありません。動画の内容や公開状況、URLなどは公開元の都合により変更される場合があります。また、支柱の間隔、フィルムの固定方法、換気方法などは、作物、栽培地域、資材、気象条件によって異なります。
関連する資材分類・農業用語
- トンネル栽培用(農PO)
- トンネル栽培用(農ビ)
- 一般農ポリ
- べたがけ資材
- 防虫ネット・防虫網
- シート押さえ・マルチ押さえ
- パッカー(資材分類)
- キャップ栽培
- パッカー
- 被覆資材
- 換気
- 高温障害
- 日射量
- 防滴
- マルチ
参考資料
- 農研機構掲載「ニンジンの3月どりトンネル栽培における厳寒期の温度管理」(徳島県立農業試験場)
- 農研機構掲載「レタス用トンネル簡易換気装置と利用法」(香川県農業試験場)
- 千葉県「春夏どりニンジンを省力・低コストに作れるべたがけ栽培」
- 大阪府「軟弱野菜における有機栽培マニュアル」(農林水産省サイト掲載)
- JA埼玉中央「トンネル栽培に挑戦 冬も菜園を有効活用」
- JAとぴあ浜松「トンネルの作り方」(動画付き)
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