フッ素フィルム(ETFE)

フッ素フィルム(ETFE)

農業用フッ素フィルム(ETFE)とは

農業用フッ素フィルム(ETFE)とは、
エチレンとテトラフルオロエチレンからなるETFE
(エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体)を主材料とした、
長期展張用の被覆資材です。
主に屋根型ハウス、ダッチライト型ハウス、鉄骨丸型ハウスなどの外張りに使用されます。

ETFEフィルムは高い光線透過性と耐候性を持ち、
長期間使用しても光学特性や機械特性が変化しにくいことが大きな特徴です。
農業用では、透明タイプだけでなく、
紫外線の透過を調整したタイプや散乱光タイプなどが用意されています。

代表的な農業用ETFEフィルムである「エフクリーン®自然光」は、
60μm品で全光線透過率が約94%とされています。
日射量の少ない時期にも施設内へ光を取り込みやすい被覆材ですが、
透過する光の量だけでなく、紫外線や散乱光などの光質も製品によって異なります。

フッ素フィルムの耐用年数

農業用ETFEフィルムは、農ビや一般的な農POよりも長期間の展張を想定した製品です。
現在のエフクリーン®では、厚さごとに次の耐用年数目安が示されています。

  • 60μm:10~20年
  • 80μm:15~25年
  • 100μm:20~30年

これらはメーカー保証年数ではありません。
実際の使用期間はフィルムの厚さ、ハウス構造、固定方法、
風・雪・飛来物、摩擦、鳥害などの条件によって変わります。

長期間使用できるため張替え回数を減らせる可能性がありますが、
経済性はフィルム価格だけでは判断できません。
ハウス本体、専用固定部材、施工費、補修費、
将来の張替え費まで含めて比較します。

長期展張の実績

エフクリーン®では、1989年に埼玉県深谷市の農業用ハウスへ展張されたフィルムが、
36年間交換せず使用された事例があり、
2026年に農業用温室フィルムの長期連続使用としてギネス世界記録に認定されています。

これは長期耐久性を示す実使用事例ですが、
すべての施設で36年間使用できることを保証するものではありません。
製品ごとの耐用年数目安と施工条件を基準に選定してください。

光の透過特性で製品を選ぶ

ETFEフィルムでは、作物や施設用途に合わせて光の透過特性を選択できます。
単純に「透明度が高いほどよい」と判断する資材ではありません。

自然光タイプ

自然光タイプは紫外線を含む太陽光を多く施設内へ取り込みます。
ナスやイチゴなど、アントシアニンによる着色に紫外線が関係する作物や、
ミツバチを利用する栽培などで選択肢になります。

紫外線をよく透過するため、
内張りフィルムや樹脂部品などハウス内部資材の劣化が早まる場合があります。
内部資材には耐候性も確認してください。

UVカットタイプ

UVカットタイプでは、紫外線の透過量を抑えることができます。
エフクリーン®ではGR80、GRUVなど、
紫外線カット性能の異なる製品が設定されています。

紫外線は作物の着色や生育だけでなく送粉昆虫の行動にも関係します。
UVカット率だけで製品を決めないでください。
作物、品種、地域、送粉昆虫の利用条件を確認して選定します。

散乱光タイプ

ナシジタイプは太陽光を散乱させ、
ハウス骨材による影を減らしながら作物群落へ光を分配することを目的とした製品です。
より多くの葉へ光が届きやすくなるため、
光合成に利用できる光の分布を改善できる場合があります。

散乱光の割合や、結露時の透明性は製品によって異なります。
透明タイプと散乱光タイプのどちらが適するかは、
作物、栽培時期、地域の日射条件、ハウス構造から判断します。

施工・使用上の注意点

固定部材と施工方法を製品に合わせる

ETFEフィルムは耐候性・機械強度に優れていますが、
強風時のばたつき、固定部との摩擦、飛来物などの外力によって破損することがあります。

アルミ押え材、垂木、ビスなどの固定部材は、
使用するフィルムとハウス構造に適合したものを使用します。
長期展張ではフィルムだけでなく、
固定部材の腐食やビスの緩みも定期的に点検してください。

流滴面を傷付けない

農業用ETFEフィルムには、
内面へ防滴(流滴)処理を施した製品があります。
表裏を間違えると本来の性能を発揮できません。

流滴処理面を強くこすると処理層が損傷し、
流滴性能が低下することがあります。
施工時にはフィルムの表裏とメーカー表示を確認してください。

雨水をフィルム上にためない

天窓などでフィルム上に雨水がたまると、
水がレンズのように太陽光を集め、
ハウス内部のシートや資材が高温になって損傷する場合があります。
水が滞留しない構造と排水状態を確認します。

鳥害にも注意する

長期耐久フィルムでも鳥による突き傷や穴あきは防げません。
鳥害が発生する地域では防鳥対策を行い、
破損した場合は指定された補修材・補修方法で対応します。

降雨時の音が気になる場合がある

ETFEフィルムは薄い膜材であるため、ハウス構造やフィルムの張り方、降雨の強さなどの条件によっては、
雨滴が当たる音が大きく感じられる場合があります。

実際の農業現場でも、他のフィルムからETFEフィルムへ張り替えた後に、
降雨時の音が大きくなったと感じられた事例があります。
ETFE膜構造では降雨音が音響上の検討事項になることも報告されています。

ただし、雨音の大きさはフィルムの材質だけで決まるものではありません。
フィルムの厚さや張力、屋根形状、骨材の間隔、ハウスの規模、降雨強度などの影響を受けるため、
PETフィルムや農POなどとの音の差を一律に判断することはできません。

焼却しない・メーカーの回収方法に従う

ETFEフィルムを自己判断で焼却してはいけません。
エフクリーン®についてメーカーは、
加熱するとフッ化水素ガスなどの有害な分解ガスが発生するため、
火の中へ投入しないよう警告しています。

エフクリーン®では、展張時の端材や使用済みフィルムを対象とした回収システムが設けられています。
他のフィルムや異物を混入させず、
専用回収袋などメーカー指定の方法に従って分別・回収します。

回収方法は製品や販売経路によって変更される場合があります。
廃棄・回収時には、購入した販売店またはメーカーへ最新の手順を確認してください。

フッ素フィルム(ETFE)取り扱いメーカー・代理店

製造・発売元製品名・製品群用途分類特徴・注意点
AGC株式会社(製造)/AGCグリーンテック株式会社(販売)エフクリーン®自然光農業用ハウス外張り高い光線透過性と紫外線透過性を持つクリアタイプ。60μm品の全光線透過率は約94%。ナス・イチゴなどの着色やミツバチを利用する栽培などで採用実績がある。紫外線をよく通すため内部資材の耐候性にも注意。
AGC株式会社(製造)/AGCグリーンテック株式会社(販売)エフクリーン®自然光ナシジ農業用ハウス外張り・散乱光自然光タイプの散乱光フィルム。骨材の影を減らし、太陽光を作物群落へ分配する。結露時には直達光の割合が増える特性がある。
AGC株式会社(製造)/AGCグリーンテック株式会社(販売)エフクリーン®GR80農業用ハウス外張り・UVカットガラスに近い紫外線カット性能を持つクリアタイプ。作物・品種・送粉昆虫の利用条件を確認して選定する。
AGC株式会社(製造)/AGCグリーンテック株式会社(販売)エフクリーン®GRUV農業用ハウス外張り・UVカットエフクリーンのクリアタイプで最も高い紫外線カット率を持つ。作物の着色や送粉昆虫への影響を含め、用途適合を確認して使用する。
AGC株式会社(製造)/AGCグリーンテック株式会社(販売)エフクリーン®GRナシジ農業用ハウス外張り・散乱光・UVカット散乱光機能と紫外線カット性能を組み合わせたタイプ。トマト、キュウリ、パプリカ、花きなどで採用実績がある。
AGC株式会社(製造)/AGCグリーンテック株式会社(販売)エフクリーン®ソフトシャイン遮熱・遮光・特殊施設白色タイプ。可視光線透過率約14%、日射熱取得率24%。一般的な果菜類ハウスの透明外張りとは用途が異なり、苗生産、きのこ、畜産、養殖、倉庫などで使用。
AGC株式会社(製造)/AGCグリーンテック株式会社(販売)エフクリーン®グレー高遮光・特殊施設可視光線を99%以上カットするグレー色タイプ。一般的な作物栽培用透明被覆ではなく、畜舎、養殖、きのこ、作業場などの高遮光用途向け。受注生産品。
AGC株式会社(製造)/AGCグリーンテック株式会社(販売)エフクリーン®サイドハウスサイド・妻面ハウスサイド専用ETFEフィルム。未流滴品のため屋根面への使用は不可。サイド巻上げ、妻面、固定カーテンなどに使用。

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