果樹用マルチ

果樹用マルチ

果樹用マルチとは

果樹用マルチとは、果樹園の地表面を覆い、太陽光の反射、降雨の遮断・調整、土壌水分の管理、雑草抑制などを目的として使用するシート・フィルム類です。

一般的なマルチと同じく地表面を覆う資材ですが、果樹用では白色や銀色などの反射面を利用し、樹冠内や果実周辺へ反射光を届ける用途が多くあります。

果樹用マルチを敷けば、必ず果実の糖度が上がるわけではありません。

反射光による着色促進と、降雨を遮って根域の水分状態を調整する作用は分けて考える必要があります。

果樹用マルチの主な作用

反射光による着色・受光環境の改善

白色や銀色のシートは太陽光を反射し、通常は光が届きにくい樹冠内部や果実の下側などへ光を届ける目的で利用されます。

リンゴ、カンキツなどでは、反射資材によって果実の着色改善を図る栽培があります。

ただし、着色は反射光だけで決まりません。
品目、品種、成熟度、気温、日射量、樹冠構造などにも影響されます。

降雨遮断と根域の水分管理

防水性や撥水性を持つシートで地表を覆うと、降雨が根域へ直接入る量を抑えることができます。

温州ミカンなどのカンキツでは、収穫前の根域を適度に乾燥させることで、果汁のBrixが高くなる場合があります。

ここで重要なのは、「白色シートが糖を作る」のではなく、水分管理によって果実品質が変化する場合があるという点です。

水分ストレスを強くしすぎると、果実肥大の抑制、小玉化、酸が高く残ること、樹勢低下などにつながる場合があります。

降雨を大きく遮断する栽培では、必要なときに灌水・かん水できる設備や管理方法も合わせて検討します。

雑草抑制

光を遮る構造を持つ果樹用マルチでは、シート下の雑草生育を抑えられる製品があります。

効果はシートの遮光性だけでなく、継ぎ目、端部、樹幹周辺の開口部、破損部分などにも左右されます。

反射性能が高いことと、雑草抑制性能が高いことは同じではありません。

地表面の温度・水分への影響

マルチを敷設すると、日射の吸収・反射、土壌からの水分蒸発、降雨の浸入などが変化します。

地温への影響は、色だけでは判断できません。
材質、反射率、透水性、被覆率、季節、土壌条件などによって変わります。

果樹用マルチの種類

シートタイプ

白色反射層、フィルム、補強材などを組み合わせた複合シートがあります。

着色促進を主目的とする有孔タイプ、降雨遮断や水分管理を目的とする無孔タイプなどがあり、同じ製品シリーズでも仕様が異なる場合があります。

不織布タイプ

繊維から構成された白色シートなどを利用するタイプです。

反射性、透湿性、透水性、防水性は製品構造によって異なります。
「不織布だから水を通す」「不織布だから水を通さない」と素材名だけで判断しないでください。

アルミ蒸着・アルミ箔タイプ

アルミ蒸着層やアルミ箔などを利用して光を強く反射させるタイプです。

製品によってフィルム、織物、補強層などとの複合構造になっています。
透水性や透湿性は構造によって異なるため、水抜き孔の有無も確認します。

樹脂織物タイプ

ポリエチレンなどの樹脂製織物を基材とするタイプです。

強度や耐久性を持たせやすく、繰り返し使用を想定した製品もあります。
表面処理や積層構造によって反射性、遮光性、防水性などが異なります。

果樹用マルチの選び方

最初に使用目的を決める

「果樹用」という表示だけで選ばないでください。

果実周辺への反射光を増やしたいのか、降雨を遮って根域水分を管理したいのか、雑草を抑えたいのかによって必要な性能は変わります。

例えばリンゴなどで着色補助を主目的とする場合と、温州ミカンで降雨を遮って水分ストレスを調整する場合では、同じ反射マルチでも選定条件が異なります。

透水性・透湿性・水抜き孔を確認する

果樹用マルチでは、シート表面から水を通すのか、雨水を遮るのかが栽培管理を大きく左右します。

「有孔」「無孔」「微細孔」「透湿」「防水」などの表示を確認し、目的と園地条件に合った製品を選びます。

園地の排水と雨水の流れを確認する

傾斜地や排水条件の悪い園地では、マルチ表面を流れた雨水が一部へ集中することがあります。

全面を覆えばよいとは限りません。

敷設前に、雨水をどこへ排出するのか、シート外周から根域へ水が流入しないかを確認します。

降雨を遮る場合は灌水方法まで設計する

温州ミカンで果実品質向上を狙って雨水を遮断する場合、乾燥させ続ければよいわけではありません。

必要以上の水分ストレスは果実肥大や樹勢へ影響します。

点滴チューブなどをマルチ下へ設置し、必要時に水分を補給できる方式も利用されています。

固定方法と耐久性も確認する

果樹園では風、草刈り、収穫作業、人の歩行などによってシートが破損することがあります。

反射率や価格だけでなく、使用期間、固定方法、補修性、回収・再利用の可否まで含めて比較します。

果樹用マルチでよくある失敗

「白い反射シートなら糖度が上がる」と考える:
糖度やBrixは反射光だけでは決まりません。特にカンキツでは根域の水分状態、降雨、灌水、着果量、成熟度などを合わせて判断します。

雨を遮るのに灌水手段を用意しない:
過乾燥によって小玉化、酸高、樹勢低下などが起こる場合があります。雨を遮断するほど、水を与える手段も必要になります。

排水を考えず全面を覆う:
シート上を流れた雨水が園地の一部へ集中すると、根域への流入や土壌流亡など別の問題につながります。傾斜、排水路、被覆方向まで確認します。

素材名だけで性能を判断する:
不織布、樹脂織物、アルミ蒸着などの分類だけでは、透水性、防水性、透湿性、反射特性は判断できません。実際の製品仕様を確認します。

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