糖度計(糖度測定器)

糖度計(糖度測定器)

糖度計(糖度測定器)とは

糖度計(糖度測定器)とは、果実・野菜の果汁や各種液体について、
主にBrix(ブリックス)を測定・推定するための測定器です。
農業では、果実品質の確認、収穫時期の判断、選果、出荷基準の確認、
栽培試験などに利用されています。

一般的な携帯型糖度計には、果汁をプリズムに載せて屈折率を測る屈折式糖度計と、
果実を切らずに光を照射して糖度を推定する非破壊糖度計があります。

ただし、糖度計で表示されるBrix値を
「果汁に含まれる糖そのものの割合」と考えるのは正確ではありません。
果汁には糖類だけでなく、有機酸、アミノ酸、無機成分などさまざまな可溶性成分が含まれており、
屈折式糖度計ではこれらも屈折率に影響します。

Brix(ブリックス)とは

Brix(ブリックス)は、ショ糖水溶液の濃度と屈折率の関係を基準として表される値です。
ショ糖だけを水に溶かした標準的な溶液では、Brix値とショ糖の質量濃度を対応させることができます。

一方、果実や野菜の果汁にはショ糖以外の糖類、有機酸、アミノ酸、ミネラルなども含まれています。
そのため、農産物で測定したBrix値は、
実務上「糖度」と呼ばれることが多いものの、
糖の含有量そのものを直接分析した値ではありません。

例えばBrix 12%の果汁を、
「果汁100g中に糖が必ず12g含まれている」と解釈することはできません。
糖類そのものを正確に定量する場合は、糖度計ではなく成分分析が必要です。

糖度計の主な種類

屈折式糖度計

果汁などの液体をプリズム面に載せ、
光の屈折率からBrix値を求める方式です。
農業現場で最も一般的に利用されています。

屈折式には、目盛を目視するアナログ式手持屈折計と、
センサーで屈折率を読み取って数値表示するデジタル式糖度計があります。
デジタル式も測定原理としては屈折式に含まれます。

  • アナログ式:電源を必要とせず構造が比較的簡単。目盛の読み取りやゼロ調整が必要です。
  • デジタル式:測定値を数値表示でき、機種によって自動温度補償、防水、測定データ保存などの機能があります。
  • 必要な試料:通常は果汁を数滴採取するため、測定した果実は一部を切る、搾るなどの処理が必要です。

非破壊糖度計

果実へ可視光や近赤外光などを照射し、
透過光や反射光などの情報からBrix値を推定する測定器です。
果実を切ったり搾ったりせずに測定できるため、
収穫前の調査、全数検査、選果などに利用されています。

ただし、非破壊糖度計は糖を直接分析しているわけではありません。
基準となる糖度データと光学データから作成した検量線などを用いて糖度を推定します。
そのため、対象作物、品種、果実の大きさ、果皮、温度、測定位置などによって測定精度が変化する場合があります。

非破壊糖度計を選定する際は、
「測定できる作物か」だけではなく、
対象品種に対応した検量線が用意されているか、
メーカーが示す測定条件や精度を確認する必要があります。

糖度と「甘さ」は同じではない

Brix値は農産物の品質を評価する重要な指標ですが、
Brixが高ければ必ず食味が良いとは限りません。

果実の食味には糖類だけでなく、有機酸、香気、食感、水分、熟度などが関係します。
特に果実では、糖度と酸度のバランスを示す糖酸比が
甘味と酸味のバランスを判断する指標として利用されることがあります。

したがって、品種や作物をまたいでBrix値だけを比較し、
「Brixが高い作物ほど甘く、おいしい」と判断することは適切ではありません。
同じ作物・品種・収穫条件で品質を比較する指標として利用する方が、
糖度計の使い方として適しています。

糖度を正しく比較するための測定方法

糖度データを栽培管理や品質比較に利用する場合は、
測定器そのものの精度だけでなく試料の採り方を揃えることが重要です。

  • ゼロ調整:機種の取扱説明書に従い、蒸留水や精製水などでゼロ調整・校正を行います。
  • 測定温度:屈折率は温度の影響を受けるため、機器の使用温度・温度補償範囲を守ります。
  • 測定部を清潔にする:前の試料、果汁、洗浄水などが残ると測定値が変化します。
  • 試料を均一にする:果実内でも部位によって糖度が異なるため、比較試験では採取部位や搾汁方法を統一します。
  • 複数果を測定する:1果だけの値を圃場やロット全体の糖度として扱わず、複数の果実を同じ基準で測定します。
  • 測定条件を記録する:品種、収穫日、果房・着果位置、成熟度、測定時刻などを揃えることで、データの再現性が高くなります。

栽培管理との関係を調べる場合は、
糖度だけでなく日射量、
灌水・かん水量、
EC、
収量、果実重なども記録すると、
糖度変化の原因を判断しやすくなります。

糖度計の選び方

抜き取り測定なら屈折式

収穫前や出荷時に一部の果実を抜き取って確認する用途では、
手持屈折計やデジタル糖度計が利用しやすく、
比較的低コストで導入できます。

測定数が多い場合はデジタル式

測定件数が多い場合は、
数値表示、自動温度補償、防水性能、データ保存機能などを備えたデジタル式が便利です。
ただし「デジタル式だからアナログ式より必ず高精度」という意味ではありません。
測定精度、分解能、温度補償範囲などの仕様を確認してください。

果実を傷つけたくない場合は非破壊式

収穫前の果実を継続して測定したい場合や、
選果・出荷前に多数の果実を測定する場合には非破壊糖度計が適しています。
一方、対象品目や品種への適合、検量線、使用環境などの確認が必要で、
屈折式糖度計と単純に測定精度だけを比較することはできません。

測定範囲を確認する

糖度計にはそれぞれ測定可能なBrix範囲があります。
一般的な青果物を測定する場合と、
濃縮果汁、ジャム、蜂蜜などを測定する場合では必要な測定範囲が異なります。
使用目的に合った測定範囲の製品を選択してください。

糖度計(糖度測定器)取り扱いメーカー・代理店

製造・発売元製品名特徴
三井金属計測機工株式会社QSCOPE-DT果実・青果物の糖度や内部品質を非破壊で測定する卓上型検査装置
三井金属計測機工株式会社QSCOPE-mobile青果物の内部品質を非破壊で測定するモバイル型装置
株式会社アタゴPAL-1Brix 0.0~53.0%に対応するポケット糖度・濃度計。果汁などを数滴で測定
株式会社アタゴMASTERシリーズアナログ式の手持屈折計。測定範囲や材質の異なる各種モデルを展開
株式会社アタゴPAL-光センサー果実にセンサーを当ててBrixを推定するポケット型非破壊糖度計。対象果実別モデルあり
株式会社アタゴPEN-J挿す・浸す・当てる方法で測定できるペン型デジタル糖度・濃度計
株式会社アタゴPaletteシリーズ果汁・食品などのBrix測定に対応するデジタル糖度・濃度計
京都電子工業株式会社ポータブル糖度計 BX-1Brix 0~85%、測定精度±0.2%。果実・野菜・飲料などを約2秒で測定
京都電子工業株式会社屈折計 RA-620/600恒温機能を備えた高精度卓上屈折計。研究・品質管理用途向け
株式会社メカトロニクス非破壊糖度計 N-1α果実を傷つけずに約1~2秒で糖度を推定する携帯型非破壊糖度計
株式会社佐藤計量器製作所手持屈折計 Rシリーズ果汁などのBrix測定に使用するアナログ式手持屈折計。測定範囲別モデルあり
ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社デジタル屈折計 HI 96801Brix 0.0~85.0%、自動温度補償・IP65。果汁などを数滴で測定
高森コーキ株式会社TKR-1 デジタル糖度計 果樹名人Brix 0.0~53.0%。自動温度補正・IP65相当の携帯型デジタル糖度計
株式会社クボタフルーツセレクター K-BA800/K-SS900LC近赤外分光分析技術を利用し、青果物の糖度・酸度・内部障害などを非破壊で評価
千代田電子工業株式会社非破壊測定器 おいし果近赤外方式の非破壊測定器。CD-H200、CD-H300、CD-T100など対象作物・用途別モデルを展開

糖度計を栽培管理に利用する際の注意点

糖度計は、収穫適期や品質変化を把握するための有効な測定器ですが、
糖度の値だけから栽培状態を診断することはできません。

例えば果実への水分供給が減少した場合、
果実中の水分が少なくなることでBrix値が高くなる場合があります。
しかし、それだけを理由に「栽培状態が改善した」「品質が向上した」と判断すると、
果実肥大の低下や収量減少、水分ストレスなどを見落とす可能性があります。

糖度と灌水・かん水管理の関係を見る場合は、
体積含水率、
pF値、
EC、
果実重、収量、草勢なども併せて確認する必要があります。

また糖度は、光合成、
日射量、
温度、着果負担、葉面積、成熟度など複数の条件の影響を受けます。
糖度計は原因を直接診断する機器ではなく、
作物品質を数値化するための一つの測定手段として利用することが重要です。

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