トンネル栽培用(農PO)とは
トンネル栽培用の農POとは、
畝の上に設置したトンネル支柱へ被覆して使用する
農業用ポリオレフィン系フィルム(農PO)です。
主にトンネル栽培で使用し、
低温期の保温、風からの保護、降雨の遮断などを目的に利用されます。
製品には、透明タイプ、散乱光タイプ、
換気用の孔を設けた有孔タイプ、
防滴剤を練り込んだタイプなどがあります。
農POだから同じ性能になるわけではありません。
保温性、光線特性、孔の配置、厚さ、柔軟性などを作型に合わせて選びます。
有孔タイプは換気作業を省力化できる
晴天時のトンネル内は短時間で温度が上昇します。
このため、無孔フィルムでは裾を開ける、穴を開けるなどの
換気管理が必要になる場合があります。
有孔タイプは製造段階で換気孔を設け、
トンネル内の過度な昇温を抑えながら換気作業を省力化する製品です。
住化積水フィルムの「ベジタロン アナトン」や、
東罐興産の「トーカン エアーパス」、
みかど化工の「ユーラックカンキ」などが該当します。
有孔フィルムでも、高温時の換気が不要になるとは限りません。
必要な開孔率や孔配置は、作物、播種・定植時期、地域、トンネル寸法、
日射量などによって変わります。
有孔フィルムの種類は「穴が多いほどよい」という基準では選べません。
保温性と高温抑制は別の性能として考える
トンネル被覆では、日中に太陽光によって内部温度が上昇する一方、
夜間は外気温に近づきます。
被覆しただけで夜間の低温を十分に防げるとは限りません。
作物や時期によっては
べたがけ資材などを併用します。
反対に、晴天時には保温性の高いフィルムほど内部が高温になる場面があります。
低温から守ることと、
高温障害を避けることは同じ管理ではありません。
日中の換気と夜間の保温を分けて考えます。
透明タイプ・散乱光タイプを使い分ける
透明タイプは直達光を多く取り込む製品が中心です。
散乱光タイプは入射した光を分散させ、
トンネル支柱や葉による影を減らしたり、
局部的な強光を緩和したりすることを目的としています。
散乱光フィルムには葉焼けや急激な昇温の抑制を目的とした製品がありますが、
散乱光だけで高温管理を代替することはできません。
作物、葉量、時期、天候によって効果は変わるため、
必要に応じて換気と組み合わせます。
防滴タイプは表裏を確認する
農POには、フィルム内面の結露水を膜状に広げて流れやすくする
防滴性能や、
霧・モヤの発生を抑える
防霧性能を持つ製品があります。
製品によっては表裏が指定されており、逆向きに展張すると
本来の防滴性能を発揮しにくくなります。
印刷文字を外側から正しく読める向きに張るよう指定する製品が多いため、
メーカーの施工説明を確認してください。
トンネル栽培用(農PO)取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名・製品群 | 用途分類 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|---|
| 住化積水フィルム株式会社 | ベジタロン®アナトン® | トンネル専用・換気有孔 | 厚さ0.05mm、幅185・210cm、長さ100m。換気孔によって密閉トンネルより高温障害のリスクを軽減し、換気作業を省力化する練込み型農PO。孔配置は2号・3号・4号。 |
| 東罐興産株式会社 | トーカン エアーパス | トンネル専用・換気有孔 | 多層構造のトンネル専用農PO。透光性・防曇性・耐候性を備え、換気孔によって換気作業を省力化。厚さ0.05・0.075mm、幅185・210cm、2~5号。 |
| 東罐興産株式会社 | トーカンエース NHきらめき | 汎用農PO・トンネル対応 | 外張り・内張り・トンネル等に対応。透明性・保温性を高めた多層農PO。地域により規格が異なるため注文時に確認。表裏指定あり。 |
| タキイ種苗株式会社 | ホットエース | トンネル用・高保温散乱光 | 厚さ0.065mm、幅230cm、長さ100m。散乱光によって急激な温度上昇や葉焼けなどのリスク低減を目的とした高保温型トンネル農PO。 |
| みかど化工株式会社 | 透明ユーラック® | トンネル用・透明 | 流滴処理練込み型。直達光主体の透明タイプ。厚さ0.05・0.075mm。使用時は表裏、両裾の固定、床土乾燥への対策を確認。 |
| みかど化工株式会社 | ソフトユーラック® | トンネル用・散乱光 | 30%散乱光タイプの流滴処理練込み品。厚さ0.05・0.075mm。局部的な強光や葉焼けの軽減を目的とする。 |
| みかど化工株式会社 | 散光(梨地)ユーラック® | トンネル用・散乱光・有滴 | 40%散乱光の梨地タイプ。厚さ0.03・0.05mm。流滴処理品ではなく有滴タイプである点に注意。 |
| みかど化工株式会社 | ユーラックカンキ® | トンネル専用・換気有孔・透明 | 流滴処理練込み型。2~5号、8号、全面微細孔の10号などを設定。作物・時期に合わせた開孔率選定が必要。高温時は裾換気が必要になる。 |
| みかど化工株式会社 | ソフトユーラックカンキ® | トンネル専用・換気有孔・散乱光 | 30%散乱光の換気トンネル用。厚さ0.05mm、幅185・210cm。2号・4号を設定。高温時には裾換気、床土乾燥対策としてマルチまたはべたがけ併用をメーカーが指定。 |
| タキロンシーアイ株式会社 | スカイコート | 汎用農PO・トンネル対応 | 透明・防霧・防滴練込み型。外張り・内張り・サイド・トンネルに対応。厚さ0.05・0.075・0.1mm。表裏指定あり。 |
| タキロンシーアイ株式会社 | クリンテートSK | トンネル対応・遮熱・散乱光 | 近赤外線の低減と散乱光化を目的とした練込み型農PO。外張り・内張り・サイド・トンネル対応。葉焼け・高温障害の抑制が期待されるが、換気の代替にはならない。 |
| オカモト株式会社 | しとやか | トンネル専用 | 厚さ0.05・0.075mm。農ビに近い柔らかな触感と保温力を狙ったトンネル用農PO。軽量で作業性が高く、無水滴性・防塵性を備える。 |
| アキレス株式会社 | ハイベールEX | 汎用農PO・トンネル対応 | 防滴剤練り込み型。外張り・内張り・トンネルに対応。厚さ0.075・0.1mm。透明性・保温性・柔軟性を備える地域限定品。 |
使用上の注意点
開孔率を作物・時期に合わせる
有孔フィルムは孔の数や大きさによって換気量が変わります。
同じフィルムでも、厳寒期と春先では必要な換気量が同じとは限りません。
例えばトンネルニンジンでも、適切な最高気温は作期によって変わり、
換気量が多すぎても少なすぎても生育や抽だいに影響します。
一律の「適正開孔率」はありません。
作物、作型、地域、フィルムメーカーの基準を照合して選定します。
有孔タイプでも温度を確認する
春先など日射量が増える時期には、
換気孔があってもトンネル内温度が上昇する場合があります。
実際にトンネル内温度を確認し、必要なら裾を開けて追加換気します。
「有孔フィルムを使用したから換気管理は不要」と考えるのは危険です。
みかど化工も換気トンネル用製品について、
高温時には裾換気を行うよう案内しています。
土壌の乾燥にも注意する
換気量を増やすと、トンネル内の水分も外へ逃げやすくなります。
発芽期や幼苗期では、床土の乾燥が発芽不良や初期生育の遅れにつながる場合があります。
製品によっては、トンネル内に
マルチや
べたがけ資材を併用するよう
メーカーが指定しています。
使用する製品の栽培方法まで確認してください。
フィルムの両裾を確実に固定する
トンネルは風を受けやすいため、
フィルムの両裾を十分に土留めし、必要に応じて押さえ資材を使用します。
固定不足でフィルムがばたつくと、支柱との摩擦や孔周辺への応力集中によって
破損する場合があります。
「農POは裂けに強いから固定を簡略化できる」という判断は誤りです。
強度は製品ごとに異なり、有孔品と無孔品でも条件が違います。
高温状態で巻いたまま放置しない
農POは巻いた状態や折り重なった状態で直射日光を受けると、
内部が高温になってフィルム同士が融着する場合があります。
施工前や撤去後は日陰で保管し、濡れたフィルムを長時間重ねたままにしないでください。