エアレーションとは
エアレーション(aeration)とは、土壌や培養液などに空気を取り入れたり、空気との接触を促したりして、酸素の供給や気体の交換を改善する操作です。
農業では、主に土壌の通気性を改善する「土壌エアレーション」と、養液栽培などで水中への酸素供給を促す「水中エアレーション」があります。
植物の根は呼吸によって酸素を消費します。根域で酸素が不足すると、根の活動が低下し、水分や養分の吸収、生育に影響する場合があります。
エアレーションの方法は栽培方式によって異なり、土壌と水中では必要な設備や管理方法も違います。
土壌エアレーション
土壌エアレーション(soil aeration)は、土壌中の空気が移動できる空間や通路を確保し、根域の通気性を改善することです。
土壌には、水や空気が存在する「孔隙(こうげき)」と呼ばれる隙間があります。
この孔隙が水で満たされたり、土壌が踏み固められて空気の通り道が減少したりすると、根への酸素供給が妨げられる場合があります。
例えば、農業機械の走行によって土壌が締め固められた圃場では、根の伸長とともに通気性や透水性が制限されることがあります。
土壌の通気性を改善する方法
土壌の状態や改善目的に応じて、次のような方法が用いられます。
- 穴あけ・穿孔(せんこう):エアレーターなどを使って土壌に穴を開け、表層付近の通気性改善を図る方法。芝地などでも利用されます。
- 耕運・耕起:土をほぐし、作土の孔隙や根の伸長環境を改善する方法。
- 心土破砕:締まった下層に亀裂をつくり、水や空気の移動、根の伸長を妨げる物理的な制約の改善を図る方法。
- 排水改善:明渠や暗渠排水などによって過剰な水を排出し、土壌中に空気が存在できる状態を確保する方法。
土壌を耕したり穴を開けたりすれば、必ず通気性や排水性が改善するわけではありません。
過湿状態での機械作業は土壌を練り固める原因になり、土壌構造を悪化させる場合があります。
また、下層に亀裂を形成しても、排水先がなければ過剰な水が十分に排出されないことがあります。
土壌構造との関係
土壌の通気性は、孔隙の大きさや連続性、土壌水分、締まり具合などに左右されます。
団粒構造が発達した土壌では、大小の孔隙が形成され、水分を保持しながら余分な水や空気が移動できる状態になりやすくなります。
エアレーションによって一時的に空隙を増やすことと、良好な土壌構造を長期間維持することは別の問題です。
水中エアレーション
水中エアレーションは、水や培養液に空気を送り込んだり、水面での気体交換を促したりして、水中への酸素供給を改善する操作です。
養液栽培や水耕栽培、アクアポニックスなどで利用されます。
水中に溶け込んでいる酸素を「溶存酸素(DO:Dissolved Oxygen)」と呼びます。
培養液中に根が存在する栽培方式では、根の呼吸によって酸素が消費されるため、酸素供給と消費のバランスを保つ必要があります。
主な酸素供給方法
- エアポンプ・散気装置:空気を培養液中へ送り込み、気泡と水の接触などによって酸素の溶解を促します。
- 培養液の循環・落下:ポンプによる循環や水面への落下などを利用して、空気との接触を増やします。
- 酸素供給装置:酸素ガスの供給や気体透過膜などを利用し、培養液中の溶存酸素濃度を高める方式があります。
気泡が発生していることと、根が必要とする酸素を十分に供給できていることは同じではありません。
培養液の量、液温、循環流量、根の密度、酸素の消費量などによって、実際の溶存酸素濃度は変わります。
液温と溶存酸素の関係
一般に、水温が高くなるほど空気と平衡状態にある水の飽和溶存酸素濃度は低下します。
また、高温条件では根や微生物による酸素消費が増える場合もあります。
特に夏季の養液栽培では、培養液の温度上昇と酸素不足が重なって根の生育に影響することがあるため、液温と溶存酸素の両方を確認します。
水温が高い状態でエアポンプの能力だけを増やしても、根域環境の問題を十分に解消できるとは限りません。
養液栽培にエアポンプは必須なのか
エアポンプが必要かどうかは栽培方式によって異なります。
例えば、根の一部が空気中に露出している方式や、薄い培養液の流れによって根へ水分と酸素を供給する方式では、培養液への強制通気を必要としない場合があります。
反対に、根の大部分が培養液中に浸る方式では、酸素不足を防ぐための供給方法を確保する必要があります。
設備を選ぶ際は、培養液に空気を送り込む機構が必要なのか、根域全体で酸素を確保するための構造や循環制御が必要なのかを区別します。
エアレーションによって期待される効果
エアレーションが適切に行われた場合、次の効果が期待されます。
- 根の呼吸環境の改善:根域の酸素不足を緩和し、根の正常な活動を支えます。
- 根の伸長環境の改善:土壌の緻密化や通気不足が制限要因となっている場合、根の伸長環境の改善につながります。
- 好気性微生物の活動を支える:酸素を必要とする微生物による有機物分解や硝化などが進みやすい環境を形成します。
これらは酸素不足などが生育の制限要因となっている場合に期待される効果です。
酸素供給を増やすほど生育や収量が向上するとは限りません。
また、酸素条件の変化は土壌や培養液中の微生物活動、養分の化学形態にも影響します。すべての微生物にとって酸素供給が有益という意味ではありません。
エアレーションを行う際の注意点
土壌では通気不良の原因を確認する
根の生育が悪いという理由だけで、エアレーション用の機械や作業機を導入しないでください。
土壌の硬さ、締まった層の深さ、水分状態、地下水位、排水先などを確認します。
通気不良の原因が過湿である場合、穴あけや耕起よりも排水設備の改善が必要になることがあります。
養液栽培では根域の酸素状態を確認する
養液タンクで十分な溶存酸素が測定されても、栽培ベッド内で同じ濃度が維持されているとは限りません。
根の発達によって培養液の流れが偏り、一部の根域で酸素供給が不足する場合があります。
必要に応じて、栽培ベッドの給液側・排液側、根の密集部分などの溶存酸素濃度を確認します。
また、酸素不足による根傷みと、病原菌による根腐れは区別する必要があります。
エアレーションは酸素供給を改善する手段であり、病原菌を直接防除する方法ではありません。
設備の能力は栽培条件から判断する
エアポンプや酸素供給装置を選定する際は、培養液量、根量、液温、必要な酸素供給量、配管抵抗、循環方式、運転時間などを確認します。
ポンプの表示風量だけでは、実際に培養液中へ移動する酸素量は判断できません。
設備の導入前に酸素不足の有無と発生箇所を確認し、必要な対策を選びます。
エアレーションの参考動画
土壌エアレーションを理解するには、土の中に空気と水が存在する仕組みを把握することが役立ちます。
日本土壌肥料学会の土壌教育委員会では、土壌中の空気量や水の移動を観察できる動画を公開しています。
土壌教育動画08:土の空気の量
日本土壌肥料学会 土壌教育委員会
土壌中に空気が含まれていることを実験で確認する教材です。土壌エアレーションの基礎となる孔隙の働きを理解する際に参考になります。
土壌教育動画09:土に水をとおしてみよう
日本土壌肥料学会 土壌教育委員会
土に水を通す実験を通して、土壌の透水性や保水性について学べる動画です。
土壌教育動画09:土に水をとおしてみよう(YouTube)を見る
動画について:
これらは、土壌中の空気や水の動きを理解するための参考動画です。エアレーション作業の施工方法や効果を直接検証した動画ではありません。
農材ドットコムが制作・管理している動画ではありません。公開状況やURLなどは公開元の都合により変更される場合があります。
実際の土壌管理では、土質、土壌構造、水分状態、排水条件などを確認して施工方法を判断してください。
関連する資材分類・農業用語
参考資料
- 農研機構「通気や液温制御が不要な保水シート耕方式の養液栽培装置」
- 農研機構「並行複式無機化法と有機質肥料を使ったトマト養液栽培」
- 日本生物環境工学会「水耕トマトの生育段階および栽植方式による栽培ベッド内の溶存酸素濃度と培養液の流れの変化」
- 日本生物環境工学会「養液の溶存酸素濃度とレタスの根呼吸速度」
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