花粉(かふん)

花粉

花粉とは

花粉(かふん)とは、種子植物の有性生殖に関わる
雄性配偶体です。
英語では pollen(ポーレン) といいます。

被子植物では、花粉は
雄しべの
葯(やく)の内部にある花粉嚢で形成されます。
成熟した花粉が葯から放出され、
柱頭へ運ばれて付着することを
受粉といいます。

受粉後、適合する花粉は柱頭上で発芽して
花粉管を伸ばします。
花粉管を通して精細胞が
胚珠へ運ばれ、
受精へと進みます。

花粉そのものを「雄性の生殖細胞」や「精細胞」とする説明は正確ではありません。
花粉粒の内部で形成される精細胞が雄性配偶子として受精に関わります。

花粉ができるまで

被子植物では、葯の花粉嚢内にある花粉母細胞が
減数分裂を行い、小胞子(しょうほうし)が形成されます。
小胞子はさらに発達し、花粉粒になります。

つまり、おおまかな流れは次のようになります。

花粉母細胞 → 減数分裂 → 小胞子 → 花粉粒

このため、
「花粉粒」「小胞子」「雄性配偶子」は同じものではありません。
発生段階や役割が異なるため、区別して扱う必要があります。

花粉の構造

被子植物の花粉粒は、一般に外側の外壁(exine:エキシン)と、
内側の内壁(intine:インチン)に包まれています。

外壁にはスポロポレニンと呼ばれる非常に耐久性の高い物質が含まれ、
植物の種類によって表面の模様や突起などが異なります。
こうした特徴は植物の分類や花粉分析にも利用されます。

花粉粒の内部には栄養細胞(花粉管細胞)と生殖細胞があり、
生殖細胞から形成される精細胞が受精に関わります。
発達段階や植物によっては、葯から放出される時点ですでに
2個の精細胞を持つ場合もあります。

花粉から受精まで

被子植物では、花粉が柱頭に付着しただけでは
受精が成立したことにはなりません。

  1. 花粉の放出:成熟した葯から花粉が放出されます。
  2. 受粉:花粉が柱頭へ運ばれて付着します。
  3. 花粉の発芽:適合する花粉が柱頭上で吸水して発芽します。
  4. 花粉管の伸長:花粉管が雌しべ内部を胚珠へ向かって伸びます。
  5. 精細胞の輸送:花粉管を通じて精細胞が胚珠内へ運ばれます。
  6. 受精:精細胞が卵細胞などと融合します。

「花粉が柱頭についた=受精した」ではありません。
受粉後に花粉が正常に発芽し、
花粉管が伸びて精細胞を胚珠まで届ける必要があります。

花粉はどのように運ばれるか

花粉の運ばれ方は植物によって異なります。
代表的なものに、風、昆虫などの動物、水による媒介があります。

風による受粉(風媒)

風によって花粉が運ばれる方法です。
トウモロコシやイネ科植物、スギなどにみられます。
風媒植物では一般に多数の花粉を放出します。

昆虫などによる受粉(虫媒)

ミツバチやマルハナバチなどの
訪花昆虫が花を訪れ、
体に付着した花粉を別の花へ運ぶ方法です。
果樹やイチゴ、ウリ科作物など、多くの農作物で重要です。

昆虫を引き寄せるのは花粉だけではありません。
花の色、形、香り、蜜など複数の要素が関係します。

水による受粉(水媒)

水を介して花粉が運ばれる植物もありますが、
水生植物すべてが水媒というわけではありません。
水媒は被子植物では比較的少なく、
セキショウモ属(Vallisneria)などにみられます。

農業で重要な花粉の状態

農業では、単に「花粉があるか」だけではなく、
正常に発芽して受精まで進める花粉であるかが重要です。

着果や種子形成を確認する場合には、次のような項目を分けて考えます。

  • 葯が正常に発達しているか
  • 十分な花粉が形成されているか
  • 花粉に発芽能力があるか
  • 葯から正常に花粉が放出されているか
  • 柱頭まで花粉が運ばれているか
  • 柱頭が花粉を受容できる状態か
  • 花粉管が正常に伸長できるか
  • 受精可能な組み合わせか

着果不良を「花粉不足」だけで判断するのは危険です。
花粉量が十分でも、花粉の稔性、葯の開き方、柱頭の状態、
花粉管伸長、温度、湿度、訪花昆虫の活動、品種の受精特性などによって
受精が成立しない場合があります。

高温と花粉

高温は作物によって花粉形成や花粉の稔性、
花粉発芽、花粉管伸長などに影響することがあります。
施設栽培では、開花当日の気温だけではなく、
花粉が形成される開花前の温度も影響する場合があります。

たとえばトマトでは、高温条件によって花粉稔性や受粉率が低下し、
さらに高温になると花粉管伸長も阻害されることが報告されています。

ただし、影響が現れる温度や期間は作物・品種・生育段階によって異なります。
「○℃以上ならすべての作物で花粉が死ぬ」といった一律の判断はできません。

人工受粉と花粉

ナシ、リンゴ、キウイフルーツなどの果樹や、
採種・育種の現場では、花粉を採取して
人工授粉に利用することがあります。

人工授粉では、花粉量だけでなく、
発芽能力、採取時期、乾燥状態、保存温度、保存期間などが結果に影響します。
適切な条件は作物によって異なるため、
花粉を一律の方法で保存・使用することはできません。

花粉と品種改良

育種では、選んだ親同士を交配し、
目的とする形質を持つ個体や系統を作り出すために花粉を利用します。

F1品種の種子生産でも、
目的とする親系統間で確実に交配させることが重要です。
ただし、F1品種を単純に「花粉交雑によって作られる品種」と説明するだけでは不十分で、
親系統の育成や交配組み合わせの選定などを含む育種・採種技術が必要です。

よくある間違い

花粉は精細胞ですか?

違います。
花粉粒は雄性配偶体であり、精細胞そのものではありません。
被子植物では花粉粒内で形成される精細胞が受精に関わります。

花粉粒と小胞子は同じですか?

厳密には同じではありません。
小胞子は花粉母細胞の減数分裂によって形成され、
その小胞子が発達して花粉粒になります。

花粉が柱頭につけば受精しますか?

付着しただけでは受精とはいえません。
花粉の発芽、花粉管伸長、精細胞の輸送を経て、
最終的に受精が成立する必要があります。

水生植物はすべて水媒ですか?

いいえ。
水生植物でも花を水面上に出して昆虫や風によって受粉する種類があります。
「水中で育つ植物=水媒」と判断することはできません。

関連する農業用語

見つからない用語・製品の登録をリクエスト

個人情報の入力は不要です。掲載してほしい名称だけをお知らせください。

登録を希望する情報の種類

最近対応したリクエスト

  • 用語 鉢 掲載しました
  • 用語 がく 既存用語「萼」を再監修致しました
  • 用語 休眠解除 掲載しました