施肥とは
施肥(せひ)とは、作物の生育に必要な養分を補うため、土壌や培地などに肥料を施すことです。英語では「Fertilization」または「Fertilizer application」と表記します。
作物は土壌中の養分を根から吸収して生育しますが、土壌から供給される養分だけでは不足する場合があります。施肥は、そうした不足分を補い、収量や品質の安定を図るために行います。
肥料には、窒素、リン酸、加里をはじめ、カルシウム、マグネシウムなどの養分を供給するものがあります。肥料の種類や施用量は、作物の種類、生育段階、土壌の状態、栽培方法に応じて選びます。
元肥(基肥)と追肥の違い
施肥は、肥料を施す時期によって、主に元肥(基肥)と追肥に分けられます。
- 元肥(基肥):播種や定植の前後を中心に施す肥料です。作物の初期生育を支え、その後の養分供給も考慮して施用します。
- 追肥:作物の生育期間中に追加して施す肥料です。生育状況や養分の消費量などに応じて、施用時期と量を調整します。
元肥と追肥の割合は、作物、土壌条件、作型、肥料の肥効特性などによって異なります。肥効調節型肥料を利用して追肥を省略する栽培方法もあり、すべての作物で追肥が必要になるわけではありません。
主な施肥方法
施肥には、肥料を施す位置や供給方法によって、いくつかの方式があります。
- 全面施肥:圃場全体に肥料を散布する方法です。必要に応じて耕うんし、土壌に混和します。
- 局所施肥:播種条、植え溝、株の近くなど、限られた範囲に肥料を施す方法です。肥料の利用効率を高められる場合がありますが、肥料の種類や濃度、根との位置関係に注意します。
- 灌水同時施肥:灌水水に液体肥料などを混入し、水とともに養分を供給する方法です。点滴灌水と組み合わせる方式は点滴施肥とも呼ばれます。
- 葉面施肥:葉に肥料成分を含む液を散布する方法です。特定の養分を補給する目的などで利用しますが、通常の根からの養分吸収を全面的に代替するものではありません。
どの方法が適しているかは、作物の根の分布、土壌水分、肥料の性質、使用する設備などによって変わります。
施肥量の決め方
施肥量は、肥料そのものの重量だけで判断せず、肥料に含まれる養分の成分量を基準に考えます。
施肥設計では、都道府県の施肥基準を参考にしながら、土壌診断結果、前作の栽培履歴、堆肥などから供給される養分、目標収量、生育状況などを確認します。
特に、土壌中にリン酸や加里が多く蓄積している場合は、それらの成分を追加する必要性を検討し、地域の減肥基準に沿って施肥量を調整します。
肥料成分量の計算例
例えば、窒素・リン酸・加里の成分表示が「8-8-8」の肥料を50kg施した場合、それぞれの表示成分量は次のようになります。
- 窒素:50kg × 8% = 4kg
- リン酸:50kg × 8% = 4kg
- 加里:50kg × 8% = 4kg
一般的な肥料の成分表示では、窒素はN、リン酸はP₂O₅、加里はK₂Oに換算した値を用います。実際には、製品の保証票などで成分の種類と含有率を確認してください。
また、この計算で分かるのは施用した肥料成分量であり、作物が実際に吸収する養分量ではありません。肥料の利用率は、土壌条件や肥料の種類、施用方法などによって異なります。
施設園芸・養液栽培での施肥管理
施設園芸では、降雨による養分の流亡が少ない栽培条件もあり、施肥を続けることで土壌中に肥料成分や塩類が蓄積する場合があります。
そのため、土壌診断で養分の蓄積状況を確認するとともに、必要に応じてEC(電気伝導度)やpHなどを測定し、施肥量を見直します。
養液栽培や灌水同時施肥では、肥料濃度だけでなく、供給する養液量、養分組成、原水の水質、培地の状態なども関係します。栽培方式に応じて、給液や排液のEC・pH、生育状況などを確認します。
ただし、ECだけで個々の肥料成分の過不足を判定することはできません。ECは溶液中のイオンによる電気の通りやすさを示す指標であり、必要に応じて個別の養分分析を組み合わせます。
施肥機を使用する場合の注意点
施肥機や液肥混入器を使用する場合は、設定値と実際の施肥量が一致しているか確認します。
粒状肥料では、粒径、形状、吸湿状態、施肥機の開度、作業速度、散布幅などによって吐出量や散布分布が変わります。使用する肥料で試験散布を行い、実際の吐出量と散布状態を確認してください。
液肥混入器の場合も、設定した希釈倍率が実際の混入濃度と一致するかを確認し、流量や水圧など、機器の使用条件に注意します。
施肥でよくある誤解
肥料を多く施せば、必ず収量が増えるわけではありません。養分の過剰供給は、肥料コストの増加だけでなく、根の生育障害や塩類集積、養分バランスの乱れなどにつながる場合があります。
また、葉色の変化や生育不良が見られても、その原因が肥料不足とは限りません。水分の過不足、根の障害、土壌pH、病害などによっても似た症状が現れます。
施肥量を増減する前に、作物の状態と栽培環境を確認し、必要に応じて土壌や養液、植物体の分析を行うことが適切な判断につながります。
施肥の参考動画
局所施肥が実際の栽培現場でどのように利用されているかを確認するには、次の動画が参考になります。
レタス栽培における局所施肥と生分解性マルチの取組
農林水産省公式YouTubeチャンネル(maffchannel)
レタス栽培における局所施肥と生分解性マルチの取組(YouTube)を見る
動画について:
この動画は、香川県西讃地域のレタス栽培における局所施肥などの取組を紹介したものです。施肥方法を理解するための参考資料として掲載しています。
農材ドットコムが制作・管理している動画ではありません。
動画の内容、公開状況、URLなどは公開元の都合により変更または削除される場合があります。
また、紹介されている施肥方法や施肥量が、すべての作物・土壌条件に適するわけではありません。
参考資料
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