お礼肥とは
お礼肥(おれいごえ)とは、主に果樹などの多年生作物で、収穫後の樹体の回復や、翌年の生育に利用される貯蔵養分の蓄積を目的として行う施肥のことです。
一般には礼肥(れいごえ)とも呼ばれます。
果実を生産した樹では、収穫によって窒素、カリウムなどの養分が圃場外へ持ち出されます。
また、果実の生育には多くの光合成産物が利用されています。
収穫後も健全な葉が残っていれば、落葉まで光合成が続き、翌春の発芽や開花などに利用される炭水化物や養分が樹体内へ蓄えられます。
お礼肥は、この収穫後の樹体の栄養状態を整えるために行われる施肥の一つです。
「収穫した作物には必ずお礼肥を与える」という意味ではありません。
必要性、施肥量、施用時期、使用する肥料は、樹種、品種、着果量、樹勢、土壌、施肥体系などによって異なります。
お礼肥は肥料の種類ではない
お礼肥という名称の特別な肥料があるわけではありません。
お礼肥は、
施肥を行う目的と時期を表す言葉
です。
追肥の一種として位置付けられることがあり、年間施肥体系の中で収穫後などに施用されます。
そのため、「お礼肥には有機肥料を使う」「お礼肥には化学肥料を使う」と一律には決まりません。
実際の肥料選定では、
- どの養分を補給する必要があるか
- いつまで根から養分を吸収できるか
- どの程度速く肥効を出す必要があるか
- 樹勢が強いか弱いか
- 土壌中にどの程度養分が残っているか
などを確認します。
お礼肥の主な目的
収穫によって持ち出された養分を補う
果実を収穫すると、果実に含まれている窒素、リン、カリウムなどの養分も園外へ持ち出されます。
お礼肥には、その後の樹体の養分状態を維持するために必要な養分を補給する役割があります。
ただし、
収穫量と同じ比率で肥料を補えばよいという意味ではありません。
土壌からの供給量、根からの吸収量、葉や枝からの養分転流なども関係するため、年間の施肥体系として考える必要があります。
樹体の回復と貯蔵養分の蓄積を支える
果樹では、翌春の発芽、開花、新梢伸長などに、前年までに樹体へ蓄積された貯蔵養分が利用されます。
収穫後に葉が健全に残っていれば、落葉まで光合成が続きます。
この時期に適正な養分状態を維持することは、樹体の回復や翌年に向けた貯蔵養分の蓄積を支えるうえで重要です。
ただし、
肥料そのものが炭水化物を補給するわけではありません。
炭水化物は葉の光合成によってつくられます。
そのため、お礼肥だけでなく、
- 健全な葉を維持する
- 病害虫による早期落葉を防ぐ
- 極端な乾燥を防ぐ
- 適切な灌水を行う
などの収穫後管理も重要です。
お礼肥と翌年の花芽
果樹では、収穫後の樹体管理が翌年の生育や花芽の充実に関係することがあります。
そのため、お礼肥について「翌年の花芽分化のために施す」と説明される場合があります。
しかし、
お礼肥を施せば花芽分化が促進されると単純に考えることはできません。
花芽形成には、
- 樹種・品種
- 新梢の生育
- 着果量
- 日照
- 水分状態
- 樹体の栄養状態
- 植物ホルモン
など多くの条件が関係します。
また、樹種によっては収穫時点ですでに花芽分化が進んでいます。
したがって、「収穫後に肥料を与えることで翌年の花芽をつくる」という説明は正確ではありません。
お礼肥を施す時期
お礼肥は一般に収穫後に行われますが、
「収穫したら直ちに施す」という一律の基準はありません。
適期は樹種、品種、収穫時期、地域、気温、樹勢などによって異なります。
モモ、ウメ、ナシ、オウトウなど、収穫後も葉が長期間残る果樹では、収穫後の施肥が年間施肥体系へ組み込まれている場合があります。
一方、収穫時期が早い樹種では、窒素の肥効が強すぎると新梢の二次伸長を誘発する場合があります。
逆に収穫時期が遅い樹種では、施用が遅れると地温低下や落葉によって根からの養分吸収量が低下する可能性があります。
お礼肥の施用時期は、暦ではなく対象樹種の施肥基準を確認して決めます。
収穫直後に施すとは限らない
「お礼肥=収穫直後」という説明は、農業現場では注意が必要です。
例えば、収穫後すぐに礼肥を行う施肥体系が採用される果樹があります。
一方、早生の果樹では、収穫直後に窒素を効かせることで新梢の二次伸長が起こり、枝の充実や耐寒性などに悪影響を与える可能性があります。
このため、地域の栽培指針によっては収穫から一定期間を空けて施用する場合があります。
また、ユズなどでは施肥体系上、収穫前に「礼肥」として施用する事例もあります。
したがって、
「礼肥とは必ず収穫後に施す肥料」と厳密に定義することもできません。
重要なのは名称ではなく、その樹種の養分吸収特性と年間施肥体系です。
お礼肥に速効性肥料が使われる理由
果樹のお礼肥では、速効性の肥料が利用される場合があります。
これは、落葉や地温低下によって根の養分吸収が低下する前に、必要な養分を吸収させることを目的とするためです。
特に収穫から落葉までの期間が短い場合には、肥効が現れるまで時間のかかる肥料では、目的とする時期に十分吸収されない可能性があります。
ただし、
「お礼肥には必ず速効性化成肥料を使う」という意味ではありません。
樹種や地域によっては有機質肥料や肥効調節型肥料を組み込む施肥体系もあります。
使用する肥料は、地域の施肥基準や園地条件に合わせて選定します。
堆肥はお礼肥とは別に考える
堆肥を施用することと、お礼肥を施すことは目的が一致しない場合があります。
堆肥は有機物供給や土づくりを目的として利用されることが多く、その養分は製品や原料によって含有量と肥効が大きく異なります。
特に牛ふん堆肥などを、
「有機肥料だからお礼肥として与える」とだけ考えるのは適切ではありません。
お礼肥として速やかな窒素供給が必要な場合、堆肥では必要な時期に十分な肥効が得られないことがあります。
逆に、堆肥にも窒素、リン酸、カリなどが含まれているため、施用量を年間施肥設計から無視することもできません。
窒素の与え過ぎに注意する
お礼肥で特に注意する養分の一つが窒素です。
適正な窒素施用は樹体の栄養状態を維持するために必要ですが、過剰に施用すると、
- 新梢の二次伸長
- 枝の充実不足
- 樹勢の過剰
- 翌年の果実品質への影響
- 土壌中への硝酸態窒素の蓄積・流亡
などにつながる場合があります。
「収穫量が多かったから多めに窒素を与える」という単純な判断は避けます。
着果量だけでなく、葉色、新梢長、樹勢、前年の施肥量、土壌条件などを確認します。
お礼肥の施肥量
お礼肥の施肥量に、すべての果樹へ共通する基準はありません。
年間施肥量に対する礼肥の割合も樹種・地域によって異なります。
例えば、公的な施肥基準では、
- 年間施肥量の一部を収穫後の礼肥へ配分する体系
- 礼肥を複数回に分ける体系
- 樹勢によって礼肥量を変更する体系
- 肥効調節型肥料によって基肥と礼肥を一体化する体系
などがあります。
したがって、
「1本当たり何g」という数字だけを他の品種・樹齢・土壌条件へ流用しないでください。
地域の施肥基準を基準とし、樹齢、収量、樹勢、土壌分析などを考慮して調整します。
土壌診断とお礼肥
お礼肥は、収穫後だから機械的に毎年同量を施すものではありません。
長年の施肥によって土壌へリン酸やカリなどが蓄積している園地では、慣行的な配合肥料を毎年同量施用すると、特定養分の過剰蓄積につながる場合があります。
定期的に土壌診断を行い、園地の養分状態を把握します。
また、樹体の状態についても、
- 新梢の長さ
- 葉色
- 着果量
- 収量
- 早期落葉の有無
- 樹勢
などを観察し、施肥量の判断材料とします。
お礼肥と基肥・追肥の違い
基肥は、一般に作物の生育に必要な養分をあらかじめ供給するため、作付け前や生育開始前などに施す肥料を指します。
追肥は、作物の生育途中に必要に応じて追加する施肥です。
お礼肥は、果樹などで収穫後の樹体回復や貯蔵養分の確保を目的として行われる施肥であり、
施肥時期と目的に着目した追肥の呼び方
と考えることができます。
ただし、実際の年間施肥体系では基肥、追肥、礼肥の割合や時期は樹種によって異なります。
お礼肥でよくある誤解
- 「収穫したら必ずお礼肥を施す」:必要性と施肥量は樹種、樹勢、土壌、年間施肥体系によって異なります。
- 「収穫直後に施すのが正しい」:樹種や収穫時期によっては二次伸長を避けるため施用時期を調整します。
- 「お礼肥で樹が使ったエネルギーを補給する」:肥料は炭水化物そのものを補給するものではありません。炭水化物は葉の光合成によってつくられます。
- 「お礼肥を与えれば翌年の花芽が増える」:花芽形成には樹勢、着果量、光、水分、品種など多数の条件が関係します。
- 「有機肥料なら安全なので多く施せる」:有機質肥料や堆肥にも養分が含まれ、過剰施用すれば養分蓄積につながります。
- 「速効性肥料なら多いほど回復が早い」:窒素過多は二次伸長や枝の充実不足などを招く場合があります。
- 「毎年同じ量を施せばよい」:収量、樹勢、土壌養分、気象条件などを見ながら調整する必要があります。
関連する資材分類・農業用語
見つからない用語・製品の登録をリクエスト
個人情報の入力は不要です。掲載してほしい名称だけをお知らせください。