CECとは
CEC(しーいーしー・Cation Exchange Capacity)とは、土壌がカルシウム、マグネシウム、カリウム、アンモニウムなどの陽イオンを交換可能な状態で保持できる容量を示す指標です。日本語では「陽イオン交換容量」と呼ばれ、土壌の保肥力を評価する際に利用されます。
土壌中の粘土鉱物や腐植には、負の電荷を持つ部分があります。そこに正の電荷を帯びたカチオン(陽イオン)が引き寄せられ、土壌粒子に保持されます。
保持された養分イオンは、土壌溶液中のほかの陽イオンと交換され、土壌溶液へ移動することで作物に利用されます。
CECが大きい土壌は、多くの陽イオンを保持できる容量を持ち、一般に保肥力が高いとされます。ただし、実際に保持している養分の量や、作物への供給能力まで示しているわけではありません。
CECと土壌の保肥力の関係
CECは、養分を保持する「入れ物の大きさ」に例えられます。入れ物が大きくても、中に養分が十分入っているとは限りません。
例えば、CECが同じ土壌でも、交換性カルシウム、マグネシウム、カリウムの含有量が異なれば、作物への養分供給条件も変わります。
そのため、CECだけで土壌の肥沃度や施肥の必要性を判断することはできません。実際の養分状態は交換性塩基などの分析値と組み合わせて評価します。
CECと土壌の種類
CECは、土壌に含まれる粘土鉱物の種類や量、腐植含量などによって異なります。
- 砂質土壌:粘土や腐植が少ない場合はCECが小さく、交換性養分を保持する容量が限られる傾向があります。
- 粘土質土壌:CECが比較的大きい場合が多いものの、粘土鉱物の種類によって保持容量が異なります。
- 腐植を多く含む土壌:腐植には陽イオンを保持する働きがあり、CECが大きくなる傾向があります。
- 黒ボク土:CECが大きい場合がありますが、pHによって電荷量が変わる性質が強く、測定されたCECの高さが、そのまま栽培中の養分保持能力を保証するわけではありません。
特に黒ボク土では、pHの低下に伴って負の電荷が減少し、CECが小さくなる場合があります。土壌の種類を確認せず、CECの数値だけで養分の流亡しにくさを比較することは適切ではありません。
CECの単位と測定方法
CECの代表的な単位は、乾土100g当たりのミリグラム当量を表す「me/100g」です。近年は「cmol(+)/kg」や「cmolc/kg」も使用されます。
1 me/100g = 1 cmol(+)/kg
これらは同じ数値で換算できます。ただし、mg/100gは物質の質量を表す単位であり、陽イオンの電荷量を考慮したCECの単位とは直接比較できません。
CECの分析には、酢酸アンモニウム溶液を用いたセミミクロショーレンベルガー法などがあります。測定条件や土壌pHの影響を受けるため、異なる方法で得られた値を比較する際は分析条件を確認します。
CECと塩基飽和度の関係
塩基飽和度とは、CECに対して、交換性カルシウム、マグネシウム、カリウムが占める割合を示す指標です。
一般的な農業土壌診断では、次の式で計算します。
塩基飽和度(%)=(交換性Ca+交換性Mg+交換性K)÷CEC×100
計算には、交換性塩基とCECを同じ当量単位にそろえた値を使用します。分析方法や診断体系によっては、計算対象となる陽イオンの範囲が異なるため、分析報告書の定義も確認します。
塩基飽和度の計算例
例えば、CECが20me/100gの土壌について、交換性塩基の分析結果が次の値だったとします。
- 交換性カルシウム:10me/100g
- 交換性マグネシウム:4me/100g
- 交換性カリウム:2me/100g
塩基飽和度=(10+4+2)÷20×100=80%
この場合、CECに対して交換性カルシウム、マグネシウム、カリウムの合計が80%に相当します。
ただし、80%という数値だけで適正とは判断できません。適正範囲は土壌の種類、CEC、作物、地域の診断基準などによって異なります。CECの小さい砂質土壌などでは、100%を超える塩基飽和度が診断基準の範囲に含まれる場合もあります。
CECとECの違い
CECとECは、名称が似ていますが、測定している土壌の性質が異なります。
- CEC(陽イオン交換容量):土壌が交換可能な陽イオンを保持できる容量を示します。
- EC(電気伝導度):土壌溶液や土壌抽出液などが電気を通す程度を測定し、水溶性塩類の状態を把握するために利用します。
例えば、CECが高くても、肥料を過剰に施用すれば土壌中の水溶性塩類が蓄積し、ECが高くなる場合があります。
また、CECが低い土壌でも、施肥履歴や土壌水分などによってECが高くなることがあります。CECからECを推定したり、ECだけでCECを判断したりすることはできません。
CECを施肥管理に利用する際の注意点
CECが小さい土壌
CECが小さい土壌は交換性養分を保持できる容量が限られるため、一度に多量の肥料を施用すると、土壌溶液中の塩類濃度が上昇したり、養分が流亡したりする場合があります。
分施や施肥量の調整などが選択肢になりますが、実際の方法は土壌分析値、作物の養分要求量、降雨やかん水条件などから決めます。
CECが大きい土壌
CECが大きい土壌でも、養分不足が起こる場合があります。反対に、長年の施肥によって交換性カリウムなどが過剰に蓄積していることもあります。
CECが高いことを理由に施肥量を増やすと、養分過剰や養分間の吸収競合を招くおそれがあります。
CECを高める土壌改良
土壌の状態によっては、堆肥などの有機質資材を継続的に利用して腐植を維持・増加させることが、CECの改善につながる場合があります。また、ゼオライトやベントナイトなどが検討されることもあります。
ただし、資材の種類、施用量、土壌条件によって効果は異なります。CECを高める目的だけで資材を大量に施用するのは適切ではありません。資材に含まれる肥料成分や塩類、pHへの影響、費用対効果も評価します。
CECを土壌診断で確認する際の判断
土壌診断では、CECに加えて、交換性カルシウム、マグネシウム、カリウム、塩基飽和度、pH、ECなどを確認します。
施設園芸では、作付けや施肥を繰り返すことで、リン酸やカリウムなどが土壌中に蓄積する場合があります。CECの数値だけを根拠に肥料や石灰資材を追加すると、養分過剰や塩類集積を進めるおそれがあります。
なお、CECは硝酸態窒素や可給態リン酸の含有量を直接示すものではありません。アンモニウムイオンの保持には関係しますが、CECだけから窒素供給量を決定することもできません。
施肥や土壌改良の判断には、作物、土壌の種類、採土位置、分析方法、施肥履歴などを確認し、地域の土壌診断基準と照合した結果を利用します。
CECの参考動画
CECは土壌中で起こる陽イオンの保持や交換に関係するため、文章や図とあわせて解説動画を見ると理解が深まります。
【農業のキホン06】CEC陽イオン交換容量とは?この数値をどうやって使いこなす?
公開元:農Tube委員会
CEC(陽イオン交換容量)の解説動画(YouTube)を見る
動画について:この動画はCECの基本的な考え方を理解するための参考資料です。公的機関が制作した動画ではなく、農材ドットコムが制作・管理しているものでもありません。内容の正確性を全面的に保証するものではないため、土壌診断や施肥設計の判断には公的機関の資料を使用してください。公開状況やURLは公開元の都合により変更される場合があります。
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