底面給水設備

底面給水設備

底面給水設備とは

底面給水設備とは、鉢、ポット、セルトレイなどの下側から水または培養液を供給し、鉢底穴などを通して培地へ吸水させる灌水方式です。
花き鉢物、観葉植物、苗生産などで利用され、培地の毛管作用を利用して根域へ水分や養分を供給します。

底面給水には、ベンチ上へ一時的に水や培養液を張ってから排水する「エブ&フロー(Ebb & Flow)方式・プールベンチ」、鉢を並べた樋へ給液する樋式・トラフ式、底面給水トレーや給水マットを利用する方式などがあります。
そのため、「底面給水設備」と「プールベンチ」は完全な同義語ではなく、プールベンチは底面給水設備の代表的な方式の一つです。

特にエブ&フロー方式では、常時鉢底を水に浸しておくのではなく、一定時間給水した後に排水する間断給水が基本です。
給水深、給水時間、給水回数、培地の吸水性、鉢の大きさなどを調整して根域の水分状態を管理します。

底面給水設備取り扱いメーカー・代理店

製造・発売元製品名特徴
カネコ種苗株式会社カネコ HIGH&LOW PONIC®Ebb & Flow方式の底面給水システム。鉢物から育苗まで対応し、給水チューブとサイフォン管を利用した間断給水を行う
トミタテクノロジー株式会社底面給水システム(エブ&フロッド)鉢土の毛管作用を利用して鉢底から給水。プラグ育苗にも対応し、頭上灌水による種子の移動を避けやすい
矢崎化工株式会社底面潅水トレー/底面潅水トレー(サイフォン)底面潅水用トレー。排水溝を備えたタイプや、給水後に自然排水させるサイフォンタイプを展開
揖斐川工業株式会社IKシステムベンチプラスチックボトムを使用したプールベンチ、底面吸水用トイなどを選択可能。養液コントローラー、給排水クイックバルブにも対応
株式会社東海化成底面給水シリーズマルチ底面給水トレー、プラグ底面給水トレーなどを展開。大規模なプールベンチを使用しない底面給水にも対応

底面給水設備の主な方式

エブ&フロー方式・プールベンチ

防水性のあるベンチやトレーへ水または培養液を一定深さまで供給し、鉢底から吸水させた後に排水する方式です。
排出した培養液をタンクへ戻して再利用する循環式設備もあります。

鉢物や苗を多数並べて一括して給水できるため、省力化や給水作業の自動化に適しています。
一方で、ベンチの水平精度や排水性能が悪いと水深に差が生じ、鉢ごとの吸水量が不均一になる場合があります。

樋式・トラフ式

C形鋼や専用の樋などへ水または培養液を流し、樋上に配置した鉢から吸水させる方式です。
シクラメンなどの鉢物栽培で利用される方式の一つです。

設備構成によってはプールベンチより簡素に構築できますが、樋の勾配、給液量、排水位置、鉢間の吸水差などを考慮する必要があります。

底面給水トレー・給水マット

鉢や育苗トレーの下へ底面給水トレーや吸水性のあるマットを設置し、下側から水分を供給する方式です。
大規模な循環設備を必要としない製品もあり、小規模な鉢物栽培や育苗、販売店舗での植物管理などにも利用されています。

底面給水設備のメリット

多数の鉢へまとめて給水できる

同じ規格の鉢や培地を一定条件で管理する場合、多数の鉢へ一括して給水でき、手灌水と比較して給水作業を省力化しやすくなります。
自動弁、ポンプ、タイマー、制御装置などを組み合わせれば自動運転も可能です。

葉や花を濡らさずに給水できる

頭上から散水しないため、通常は葉や花へ直接水をかけずに根域へ水分を供給できます。
花き鉢物などでは、花や葉の水濡れを避けたい場合に適した灌水方式です。

ただし、これだけで病害が防止できるわけではありません。
循環式では別の衛生管理上のリスクが生じるため、底面給水設備を「病害を防ぐ設備」と判断するのは適切ではありません。

給水の均一化を図りやすい

ベンチの水平、鉢・培地・鉢底穴の規格、給水深、給水時間などをそろえることで、手灌水による作業者間のばらつきを減らしやすくなります。

ただし、異なる鉢サイズや異なる培地を同じ給水区画で管理すると吸水速度が異なるため、均一な給水にならない場合があります。
必要に応じて鉢サイズや作物、生育段階ごとに給水区画を分けます。

循環式では排液を再利用できる

エブ&フロー設備などで排液を回収・循環させる場合、水や肥料成分の系外流出を抑えられる可能性があります。
ただし、回収液を再利用する場合はEC、pH、水質、肥料成分、病原体などの管理が必要になります。

底面給水設備を選定・設計するときのポイント

鉢・トレーと培地の組み合わせ

底面給水では、鉢底穴の位置や大きさ、培地の吸水性・保水性・排水性によって吸水量が変わります。
同じ設備でも培地や容器が変われば適切な給水時間や水深も変わるため、設備だけで給水条件を決めることはできません。

ベンチやトレーの水平精度

プールベンチでは水深の偏りが吸水ムラにつながるため、設置面とベンチの水平精度が重要です。
床面の沈下やベンチのたわみも考慮し、満水時の水重量、鉢、培地、植物の重量を含めた耐荷重を確認します。

給水量・排水能力

ポンプ、配管、バルブ、給水口、排水口は、必要な給水深まで所定時間で給水し、その後速やかに排水できる能力が必要です。
給水能力だけでなく排水能力も重要で、排水が遅れると根域が長時間高水分状態になる場合があります。

貯水タンクの容量

循環式では、一つの給水区画を満たすために必要な水量と、配管・ベンチ内に残る水量を考慮してタンク容量を決定します。
複数区画を同時に運転する場合は必要容量が増えるため、運転方式を先に決めて設計します。

底面給水設備の注意点

過湿を防ぐ設備ではない

底面給水だから過湿になりにくいとは限りません。
給水深が高すぎる、給水時間が長すぎる、給水回数が多すぎる、排水性の低い培地を使用するなどの条件では、根域が過湿になり根の酸素不足を起こすことがあります。

作物、生育段階、鉢サイズ、培地、季節、日射条件などに応じて給水条件を調整します。

循環液による病害拡散に注意する

排液を共通のタンクへ戻して再利用する循環式では、罹病株から流出した病原体が培養液を介して別の株へ移動する可能性があります。
そのため、循環式設備では健全苗の使用、罹病株の早期除去、タンクや配管の洗浄、植物残渣の除去など衛生管理が重要です。

必要な殺菌・ろ過設備は栽培方式、作物、病害リスク、水質によって異なります。
殺菌設備を設置すればすべての病原体を防げるという意味ではありません。

ECの上昇・塩類集積を確認する

底面給水では上から十分な水を流して塩類を洗い流す機会が少ないため、培地内、とくに培地上層部へ塩類が集積することがあります。
培養液を使用する場合は、給液だけでなく培地や排液、循環液のECを確認します。

「給液ECが正常だから根域も正常」とは限りません。
生育異常がある場合は、培地内溶液、排液、根の状態などを併せて確認します。

異なる鉢サイズを同一区画で管理しない

鉢の高さ、培地量、底穴、培地の種類が異なると吸水速度や必要給水時間が変わります。
異なる規格を同一のエブ&フロー区画で管理すると、一方は不足し、もう一方は過剰になる場合があります。
できる限り同じ吸水特性を持つ鉢・作物単位で給水区画を分けます。

藻・根・植物残渣を放置しない

ベンチ、樋、排水口、タンク、配管へ藻類、根、落葉、培地片などが蓄積すると、流量低下や排水不良、衛生状態の悪化につながります。
栽培中の点検だけでなく、作終了時には設備内部も含めて清掃します。

底面給水設備が適する主な用途

底面給水設備は、花き鉢物、観葉植物、ポット苗、セルトレイ苗など、容器栽培で多数の植物を管理する用途と相性のよい方式です。
特に同一規格の鉢を多数管理する施設では、省力化や給水管理の標準化につながります。

一方、鉢サイズや培地が頻繁に変わる施設、衛生的に循環液を管理できない施設、床やベンチの水平を確保できない施設では、設備を導入しても期待した均一性が得られない場合があります。
導入時は「底面給水だから省力化できる」と考えるのではなく、栽培方式、鉢、培地、給排水能力、衛生管理まで含めて設備を選定することが重要です。

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