育苗箱・セルトレー・カゴトレーとは
育苗箱・セルトレー・カゴトレーは、
播種や育苗、
苗の搬送などに使用される容器・トレー類です。
名称が似ていても構造と用途は同じではありません。
水稲用の育苗箱、野菜・花きのセル育苗に使用するセルトレー、
ポットやトレーの搬送・保持に使用するカゴトレーなどがあり、
作物、育苗期間、培土量、灌水方法、播種機・移植機との適合性によって選定します。
穴数や「育苗用」という名称だけでは適否を判断できません。
メーカーによって「育苗箱」「育苗トレー」「プラグトレー」
「セルトレー」「システムトレー」などの呼び方も異なります。
育苗箱・セルトレー・カゴトレーの違い
育苗箱
育苗箱は、苗を育てるための箱型容器を広く指す名称です。
農業現場では特に水稲用育苗箱を指すことが多く、
培土や育苗マットなどを入れて播種し、
田植機で扱えるマット状の苗を育てるために使用されます。
水稲用でも底穴の数や形状、箱の深さ、
保水・排水構造などには製品差があります。
また、野菜や花き向けの箱型育苗容器や、
独立したポット部を多数備えた「ポット育苗箱」と呼ばれる製品もあります。
「育苗箱=セルのない浅箱」とは限りません。
育苗箱
セルトレー(セルトレイ・プラグトレー)
セルトレーは、多数の小さなセルを連結した育苗容器です。
野菜、花き、樹木などの育苗に広く使用されます。
1つのセルごとに根域が分かれるため、
多数の苗を一定の間隔で管理しやすく、
機械播種や機械定植と組み合わせられる製品もあります。
穴数には50穴、72穴、128穴、200穴、288穴、406穴など多くの規格がありますが、
穴数だけで作物への適否を決めることはできません。
確認するのは、1セル当たりの容量、深さ、形状、
排水孔、トレー外寸、育苗期間、予定する苗の大きさです。
例えば同じ72穴でも、製品規格が違えばセル容量やトレー寸法が異なります。
播種機や移植機を使用する場合は、機械側の対応規格も確認します。
セルトレー・プラグトレー
カゴトレー
カゴトレーは、底面や側面を格子状・スリット状にしたトレーです。
ポットや育苗容器をまとめて保持・搬送したり、
育苗容器の底面を設置面から離したりする用途があります。
底面が開放された構造では水が抜けやすく、
設置方法によっては容器底部の通気も確保しやすくなります。
カゴトレーを使用すれば根腐れを防げる、という意味ではありません。
根域の水分状態は、
培地の保水性・排水性、容器形状、
灌水量と回数、
設置面、気温、日射、植物の吸水量などによって変化します。
カゴトレー
セルトレーを選ぶときは穴数だけを見ない
200穴は128穴より1枚当たりの苗数を増やせます。
その反面、一般には1株当たりの根域と培土量が小さくなり、
乾燥や肥料濃度の変化も短時間で起こりやすくなります。
逆にセルを大きくすれば常に良いわけでもありません。
必要以上に大きなセルは培土量、育苗面積、運搬重量を増やします。
選定では、
- 作物・品種
- 予定する育苗日数と定植時の苗齢
- 1セル当たりの容量と深さ
- 使用する培土の保水性・排水性
- 灌水・施肥方式
- 播種機・移植機への適合性
を確認します。
「この作物なら○穴」と穴数だけで決めないでください。
育苗で起こりやすい失敗
セルを小さくしすぎる
1枚当たりの苗数を増やすために小容量セルを選ぶと、
予定している育苗期間に対して根域や培土量が不足することがあります。
乾燥が速くなり、
定植が遅れれば根の過密化や苗質低下も起こりやすくなります。
作物名だけでなく、育苗日数と定植時の苗の大きさから逆算します。
定植を遅らせても同じトレーで育て続ける
セル苗は根域が限られています。
天候や圃場準備の遅れで定植を延期すると、
水分・養分不足、根の過密化、
徒長などが重なる場合があります。
「まだトレーに入っているから育苗を続けられる」とは限りません。
すべてのトレーへ同じ灌水を続ける
同じ施設内でも、
セル容量、苗の大きさ、日射、風、トレー位置によって乾き方は変わります。
特に小容量セルでは培土量が少ないため、
水分状態が短時間で変化します。
灌水は時刻や回数だけで固定せず、
培土と苗の状態を確認して調整します。
トレー底面を常時水に浸しておく
底面給水と、常時水に浸した状態は別です。
底面から一時的に吸水させた後に排水する方式は育苗で利用されますが、
長時間水に浸したままにすると根域の酸素条件を悪化させる場合があります。
使用する設備の給排水方式を確認します。
培土を不均一に充填する
セルごとに培土量や締まり方が異なると、
保水量、発芽位置、根の伸び方にばらつきが生じます。
軽く詰めればよい、強く押し込めばよい、というものではありません。
使用する培土と播種体系に合わせ、充填量と鎮圧をそろえます。
根鉢と定植の関係
セル苗では、根と培地がまとまり、
移植時に扱える程度の根鉢が形成されていることが
機械定植や移植作業の安定につながります。
根鉢が未形成なら取り出した際に培地が崩れやすくなります。
反対に、根がセル内で過密になっている状態を
「根鉢がよくできている」と評価するのも誤りです。
定植適期は、
根鉢だけでなく地上部の生育、根量、苗齢、
作物ごとの適期を含めて判断します。
育苗箱・セルトレー・カゴトレー取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名 | 特徴 |
|---|---|---|
| みのる産業株式会社 | ポット220育苗箱 | みのるポットシステム専用220穴育苗箱。専用播種機・移植機と組み合わせて使用。 |
| みのる産業株式会社 | ポット324育苗箱 | みのるポットシステム専用324穴育苗箱。主にタマネギ育苗向け。 |
| みのる産業株式会社 | ポット448育苗箱 | みのるポットシステム専用448穴育苗箱。水稲・ネギ類・タマネギなどに使用。 |
| みのる産業株式会社 | ポット320育苗箱 | イグサポットシステム専用320穴育苗箱。水稲育苗にも使用可能。 |
| 東罐興産株式会社 | トーカン セルトレー/セルトレーAP | ハードタイプのインチサイズと、ソフトタイプの国内標準規格を展開。50~406穴など複数規格。 |
| キャネロン化工株式会社 | 農業用育苗トレー・ビーポット | 野菜・花き等の育苗用トレー、連結育苗容器を製造。 |
| 株式会社阪中緑化資材 | 空中ポットレストレー | 側面スリット・底部開放構造を持つ育苗・栽培トレー。脚付き・脚なし、複数規格を展開。 |
| 明和株式会社 | セルボックスシリーズ | 16・25・30・36・49穴などを展開する育苗用セル容器。 |
| 富川化学工業株式会社 | プラグトレー | 50・72・105・128・162・200・288・406穴などのプラグトレーを展開。 |
| 丸三産業株式会社 | ニューラインDX-150 | 水稲用育苗箱。約60×30cm、底面の保水・排水構造を工夫した製品。 |
| 丸三産業株式会社 | カルカルニューライン | 培土量と育苗箱重量の軽減を目的とした水稲用育苗箱。 |
| 丸三産業株式会社 | すくすく | 底面形状と多数の排水穴を備えた水稲用育苗箱。 |
| 正和化学工業株式会社 | 苗箱(PPダイヤカット) | 水稲用PP製育苗箱。600×300×35mm。 |
| 株式会社東海化成 | TOプラグトレー | 50・72・105・128・200・288・406・512穴などを展開。現行公式メーカー製品ページを確認できなかったため外部リンクは付けておりません。 |
| 株式会社東海化成 | カゴトレー・育苗箱 | ポット等の保持・搬送や育苗に使用する各種トレー。現行公式メーカー製品ページを確認できなかったため外部リンクは付けておりません。 |