徒長(とちょう)

徒長(とちょう)
徒長(とちょう)は茎や節間が伸びすぎる生理的な状態で、病害虫ではありません。光や温度、水分管理が重要。

徒長(とちょう)の概要

徒長(とちょう)とは、主に光環境や温度条件を起点として、水分・栄養・密度などの管理条件が重なった結果、茎(くき)や葉柄(ようへい)の伸長(しんちょう)が過度に進み、節間(せっかん)が長くなって組織が軟弱(なんじゃく)になりやすい「生理的な生育状態および形態バランスの乱れ」です。

病原菌(びょうげんきん)や害虫(がいちゅう)が原因の病害虫ではなく、農薬(のうやく)で治療・防除する対象ではありません

また、単に背丈が高い状態を指す用語ではなく作物・品種・作型・育苗段階ごとに想定される適正な草丈(くさたけ)や節間長(せっかんちょう)から外れているかどうかを基準に判断します。

徒長・軟弱徒長・伸長(しんちょう)の違い(簡易整理)

  • 徒長
    光不足(ひかりぶそく)や高温(こうおん)・過湿(かしつ)などの条件により、節間が不自然に長くなり、茎が細く倒れやすくなる状態。「背が高いだけ」「生育が良い」状態とは異なる
  • 軟弱徒長(なんじゃくとちょう)
    徒長のうち、葉色が淡い、茎が水っぽい、折れやすいなど軟弱性が顕著な状態。育苗段階では定植後の活着不良につながりやすく、致命度が高い場合がある
  • 伸長(しんちょう)
    茎や葉柄が伸びる生理現象そのもの。正常な生育過程でも起こるため、伸長=徒長ではない

徒長(とちょう)の詳細説明

徒長は、光合成(こうごうせい)によって得られる同化産物(どうかさんぶつ)の供給量に対し、光不足や高温条件によって誘導される伸長反応(しんちょうはんのう)が相対的に優位となり、茎(くき)や葉柄(ようへい)の伸びが先行することで起こりやすい生理状態です。育苗(いくびょう)では、胚軸(はいじく)や節間(せっかん)が過度に伸び、茎が細くなることで、定植後(ていしょくご)の活着(かっちゃく)や初期生育(しょきせいいく)が不安定になりやすくなります。果菜類(かさいるい)では節間の乱れが整枝(せいし)や着果(ちゃっか)管理を難しくし、葉菜類(ようさいるい)では葉柄が伸びすぎることで株姿(かぶすがた)が崩れ、品質(ひんしつ)や荷姿(にすがた)の不良につながることがあります。

徒長を引き起こす主因は、光量不足(こうりょうぶそく)や過度な遮光(しゃこう)、および高温(こうおん)・夜温(やおん)の過多です。これらの条件下では、植物は光を求める反応として伸長を強めやすくなります。これに対し、過湿(かしつ)・過潅水(かかんすい)、窒素(ちっそ)過多など栄養バランスの偏り、密植(みっしょく)や風不足(かぜぶそく)は、伸長を直接生むというより、組織が締まりにくい環境をつくることで徒長を助長する要因として働きます。特に高温と過湿が重なると、軟弱徒長(なんじゃくとちょう)へ移行しやすくなります。

見落としやすい点として、肥料不足(ひりょうぶそく)による葉色の淡化や、品種特性(ひんしゅとくせい)として節間が長い草姿を、徒長と混同してしまうケースがあります。一方で徒長を放置すると、倒伏(とうふく)や折損(せっそん)が起こりやすくなり、病害虫(びょうがいちゅう)の二次被害(にじひがい)を招くことで、作業性(さぎょうせい)と品質が同時に低下しやすくなります。徒長は生育初期で、胚軸や節間の組織形成が進みきっていない段階であれば、原因条件を是正することで締まりが回復する場合もありますが、苗(なえ)の段階で胚軸や節間の伸長が極端に進んだ場合は、管理を改善しても元の草姿に完全には戻らないことがあります。

徒長したバラ徒長したバラ

徒長(とちょう)が圃場(ほじょう)で引き起こす影響

徒長が進行すると、茎の機械的強度の低下による倒れやすさ株内(かぶない)の風通し低下葉や茎の物理的損傷の増加が起こりやすくなります。育苗では定植後の活着不良(かっちゃくふりょう)や初期の根量不足(ねりょうぶそく)につながり、果菜類では節間の乱れによって花房(かぼう)位置や着果リズムが不安定となり、収量や品質のばらつきが増えやすくなります。葉菜類では葉柄の過度な伸長と軟弱化により、荷姿不良や傷みやすさが増し、流通(りゅうつう)耐性が低下しやすくなります。

徒長(とちょう)への対応と判断基準

  • 環境改善で回復可能な状態
    節間がやや長いものの、茎の太さが保たれ、葉色や葉の厚みが維持されており、株が自立している状態。
    対処方法:まず日中の受光量(じゅこうりょう)を確保し、過湿を避けたうえで、軽い風を当てて伸長を抑え、組織を過度に抑制しない範囲で締める管理へ切り替える。
  • 生育遅延が残る可能性がある状態
    節間が明確に長く、茎が細い、葉色が淡い、倒れやすいなど、生育の質が低下している状態。
    対処方法:夜温(やおん)を下げて伸長反応を抑制し、潅水(かんすい)は「回数」ではなく培地(ばいち)水分を基準に管理する。併せて窒素過多を是正し、密植を解消して回復可能性を見極める。
  • 作り直し・更新判断が必要な状態
    苗が自立せず、胚軸(はいじく)が極端に伸び、根鉢(ねばち)形成が弱く、定植後に吸水・養分吸収が回復しにくいと判断される状態。
    対処方法:育苗条件(光・温度・水分・密度)を根本から見直し、ロット単位で更新する。徒長苗を無理に使い、「管理で取り返す」ことを前提にしない。

徒長(とちょう)に関する留意点と課題

  • 典型的な誤判断①:徒長を病害虫と誤認し、薬剤に頼る
    なぜ誤りか:徒長は非感染性(ひかんせんせい)の生理状態であり、原因は光・温度・水分・栄養・密度にあるため、薬剤で原因条件は解消されない。
    対処方法:受光量、夜温、培地水分、窒素投入量、株間(かぶま)と風の有無を点検し、徒長を生んでいる条件を止める。
  • 典型的な誤判断②:背が高いだけで徒長と決め打ちし、過度に締めて生育を止める
    なぜ誤りか:品種特性や適正草丈を無視すると、必要な葉面積(ようめんせき)まで削り、収量や品質の土台を損なう。
    対処方法:作物・品種・作型(さくがた)ごとの基準(節間、茎径、葉色、葉厚)で判定し、「締める」操作は段階的に行う。
  • 典型的な誤判断③:水やりを一律に減らして徒長を止めようとし、根傷みを作る
    なぜ誤りか:乾湿(かんしつ)の急変は根の機能低下を招き、結果として軟弱化や生育停滞を助長することがある。
    対処方法:潅水量を一気に削るのではなく、培地水分の目標域を設定し、回数や時間を調整して過湿のみを外す。
  • 典型的な誤判断④:窒素を止めれば解決すると考え、極端な欠乏状態にする
    なぜ誤りか:徒長の主因が光・温度・密度にある場合、窒素だけを絞ると葉色低下と生育停滞が先に現れ、品質低下につながりやすい。
    対処方法:窒素は「過多を是正」するに留め、受光量確保・夜温管理・密度是正を同時に行う。

徒長に関する動画

主に野菜の種や苗のこと、栽培について発信されておられる種兵チャンネル株式会社 種兵:三重県四日市市)様が、苗生産の立場から徒長の原因と対策について発信されておられます。

【育苗のプロが教える!】徒長理論「植物はなぜ徒長するのか」徒長の原因と対策

 

 

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