ろ過器フィルター

ろ過器フィルター

農業用ろ過器・フィルターとは

農業用ろ過器・フィルターとは、灌水(かん水)に使用する原水や給水中の砂、泥、シルト、藻類、有機物などを除去し、配管、灌水チューブ、ドリッパー、スプリンクラー、ノズルなどの目詰まりを抑えるための装置です。

特に点滴灌水や細霧設備では、水の出口となる流路やノズル孔が小さいため、原水に含まれる異物を十分に除去しないと、吐出量の低下や灌水ムラ、ノズル詰まりなどにつながります。
ろ過器は単に「水をきれいにする装置」ではなく、灌水設備を正常に機能させるための重要な構成機器です。

ただし、一般的なスクリーンフィルター、ディスクフィルター、サンドフィルターなどの物理ろ過は、水に溶けている肥料成分や塩類を取り除く装置ではありません。
そのため、通常のろ過によってECを大きく下げることはできません。
また、病原菌の殺菌・消毒や、溶存した鉄・マンガンなどの除去には、必要に応じて専用の水処理設備を検討します。

ろ過器・フィルター取り扱いメーカー・代理店

製造・発売元製品名特徴
株式会社イーエス・ウォーターネットプラスチックフィルター/メタルフィルタースクリーン・ディスク、手動・半自動・自動洗浄、サンドフィルターなど幅広く展開
有限会社エバー・グリーンプラスチックフィルター APS・APT・APDシリーズスクリーン式・ディスク式。小~中規模灌水設備向けを含む各種フィルター
グリーン.コムジャパン株式会社ミスト用フィルター・フィルターカートリッジ細霧・ミストノズルの目詰まり対策用。5ミクロンフィルターなど
株式会社サンホープディスクフィルター・スクリーンフィルター/スピンクリン農業灌水用フィルター各種。手動式から逆洗式まで対応
住化アグリテック株式会社SNZファインフィルター・ディスクフィルター・サンドフィルター・SNZサイクロンセパレーターほか農業灌水用ろ過器を幅広く展開。コンテナフィルター、除鉄フィルター等もラインアップ
株式会社セムコーポレーション砂濾過(ろ過)フィルター農業用水にも対応する砂ろ過フィルター。逆洗によるろ材洗浄が可能
株式会社土佐農機トルネードディスクフィルター・マンモスディスクフィルター農業用灌水ろ過器。用水路・ため池等から取水する点滴灌水設備の目詰まり対策
ネタフィムジャパン株式会社ディスクフィルター・サンドフィルター・スクリーンフィルターほか点滴灌水向けを中心に手動・自動逆洗式など各種ろ過システムを展開
マサル工業株式会社ブルーフィルター PF-200型灌水用スクリーンフィルター。低圧用・高圧用、50・120メッシュを展開
西田GI株式会社ディスクフィルター・サンドフィルター等農業灌水設備の設計・施工・販売に対応。ネタフィムジャパン販売代理店

農業用ろ過器が必要な理由

農業用水には、水源によって砂、土粒子、藻類、植物残渣、有機物などさまざまな異物が含まれます。
これらが灌水設備へ流入すると、ドリッパーやノズルだけでなく、バルブや流量調整部などでも目詰まりや作動不良を起こすことがあります。

  • 灌水ムラの防止:吐出口の目詰まりによる流量低下を抑えます。
  • 灌水設備の保護:ドリッパー、ノズル、バルブなどへの異物侵入を抑えます。
  • 保守作業の軽減:末端のノズルやチューブを個別に清掃する頻度を減らします。
  • 液肥施用設備の安定化:液肥を灌水水へ混入する設備でも、原水由来の異物を除去することが重要です。

農業用ろ過器・フィルターの主な種類

スクリーンフィルター(メッシュフィルター)

金属や樹脂製のスクリーンを通して、水中の固形物を捕捉する方式です。
構造が比較的単純で、地下水や比較的異物の少ない原水、スプリンクラーや一般的な灌水設備などで使用されます。

ろ過精度の細かいスクリーンを使用すれば細かな粒子を捕捉できますが、藻類や大量の有機物を含む水では短時間で目詰まりする場合があります。
「メッシュが細かいほど高性能」と考えるのではなく、原水の状態、必要流量、下流側機器が要求するろ過精度に合わせて選びます。

ディスクフィルター

多数の溝付きディスクを重ね、そのディスク間に形成される細かな流路で異物を捕捉する方式です。
スクリーン表面だけで捕捉する方式とは構造が異なり、ろ過層に異物を捕捉できるため、点滴灌水をはじめ幅広い灌水設備で利用されています。

製品によって手動洗浄式、半自動式、自動逆洗式などがあります。
必要なろ過精度、設計流量、許容圧力損失、洗浄方法を確認して選定します。

農業用ディスクフィルター

サンドフィルター・メディアフィルター

砂やグラベルなどのろ材層に水を通し、異物を捕捉する方式です。
河川、クリーク、ため池など、藻類、有機物、シルト、粘土質の微粒子などを含む原水の一次ろ過に適しています。

「大きなゴミを取るための粗いフィルター」という理解は適切ではありません。
特に藻類や有機物を多く含む表流水では有力な方式ですが、ろ材に異物が蓄積するため、定期的な逆洗が必要です。
また、設備構成によってはサンドフィルターの後段にディスクフィルターやスクリーンフィルターを設置します。

サイクロンセパレーター・ハイドロサイクロン

水を旋回させ、比重の大きい砂などを遠心力によって分離する方式です。
井戸水や地下水など、砂の混入が多い原水の前処理に使用されます。

砂の分離には有効ですが、軽い有機物や藻類、微細な浮遊物まで同じように除去できるわけではありません。
必要に応じてディスクフィルターやスクリーンフィルターなどと組み合わせます。

カートリッジフィルター

交換式のろ材カートリッジをハウジング内へ装着して使用する方式です。
細かなノズルを使用する細霧設備など、より細かな異物除去が必要な設備で利用されます。

スクリーンやディスクのように洗浄して繰り返し使用する方式とは異なり、目詰まりや処理量を確認しながらカートリッジを交換します。

ろ過器・フィルターの選び方

フィルターは「ディスク式なら安心」「細かいメッシュなら安心」という選び方ではなく、原水から末端機器までを一つのシステムとして判断します。

  • 水源:井戸水、地下水、河川、用水路、ため池、雨水、回収水など。
  • 異物の種類:砂、シルト、粘土、藻類、有機物、植物残渣など。
  • 必要なろ過精度:使用するドリッパー、灌水チューブ、ノズルなどが要求するろ過精度を確認します。
  • 最大流量:配管径だけではなく、実際に必要となる最大通水量からフィルター容量を決定します。
  • 圧力損失:フィルターを通過すると圧力損失が生じます。ポンプ能力や末端必要圧力まで含めて確認します。
  • 洗浄方式:手洗浄、半自動洗浄、自動逆洗のどれが適するかを維持管理条件から判断します。
  • 耐薬品性:液肥や薬液を通す場合は、本体・シール材・ろ材の耐薬品性を確認します。

「80メッシュ」「120メッシュ」などの表示だけで異なるメーカーのフィルター性能を単純比較するのは避けます。
メッシュ表示と実際の開口寸法・ろ過精度の関係は製品によって確認が必要なため、ミクロン表示やメーカーの推奨条件も確認してください。

清掃・逆洗・フィルター交換の判断

スクリーンフィルターやディスクフィルターは、目詰まりしたから直ちに本体やエレメントを交換するものではありません。
まず、メーカー指定の方法で清掃または逆洗します。

管理上重要なのは、単純な「水圧の高さ」ではなく、フィルター入口側と出口側の圧力差である差圧です。
異物が堆積すると圧力損失が増え、入口側と出口側の差圧が大きくなります。
洗浄・逆洗を行う差圧は製品によって異なるため、取扱説明書やメーカー指定値に従います。

  • スクリーンフィルター:スクリーンを取り外して洗浄し、破損・変形・腐食があれば交換します。
  • ディスクフィルター:ディスクを洗浄または逆洗し、破損や除去できない汚れがある場合は交換を検討します。
  • サンドフィルター:差圧や運転状況に応じて逆洗し、ろ材の流出・劣化・不足なども点検します。
  • カートリッジフィルター:流量低下やメーカー指定処理量・使用期間を目安に交換します。

ろ過器を使用するときの注意点

  • フィルターの処理流量を超えて使用しない。
  • 必要以上に細かなろ過精度を選び、圧力損失や洗浄回数を増やさない。
  • フィルター清掃だけでなく、主管・支管・灌水チューブ末端のフラッシングも行う。
  • 藻類の多い水をスクリーンフィルターだけで処理できると決めつけない。
  • 砂の多い水ではサイクロンセパレーターなどの前処理も検討する。
  • 液肥や培養液中で生じる沈殿物は、原水中の砂や泥とは原因が異なるため、肥料配合やpHなども確認する。
  • 一般的な物理フィルターを、殺菌装置や除塩装置の代わりに使用しない。

ろ過器選定でよくある間違い

「細かいフィルターほど良い」
必要以上に細かなろ過精度を選ぶと、圧力損失が増え、清掃・逆洗頻度も増加します。
下流側機器に必要なろ過精度を基準に選定します。

「サンドフィルターは大きなゴミを取る装置」
サンド・メディアフィルターは、藻類や有機物などを含む表流水の処理で重要な方式です。
粗大ごみ除去だけを目的とする装置ではありません。

「フィルターを付ければすべての目詰まりを防げる」
目詰まりには、砂や泥などによる物理的目詰まりだけでなく、肥料成分の沈殿、鉄・マンガン、微生物やバイオフィルムなどが関係する場合があります。
原因によって対策が異なります。

「圧力が高くなったらフィルターを交換する」
確認すべきなのはフィルター前後の差圧です。
スクリーンやディスクはまず洗浄・逆洗し、破損や劣化などが確認された場合に交換を検討します。

「メッシュ番号だけで製品を比較する」
実際に必要なのは、下流側の灌水機器を保護できるろ過精度です。
メーカーが示す開口寸法、ミクロン値、推奨用途を確認します。

まとめ

農業用ろ過器・フィルターは、灌水設備の目詰まりを防ぐための重要な機器です。
適切な方式は原水によって異なり、砂の多い地下水、藻類や有機物を含むため池・河川水、比較的清浄な水では必要な処理方法が異なります。

原水の状態、異物の種類、必要ろ過精度、最大流量、圧力損失、洗浄方法を確認し、必要に応じてサイクロン、サンド、ディスク、スクリーンなどを組み合わせて選定します。

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