頂芽優勢(ちょうがゆうせい)

頂芽優勢

頂芽優勢(ちょうがゆうせい)とは

頂芽優勢(ちょうがゆうせい)とは、植物の茎や枝の先端にある頂芽(ちょうが)の働きによって、下位にある腋芽(えきが・わき芽)の伸長が抑制され、先端の成長が相対的に優先される現象です。「頂端優勢(ちょうたんゆうせい)」とも呼ばれ、英語では「Apical dominance」といいます。

頂芽優勢は、植物が枝を伸ばす方向や枝分かれの程度を調節する仕組みの一つです。腋芽が形成されてもすぐに伸びず、頂芽を取り除く摘心(てきしん・摘芯)によって伸長が促される場合があります。

この現象には、植物ホルモンであるオーキシン、サイトカイニン、ストリゴラクトンなどが関係しています。頂芽優勢の強さや摘心後の反応は、植物の種類、品種、生育段階、栽培環境などによって異なります。

頂芽優勢が起こる仕組み

オーキシンによる間接的な制御

頂芽付近で合成されたオーキシンは、茎の内部を基部方向へ移動します。これはオーキシンの極性輸送と呼ばれる現象です。

頂芽優勢にはオーキシンが関係しますが、頂芽から移動したオーキシンが腋芽に直接作用して伸長を止める、という単純な仕組みではありません。

茎におけるサイトカイニンの合成や、ほかの植物ホルモンの作用、オーキシン輸送の調節などを介して、腋芽の伸長が制御されます。

サイトカイニンとストリゴラクトン

腋芽の伸長には、主に次の植物ホルモンが関係しています。

  • オーキシン:茎頂付近で合成され、茎内を基部方向に移動します。ほかの植物ホルモンなどを介して腋芽の伸長を間接的に調節します。
  • サイトカイニン:一般に腋芽の伸長を促進する方向に働きます。根や茎などで合成され、細胞分裂や芽の発達にも関係します。
  • ストリゴラクトン:一般に腋芽の伸長を抑制する方向に働く植物ホルモンです。植物の枝分かれやイネの分げつなどの調節にも関係しています。

これらの植物ホルモンは、それぞれが独立して働くだけでなく、相互に作用しながら腋芽の伸長を調節しています。

また、光条件や同化産物の供給、植物体の生育状態も枝分かれに影響します。腋芽の伸長を一つの植物ホルモンだけで説明することはできません。

摘心すると腋芽が伸びる理由

頂芽を取り除く摘心を行うと、頂芽から茎へ供給されていたオーキシンの量や分布が変化し、腋芽の伸長を抑えていた状態が変わります。

その結果、残された腋芽の伸長が促され、新しい側枝が発生する場合があります。

例えば、主茎の先端を摘心した後、それまで小さかった葉の付け根の芽が伸び始め、複数の枝に分かれて成長することがあります。

ただし、摘心すれば必ずすべての腋芽が伸びるわけではありません。腋芽の有無や発達状態、光、温度、養水分条件、生育段階などによって反応が変わります。

摘心によって腋芽の伸長が促されても、枝数の増加がそのまま収量や品質の向上につながるとは限りません。

農業における頂芽優勢の利用

トマトの仕立てと脇芽管理

トマトでは、主茎と葉の付け根に腋芽が形成され、伸長すると側枝になります。

主茎1本仕立てでは、基本的に不要な腋芽を取り除く芽かきを行い、主茎を伸ばして管理します。

一方、2本仕立てなどでは、選んだ腋芽を側枝として利用します。摘心を組み合わせて枝数を調整する栽培方法もあります。

仕立て方によって必要な枝数や着果位置が異なるため、頂芽優勢を弱めればよいという単純な判断はできません。

ブロッコリーのV字仕立て

農研機構では、ブロッコリーの品種「夢ひびき」を対象に、摘心によって側枝を伸ばし、1株から2つの花蕾を収穫するV字仕立て技術を研究しています。

この技術では、7~11葉齢で摘心し、伸長した側枝のうち2本を残して栽培します。

研究条件では、直径約12cmの花蕾を1株から2個収穫することが可能となり、慣行栽培に比べて可販品質の花蕾収穫本数が増加しました。

ただし、この研究成果は特定品種と作型、栽培条件に基づくものです。摘心によって栽培期間が長くなることや、花蕾1個当たりの重量が低下することも報告されています。

他の品種や作型へ適用する場合は、側枝の発生能力、栽培期間、労働時間、施肥管理、出荷規格などを確認する必要があります。

花き類の分枝管理

キクなどの花き類では、摘心によって腋芽の伸長を促し、枝数や草姿を調整する栽培方法があります。

分枝を利用する栽培では腋芽の伸長が必要ですが、側枝を抑制したい栽培では不要な芽を除去する場合があります。

なお、腋芽が形成されないことと、形成された腋芽の伸長が抑制されることは別の現象です。

キクの一部品種では、高温条件によって腋芽の形成自体が抑制されることが報告されています。このような場合、頂芽を取り除いても、存在しない腋芽を伸長させることはできません。

頂芽優勢を栽培管理に利用する際の注意点

頂芽優勢を生育異常と判断しない

頂芽優勢は植物の自然な生育特性であり、頂芽優勢が強いこと自体は病気や生育障害ではありません。

主茎の伸長を優先する栽培では、腋芽の伸長が抑制されることが管理上有利に働く場合があります。反対に、側枝を利用する栽培では、摘心などによって分枝を促す場合があります。

腋芽が伸びない原因を決めつけない

摘心後に腋芽が伸びない場合でも、頂芽優勢だけが原因とは限りません。

確認すべき事項には、腋芽が形成されているか、残した節位、品種、生育段階、温度・日射条件、根の状態、養水分管理、過去の摘心・整枝履歴などがあります。

腋芽が形成されていない場合と、形成されているものの伸長が抑制されている場合では、原因も対応も異なります。

枝数の増加を増収と混同しない

摘心によって枝数が増えると、葉量や着果位置、植物体内の同化産物の配分などが変化します。

栽植密度が高い条件で枝数を増やすと、葉の重なりが増えて受光条件が悪化したり、管理作業が増えたりする場合があります。

必要な枝数は、品種、仕立て方、栽植密度、収穫目標、養水分供給能力などを踏まえて決定します。

頂芽優勢の仕組みを理解することは整枝管理の判断材料になりますが、植物ホルモンの作用だけから具体的な摘心時期や増収効果を決めることはできません。

頂芽優勢の参考動画

頂芽優勢は、頂芽の働きによって腋芽の伸長が調節される現象です。摘心前後の植物の変化を観察すると、その仕組みを理解しやすくなります。

次の動画では、ダイズの摘心を題材に、頂芽優勢と枝分かれの関係を解説しています。

はかせが解説「大豆の摘心を科学する」(高校生物 頂芽優勢のメカニズム)
NPO法人南相馬サイエンスラボ

はかせが解説「大豆の摘心を科学する」(YouTube)を見る

動画について:
この動画は、頂芽優勢と摘心の関係を理解するための参考資料として紹介しています。農材ドットコムが制作・管理している動画ではありません。動画の内容、公開状況、URLなどは公開元の都合により変更または削除される場合があります。また、摘心による分枝や収量への影響は、作物、品種、栽培条件などによって異なります。動画で紹介される方法が、すべてのダイズ栽培に適することを示すものではありません。

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