摘心・摘芯(てきしん)の概要
摘心・摘芯(てきしん)とは、主茎(しゅけい)や側枝(そくし)の先端にある成長点(せいちょうてん)(頂芽(ちょうが))を除去し、頂芽優勢(ちょうがゆうせい)を弱めることで、茎葉の伸長(しんちょう)と分枝(ぶんし)・着果(ちゃっか)の配分を栽培者が制御する整枝(せいし)作業です。葉や茎を単に減らす剪定や摘葉とは異なり、植物の成長そのものを停止させる操作ではありません。頂芽による側芽抑制を解除し、草姿(そうし)と収量構成要素(しゅうりょうこうせいようそ)を意図した構成に組み立てることが摘心・摘芯の本質です。
摘心・摘芯(てきしん)の詳細説明
摘心・摘芯は、頂芽で生産される植物ホルモン(主にオーキシン)が側芽の伸長を抑制する「頂芽優勢」を利用した管理です。成長点を除去すると頂芽由来の抑制が弱まり、側芽の伸長が相対的に優位となって側枝の発生・伸長が増加します。その結果、草丈(そうたけ)の抑制、分枝数(ぶんしすう)の調整、花芽(はなめ)・果実(かじつ)への同化産物(どうかさんぶつ)の配分変化が生じ、作物ごとの目標(採果数・果重・規格、採花量、葉菜類における収穫部位形成など)に応じた樹姿(じゅし)・草姿が形成されやすくなります。
摘心・摘芯は資材ではなく作業であり、pHや化学的安定性といった物理・化学的性質を持つものではありません。一方で、切り口(きりくち)は病原体の侵入口となる可能性があるため、衛生管理が重要です。養分供給性はありませんが、摘心によって栄養成長(えいようせいちょう)と生殖成長(せいしょくせいちょう)のバランスが変化し、その結果として施肥反応(特に窒素(ちっそ)過多時のつるぼけなど)や着果安定性の現れ方が変わる場合があります。そのため、摘心は単独で効果を評価するものではなく、施肥・かん水・誘引(ゆういん)・摘葉(てきよう)・摘果(てきか)・温度管理と組み合わせて設計されます。
現場で問題となりやすいのは、「時期」「位置」「残す芽数」「強さ」に関する判断の誤りです。判断基準は次のように整理できます。
①時期:側枝の発生を促したい生育段階で行う。花芽分化が進行し果数確保を優先すべき段階で強い摘心を行うと、栄養成長が再び優位となり、着果や収穫開始が遅れる傾向があります。
②位置:残す節位(せつい)(葉位(ようい))を明確にし、目的とする側芽が確実に残る位置で行う。目的節より上で切除すると効果が弱く、下で切除すると芽数不足を招く場合があります。
③残す芽数(枝数):結果枝(けっかし)を過剰に確保すると葉が込み、光不足や湿度上昇により病害(灰色かび病など)の発生リスクが高まります。目標収量に対し、枝数増加に伴って管理負担と病害リスクが増すことを前提に上限を設定します。
④衛生:手指や刃物の消毒、病徴株の後回し、乾いた時間帯での作業、切り口を濡らさない運用が基本です。切り口が潰れると治癒が遅れ、二次感染のリスクが高まります。
エダマメの摘心作業
摘心・摘芯(てきしん)の役目と役割
摘心・摘芯は、肥料でも薬剤でもなく、収量を自動的に増加させる操作でもありません。頂芽優勢を操作することで、草姿や負担果(ふたんか)(または花数)の構成を目標とする状態に近づけるための整枝作業として位置づけられます。樹勢(じゅせい)が強過ぎる・弱過ぎる、枝が込み合う、着果が偏るといった生育上の問題に対し、施肥・かん水・温湿度・誘引などの管理と組み合わせて、生育バランスを調整する手段の一つです。
- 頂芽優勢を弱めることで、側枝の発生や枝数を調整する目的で用いられる。
- 草丈や節間長(せっかんちょう)の過度な伸長を抑え、誘引・収穫・防除などの作業性を確保する補助的役割を持つ。
- 花数・果数・葉量のバランスを調整し、規格(きかく)や収穫期の分布を整えるための管理要素として機能する。
摘心・摘芯(てきしん)のメリットと課題
メリット
- 側枝の発生を利用することで結果枝を確保しやすくなり、果数・花数の構成を調整しやすくなる。
- 草丈や枝張りの過度な伸長を抑えることで、通路確保や誘引作業が成立しやすくなり、薬液到達性(やくえきとうたつせい)や葉面の乾き(かわき)が改善する傾向がある。
- 着果位置や収穫位置のばらつきを抑えやすくなり、収穫・選果作業の手順を整理しやすくなる。
課題
- 摘心の時期が早過ぎる・遅過ぎる、または強過ぎる場合、生殖成長への移行が遅れ、収穫開始が後ろ倒しになることがある。
対処方法:作物ごとに節位や仕立て本数の目安を設定し、草勢と着果(開花)の進行状況を見ながら調整する。 - 枝数を過剰に確保すると葉が込み、光不足や高湿度により病害発生リスクが高まる。
対処方法:摘心と併せて誘引・摘葉・枝間隔の確保を行い、換気や防除が成立する葉量の上限を維持する。 - 切り口から病原体が侵入し、二次感染が起きる可能性がある。
対処方法:乾いた時間帯での作業、刃物や手指の消毒、病徴株を後回しにする運用を基本とし、切り口を潰さず、かん水や薬液で濡らさない管理を徹底する。






