農業用鋼管・ハウスパイプとは
農業用鋼管・ハウスパイプとは、
ビニールハウスのアーチ、直管、母屋、補強部材のほか、
果樹・野菜の支柱や雨よけ施設などに使用される鋼管です。
「農芸用鋼管」「農ビ管」「農芸用パイプ」などの名称でも流通しています。
農業用鋼管は、見た目や外径が同じでも性能が同じとは限りません。
母材の強度、肉厚、表面処理、二次加工によって、強度、加工性、耐食性が変わります。
JIS G 3444(一般構造用炭素鋼鋼管)やJIS G 3445(機械構造用炭素鋼鋼管)を基準とする製品のほか、
これらの規格相当品やメーカー独自の高張力鋼管もあります。
パイプ径だけで耐風・耐雪性能を判断してはいけません。
ハウス全体の強度は、鋼管の材質・外径・肉厚だけでなく、
アーチ間隔、間口、軒高、補強材、接合方法、基礎・埋込み条件などを含む構造全体で決まります。
JIS規格と農業用鋼管の関係
JIS G 3444(一般構造用炭素鋼鋼管)
JIS G 3444は、土木・建築などの構造物に用いる炭素鋼鋼管の規格です。
農芸用途ではSTK290、STK400などの機械的性質を基準とした鋼管が使用されています。
JIS G 3445(機械構造用炭素鋼鋼管)
JIS G 3445は、機械、自動車、家具、器具などの機械構造用途に用いる炭素鋼鋼管の規格です。
農業資材用鋼管では、STKM11A、STKM12Aなどの機械的性質や寸法を基準とした製品もあります。
G 3444とG 3445の名称だけで、ハウスの用途や耐候性能を決めることはできません。
同じ規格群でも鋼種、外径、肉厚によって強度は異なります。
さらに、高張力鋼を使用したメーカー独自規格の農業用鋼管もあります。
ハウスパイプの強度を決める条件
外径・肉厚・鋼材強度
同じ25.4mm径でも、肉厚や鋼材の強度が違えば性能は変わります。
逆に、高張力鋼を使用することで、通常材より薄肉でも高い材料強度を持たせた製品があります。
「太いほど必ず強い」「薄いから弱い」という判断も適切ではありません。
ハウス全体の構造
強風や積雪に対する性能は、パイプ1本の性能だけでは決まりません。
アーチ間隔、間口、軒高、屋根形状、母屋、筋交い、タイバー、補強アーチ、
接合金具、基礎や地中への埋込みなどが相互に関係します。
例えば、既存ハウスのアーチパイプだけを太くしても、
接合部や妻面、基礎が先に破壊されれば施設全体の耐風性能は上がりません。
耐候性は部材単体ではなく、構造全体で判断します。
地域の風・雪条件
耐風・耐雪仕様を選ぶ場合は、
「積雪地域だから32mm以上」といった径だけの基準では不十分です。
設置地域の設計用風速、設計用積雪深、ハウスの規模・形状を基に仕様を決めます。
新設や大規模な補強では、温室施工企業や設計者へ構造条件を確認してください。
防錆処理と耐食性
施設園芸では、
結露、高湿度、農薬や肥料成分、土壌との接触などにより鋼管が腐食することがあります。
このため農業用鋼管には、亜鉛めっき、高耐食性めっき、樹脂系表面処理などが利用されています。
製品によって、亜鉛プレめっき、造管後の溶融亜鉛めっき、
55%Al-Zn系めっき、Zn-Al-Mg系高耐食めっきなど方式が異なります。
「めっき管」という名称だけでは耐食性能を比較できません。
めっきの種類、付着量、溶接部処理、内面処理、トップコートの有無を確認します。
地際部、切断端面、穴あけ部、接合部は重点点検箇所です。
切断や穴あけ後の補修方法は、使用する鋼管メーカーの仕様に従います。
スエージ加工・曲げ加工などの二次加工
農業用鋼管には、アーチ曲げ、スエージ加工、穴あけ、つぶし加工、
ピッチマークなどの二次加工を施した製品があります。
スエージ加工は管端を縮径し、別の鋼管へ差し込めるようにする加工です。
施工性に優れますが、接続部の性能は差込み長さ、固定方法、穴加工、使用金具などによって変わります。
「スエージ部は必ず弱い」と一律に判断することもできません。
また、農業用鋼管にはハウス骨組み用だけでなく、
サイド換気などのフィルム巻き取り軸専用に設計された製品もあります。
骨組み材と巻き取り軸用鋼管を混同しないでください。
農業用鋼管・ハウスパイプ取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名・製品群 | 用途分類 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|---|
| 大和鋼管工業株式会社 | 農芸用鋼管(PZ・PPZ) | ハウス骨組み・農芸用 | 溶融亜鉛めっきを用いた農芸用鋼管。PZとPPZでは内面処理などの仕様が異なるため、外径・肉厚・強度区分を含めて確認する。 |
| 大和鋼管工業株式会社 | STX | 高強度ハウス骨組み・構造部材 | 高抗張力鋼管。メーカーは同サイズの従来材と比べ高い強度を特徴としている。全周溶融亜鉛めっきとトップコートを採用。採用時はハウス全体の構造条件を確認する。 |
| 大和鋼管工業株式会社 | スーパーカラー | フィルム巻き取り軸 | 内外面にポリエステルコーティングを施した巻き取り軸専用鋼管。ハウス骨組み用鋼管ではないため用途を混同しない。 |
| 丸一鋼管株式会社 | マルイチ農芸用鋼管 | ハウス骨組み・支柱 | プレジンク、AL-Z55などの表面処理仕様と高強度タイプを展開。外径・強度区分・表面処理を用途に合わせて選定する。 |
| 日鉄めっき鋼管株式会社 | 農業ビニールハウス用鋼管(ZAM®製)NTN | ハウス骨組み・農業施設 | 高耐食性めっき鋼板ZAM®を素材に使用。溶接部も溶射補修し、高強度タイプPrime Hard® 590もラインアップ。 |
| 株式会社新三興鋼管 | 農業資材用鋼管・Sコートパイプ | ハウス骨組み・支柱・巻き上げパイプ | 農業用鋼管にSコート処理を採用。高耐食性めっき鋼管、ガルバリウム鋼管、スエージ加工、ピッチマーク、地際塗装などに対応。 |
農業用鋼管の選び方
最初に用途を決める
アーチ、母屋、補強材、果樹支柱、巻き取り軸では、鋼管に求められる性能が異なります。
まず使用箇所を決め、その用途に適した製品群から選定します。
外径だけで選ばない
確認するのは、外径だけではありません。
肉厚、鋼材の強度区分、表面処理、長さ、加工内容、接続部材との適合まで確認します。
既存ハウスの交換では、パッカーやクロス金具など既存部品との寸法適合も必要です。
耐風・耐雪性能は施設仕様として確認する
「25.4mmだから台風に強い」「31.8mmだから雪に耐える」といった判断はできません。
メーカーや施工企業が示すハウス仕様の耐風速・耐積雪荷重と、
設置地域で想定する風・雪条件を照合します。
耐食性と強度を混同しない
高耐食めっきは腐食を抑えるための仕様であり、それだけで構造強度が高くなるわけではありません。
高張力鋼管も材料強度は高くできますが、
接合金具や基礎まで自動的に強くなるわけではありません。
典型的な選定ミス
「太いパイプへ交換すればハウスが強くなる」
パイプ自体の断面性能は高められても、基礎、接合部、妻面、補強材が不足したままでは、
施設全体の弱点が別の場所へ移るだけです。
補強は構造全体で判断します。
「JIS規格品なら長期間さびない」
JIS G 3444やJIS G 3445の区分と、農業環境での耐食寿命は同じ意味ではありません。
使用環境と表面処理仕様を別に確認します。
「高張力鋼管なら同じ施工方法で強くなる」
材料強度が高くても、アーチ間隔、固定金具、基礎、接合部などが同じ性能を持つとは限りません。
高強度材へ変更する場合も、施設としての設計条件を確認します。
巻き取り軸用パイプを骨組み材として扱う
巻き取り軸専用鋼管は、換気フィルムを巻き上げるための部材です。
製品名に「農業用鋼管」とあっても、ハウス骨組み用とは限りません。
用途表示を確認してください。
農業用鋼管の点検
重点的に確認するのは、地際部、接合部、穴あけ部、切断端面、
曲げ変形が生じた部分、表面処理が傷んだ部分です。
農林水産省も、ハウスの基礎部や接続部分の腐食・さびを災害前の点検項目として挙げています。
強風や積雪で一度大きく変形した鋼管は、外観だけで継続使用の可否を判断できない場合があります。
著しい変形、割れ、接合部の損傷がある場合は交換や専門業者による確認を行います。