無機質肥料とは
無機質肥料(むきしつひりょう)とは、
有機質肥料に対して用いられる呼び方で、
基本的には無機化合物からなる肥料を指します。
代表的なものには、硫酸アンモニア(硫安)、塩化アンモニア、過りん酸石灰、熔成りん肥、塩化加里、硫酸加里などがあります。
窒素、りん酸、加里のうち一つの成分を主体とする肥料だけでなく、
複数の成分を含む化成肥料や、
肥効を調節した被覆肥料などもあります。
「無機質肥料=工業的に製造された肥料」という定義ではありません。
「無機質肥料」は肥料を化学的組成などから整理するときに使われる呼び方です。
肥料の品質の確保等に関する法律で、肥料を「無機質肥料」と「有機質肥料」の二つに法定分類しているわけではありません。
なお、尿素は化学構造上は有機化合物ですが、
肥料分野では無機肥料原料側に含めて整理される場合があります。
無機質肥料という用語と、有機化合物・無機化合物という純粋な化学物質の分類を完全に同一視すると例外が生じます。
無機質肥料と化学肥料・化成肥料の違い
無機質肥料、化学肥料、化成肥料は同じ意味ではありません。
無機質肥料は、主として肥料の化学的組成に着目した呼び方です。
化学肥料は、農業分野では化学的な方法によって無機質原料から製造された肥料を指す場合に使われ、
製造方法に着目した呼び方です。
化成肥料は、
肥料原料を混合し、反応・造粒などの製造工程を経てつくられる複合肥料の一群です。
したがって、
「無機質肥料=化学肥料=化成肥料」と置き換えることはできません。
無機質肥料の主な種類
| 区分 | 代表例 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 窒素質肥料 | 硫酸アンモニア、塩化アンモニア、尿素など | 窒素を主に供給します。窒素の形態や肥効、土壌への影響は肥料ごとに異なります。 |
| りん酸質肥料 | 過りん酸石灰、熔成りん肥など | りん酸を主に供給します。水溶性・可溶性・く溶性など、肥料によって溶解性が異なります。 |
| 加里質肥料 | 塩化加里、硫酸加里など | 加里を主に供給します。塩素を含むかどうかなども選定条件になります。 |
| 複合肥料 | 化成肥料など | 窒素、りん酸、加里など複数の肥料成分を一度に施用できます。 |
| 肥効を調節した肥料 | 被覆窒素肥料、被覆複合肥料など | 肥料成分の溶出速度や供給期間を調節したものがあります。 |
無機質肥料はすべて速効性ではない
硫酸アンモニアや塩化加里など、水に溶けやすく比較的速く肥効が現れる肥料があります。
ここから「無機質肥料は速効性」と一括りにするのは誤りです。
難溶性の成分を利用する肥料や、
肥料粒を膜で覆って成分の溶出を制御する被覆肥料、
緩効性窒素を利用した肥料などもあります。
肥効の速さは「無機質か有機質か」だけでは判断できません。
肥料の種類、成分形態、溶解性、被覆の有無、地温、水分条件などを確認します。
無機質肥料を選ぶときの確認点
施設栽培では、肥料を追加すれば生育が改善するとは限りません。
例えば、根域に肥料成分が蓄積してECが高くなっている状態で、
葉色や生育だけを見て追加施肥すると、さらに根域の塩類濃度を高めることがあります。
施肥量を決める前に、
土壌診断やEC測定などによって根域の状態を確認します。
製品を比較するときは、
保証成分の数字だけでなく、
窒素の形態、りん酸や加里の溶解性、肥効期間、塩素などの副成分、
土壌酸度への影響、
作物、作型、土壌条件、施肥時期を含めて判断します。
養液栽培では土耕と肥料の選定方法が異なります。
培養液として使用する場合は、
水溶性、原料純度、沈殿や他成分との反応、原水成分を確認し、
養液栽培用として設計された肥料を使用します。
無機質肥料で起こりやすい誤解
無機質肥料はすべて速効性
誤りです。
水に溶けやすい肥料が多いことから生じる誤解ですが、
被覆肥料や緩効性成分を含む肥料など、肥効を長期間にわたって調節するものもあります。
肥効は肥料の具体的な種類と成分形態で判断します。
無機質肥料には窒素・りん酸・加里がすべて入っている
誤りです。
硫酸アンモニア、過りん酸石灰、塩化加里のように、
特定の肥料成分を主体とする肥料があります。
複数成分を含む肥料との混同によって生じる誤解です。
肥料袋の保証票を確認してください。
無機質肥料と化成肥料は同じもの
同義ではありません。
化成肥料は無機質肥料・化学肥料の中で利用される主要な肥料群の一つですが、
硫酸アンモニアや塩化加里などまで「化成肥料」と呼ぶことはできません。
成分濃度が高い肥料ほど優れている
これも誤りです。
成分濃度が高ければ少ない重量で多くの養分を施用できますが、
必要量を超えて施用すれば過剰施肥になります。
肥料の優劣ではなく、必要な成分を必要量だけ供給できるかで判断します。
無機質肥料取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名・製品群 | 特徴 |
|---|---|---|
| 合同会社農業技術研究会 | 単肥・微量要素 | 養液栽培向けの単肥や微量要素などを取り扱う。既存の重複3行を1行に統合。 |
| トヨタネ株式会社 | TF肥料[養液栽培専用] | 養液栽培用に設計された粉末肥料。複数の処方・組み合わせを展開。 |
| ジェイカムアグリ株式会社 | 化成肥料 | 硫燐安系、硝酸系、NK化成、IB化成、CDU化成などを展開。 |
| ジェイカムアグリ株式会社 | LPコート・エムコート | 粒状尿素を被覆し、窒素の溶出を調節する被覆尿素肥料。 |
| エムシー・ファーティコム株式会社 | 被覆肥料 | 被覆尿素などを利用した水稲用・畑作用の肥効調節型肥料を展開。 |
| サンアグロ株式会社 | 千代田化成シリーズ | 多孔質状の化成肥料。水稲、野菜、果樹、茶などに対応する各種銘柄を展開。 |
| サンアグロ株式会社 | 硫黄被覆肥料 | 硫黄被覆によって窒素などの肥効期間を調節した肥料。短期から長期溶出型まで展開。 |
| 太陽肥料株式会社 | 17.5過りん酸石灰(粒状) | 可溶性りん酸17.5%、水溶性りん酸14.5%の粒状りん酸質肥料。 |
| 株式会社タクイ | 窒素・りん酸・加里肥料各種 | 尿素、硫安、塩安、過りん酸石灰、塩化加里、硫酸加里、SCU・PCUなどを取り扱う。 |