点滴灌水(点滴潅水)

点滴灌水(点滴潅水)

点滴灌水(点滴潅水)とは

点滴灌水(てんてきかんすい)とは、点滴チューブやドリッパー(エミッター)を使用し、
作物の灌水に必要な水を根域付近へ少量ずつ局所的に供給する方法です。
英語では「drip irrigation」と呼ばれます。

一般的な散水チューブのように畝全体へ水を散布するのではなく、
一定間隔に配置されたドリッパーから所定の流量で水を滴下します。
液肥を灌水水へ混入して施肥を同時に行う
「点滴灌水施肥」や「養液土耕栽培」にも利用されています。

点滴灌水は水や肥料を根域付近へ集中して供給できるため、
散水範囲を限定しやすく、灌水量・灌水時間・施肥量を細かく管理しやすいことが特徴です。
一方、適切な水圧、ろ過、配管設計、水質管理が必要であり、
単に点滴チューブを敷設するだけで均一な灌水が得られるとは限りません。

点滴チューブと一般的な灌水チューブの違い

一般的な散水用灌水チューブは、小孔から水を噴出させて畝や作物周辺へ広く散水します。
これに対して点滴チューブは、チューブ内部に組み込まれたドリッパーなどで水量を調整し、
各吐出口から少量ずつ滴下する構造が一般的です。

したがって、点滴チューブを選ぶ際は「穴の間隔」だけではなく、
ドリッパーの吐出量、点滴孔間隔、使用圧力、配管延長、圧力補正機能の有無、
チューブ肉厚、ろ過条件などを確認する必要があります。

点滴灌水の主な方式

点滴チューブ(ドリップライン)

チューブ内部に一定間隔でドリッパーが組み込まれた方式です。
イチゴ、トマト、キュウリ、ピーマン、花き、露地野菜、果樹など幅広い作物で使用されます。
製品ごとに点滴孔間隔、吐出量、使用圧力、最大敷設長などが異なります。

オンラインドリッパー

ポリエチレンパイプなどへドリッパーを個別に取り付ける方式です。
株間が一定でない栽培、ポット栽培、果樹、高設栽培など、
灌水位置を株ごとに設定したい場合に適しています。

圧力補正型ドリッパー

一定の使用圧力範囲内で、配管内の圧力差があっても吐出量を一定に近づける機構を持つタイプです。
長い配管、傾斜地、高設栽培など、ライン内の圧力差が問題になりやすい条件で利用されます。

ただし、圧力補正型であっても使用可能な圧力範囲があります。
配管径、ライン長、流量、標高差などを無視して均一灌水できるわけではありません。

点滴灌水のメリット

点滴灌水には、条件を適切に設計・管理した場合、次のような利点があります。

  • 水を根域付近へ局所的に供給できる
    畝間など栽培に不要な場所への散水を減らしやすく、水利用効率の改善につながります。
  • 少量多回数の灌水に対応しやすい
    タイマー、電磁弁、灌水コントローラーなどと組み合わせることで、短時間の灌水を複数回行う管理ができます。
  • 灌水と施肥を同時に管理できる
    液肥混入器などを組み合わせることで、灌水水とともに肥料を供給できます。
  • 葉や通路を濡らしにくい
    頭上灌水や広範囲の散水に比べ、灌水する範囲を限定できます。ただし、病害の発生は湿度、結露、病原菌、換気、株間などにも左右されるため、点滴灌水だけで病害を防げるわけではありません。
  • 自動化しやすい
    ポンプ、電磁弁、液肥混入器、タイマー、日射センサー、土壌水分センサーなどと組み合わせた自動灌水にも利用できます。

点滴灌水システムの主な構成

点滴灌水設備は、一般に次のような資材・機器を組み合わせて構成します。

  • 水源・貯水タンク
  • 灌水用ポンプ
  • ろ過器・フィルター
  • 減圧弁・圧力調整器
  • 水量計・圧力計
  • 主管・支管・継ぎ手・バルブ
  • 点滴チューブまたはオンラインドリッパー
  • 液肥混入器
  • 電磁弁・タイマー・灌水コントローラー

すべての設備が必須というわけではありません。
水源圧力、圃場面積、高低差、使用する点滴チューブ、液肥施用の有無などによって必要な構成は異なります。

点滴チューブを選ぶときの確認項目

吐出量と点滴孔間隔

ドリッパー1個当たりの吐出量と点滴孔間隔によって、
単位時間・単位面積当たりの灌水量が変わります。
作物の株間だけでなく、土壌の保水性・透水性、培地量、根域幅などを考慮して選定します。

使用圧力

点滴チューブには製品ごとに適正な使用圧力があります。
圧力が不足すると末端側の吐出量が低下し、
過大な圧力ではチューブや接続部の損傷につながる場合があります。

配管延長と高低差

ラインが長くなるほど摩擦損失によって圧力が低下します。
傾斜地では高低差による圧力差も発生するため、
メーカーが示す最大敷設長や圧力条件を確認します。

圧力補正機能

長い栽培ベッド、傾斜地、高設栽培などでは、
圧力補正機能付きドリッパーが適する場合があります。
一方、平坦で短いラインでは非圧力補正型が選択されることもあります。

チューブ肉厚と使用期間

薄肉タイプは導入コストを抑えやすく、作ごとの更新や比較的短期間の使用に向く製品があります。
肉厚タイプは耐久性を高め、多年使用や常設設備を想定した製品があります。
使用期間は製品仕様と栽培条件を確認してください。

点滴灌水で重要な水質とフィルター

点滴灌水で最も注意したい設備トラブルの一つが、ドリッパーの目詰まりです。
河川水、井戸水、農業用水、貯留水など原水の性質によって、
砂、粘土、有機物、藻類、鉄などが目詰まりの原因となる場合があります。

使用するフィルターの種類やろ過精度は、原水と点滴チューブの仕様によって決定します。
「点滴灌水なら一律○○メッシュ」と決めるのではなく、
使用する点滴チューブメーカーが指定するろ過条件を確認してください。

液肥を使用する場合は、肥料同士や原水中の成分との反応によって沈殿物が発生することもあります。
原水のpH、
EC、
硬度や重炭酸などを確認し、肥料の混合適否も含めて管理します。

点滴灌水の維持管理

フィルターの差圧や汚れを定期的に確認し、必要に応じて洗浄します。
点滴ライン末端から排水できる構造としておくと、
配管内に蓄積した異物をフラッシングしやすくなります。

灌水開始後は、圧力計や水量計だけでなく、
圃場内の複数地点で実際の吐出状態を確認することが重要です。
先端側だけ正常でも、末端側で吐出量が不足している場合があります。

酸や塩素などを使用した配管洗浄が行われる場合もありますが、
使用できる薬剤、濃度、処理時間、材質への影響は設備や水質によって異なります。
薬剤洗浄を自己判断で行わず、点滴チューブ・フィルター・液肥設備メーカーの仕様に従ってください。

点滴灌水で注意したいこと

点滴灌水では地表面があまり濡れない場合でも、
根域内部が過湿になっていることがあります。
地表の見た目だけで灌水量を判断すると、過灌水や根傷みにつながる可能性があります。

反対に、点滴位置や点滴孔間隔が根域に合っていない場合は、
土壌や培地の一部だけが湿り、根域全体へ十分に水が広がらないことがあります。

液肥を連続して使用する場合には、
塩類障害を防ぐためにも、
施肥量、EC、灌水量、排水状態などを総合的に確認します。
点滴灌水は水分・肥料を精密に管理できる反面、
設定を誤ると同じ誤差が継続して作物へ与えられる設備でもあります。

点滴灌水(点滴潅水)取り扱いメーカー・代理店

製造・発売元製品名特徴
南九州化学工業株式会社ウルトラドリップ点滴タイプの灌水チューブ。長尺での均一灌水を想定
有限会社エバー・グリーンHydroPCND圧力補正・水だれ防止機能付き点滴チューブ
有限会社エバー・グリーンHydrogol肉厚タイプの点滴チューブ。複数年使用を想定
有限会社エバー・グリーンD1000薄肉タイプの点滴チューブ
有限会社エバー・グリーンD2000フラットドリッパー内蔵点滴チューブ
有限会社エバー・グリーンSupertif圧力補正型オンラインドリッパー。水だれ防止仕様もあり
ネタフィムジャパン株式会社ARIES(アリエス)中肉・厚肉タイプの点滴チューブ
ネタフィムジャパン株式会社UNIRAM(ユニラム)圧力補正型点滴チューブ
ネタフィムジャパン株式会社PCJオンラインドリッパー圧力補正型オンラインドリッパー
株式会社サンホープホワイトシリーズ 軟質ドリップチューブ RI-WT10M白色二層構造の軟質点滴チューブ
株式会社アグリベース四万十四万十チューブ軟質点滴灌水チューブ。複数の点滴孔ピッチを展開
住化アグリテック株式会社ストリームラインX60/X80薄肉タイプの点滴チューブ
住化アグリテック株式会社タイフーンプラス100中肉タイプの点滴チューブ
住化アグリテック株式会社ユニラムCNL圧力補正・水だれ防止機構付き点滴チューブ
住化アグリテック株式会社ユニラムRC圧力補正型点滴チューブ
株式会社土佐農機てんすいGreen/てんすいBit農業用点滴灌水チューブ
株式会社イーエス・ウォーターネットTIFドリップチューブ露地・施設園芸・養液土耕などに使用するドリップチューブ
トヨタネ株式会社とよドリップチューブ10cm・20cmピッチを設定した点滴チューブ
トヨタネ株式会社白色点滴チューブ外側白・内側黒の点滴チューブ
株式会社イリテック・プラスP1/P5ドリップチューブ10・20・30cmのドリッパー間隔を展開
株式会社イリテック・プラスハイテープドリップチューブ薄肉タイプの点滴チューブ

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