塩類障害(えんるいしょうがい)

塩類障害(えんるいしょうがい)
塩類障害は、土壌や培地に塩類が蓄積し、根の吸水や養分吸収が阻害されて生育不良などを招く生理障害です。

塩類障害(えんるいしょうがい)の概要

塩類障害(えんるいしょうがい)とは、土壌(どじょう)や培地(ばいち)中の可溶性塩類(かようせいえんるい)が過剰に蓄積し、浸透圧(しんとうあつ)上昇とイオン毒性(どくせい)・養分バランス崩壊によって作物の吸水・養分吸収が阻害される生理障害であり、病気ではありません。

塩類障害(えんるいしょうがい)の詳細説明

塩類障害は、土壌溶液中の塩類濃度が高まることで、根の周囲の水の移動が起きにくくなり、根は水があるのに吸えない状態(生理的乾燥)に陥ることから始まります。これに加えて、ナトリウム(Na)や塩化物(Cl)など特定イオンが多い場合は、細胞や根の機能を直接傷めるイオン毒性、カリウム(K)・カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)などの吸収が競合して起きる養分の欠乏・過剰の二次障害が重なります。施設栽培では施肥・灌水(かんすい)の連続、露地では乾燥・少雨・海塩飛来、排水不良などで塩類が「流れずに残る」ことで進行します。

現場での判断に使う代表指標はEC(電気伝導度)で、土壌・培地中の可溶性塩類の総量の目安になります。ただし、ECは測定方法(例:土壌飽和抽出液、1:5抽出、水耕養液、ドレン)で値の意味が変わり、単純比較はできません。pHは塩類障害そのものの指標ではありませんが、pHが高すぎる・低すぎる場合は微量要素の可給性(きゅうせい)やCaの働きが崩れて症状が増幅します。重要点として、塩類は「化学的に分解して消える」ものではなく、水で移動させて系外へ出す(除塩)か、交換・沈殿などで害を弱める以外に確実な解決はありません。

症状は作物・塩の種類・進行速度で変わりますが、典型例として、葉色が濃く見えつつ葉縁(ようえん)が褐変(かっぺん)して枯れ込む(葉焼け様)、生育遅延と節間短縮、果実肥大不良・奇形果増加(トマト・キュウリ等)、根量低下・根傷みが起こります。「塩漬け状態」という比喩は、根の周囲の溶液濃度が高くなり吸水できない状態を指す理解としては妥当です。診断は見た目だけで確定せず、EC測定(方法を固定)と、可能なら水質・土壌分析(交換性Na、Ca、Mg、K、Cl、硫酸、硝酸等)で裏取りします。

典型的な誤り(3つ以上)と是正

  • 誤り1:葉先枯れ=塩類障害と決め打ちする
    なぜ誤りか:高温乾燥・根傷み・過湿・薬害・ホウ素(B)過剰などでも類似症状が出ます。
    本当の答え:外観は「疑い」に留め、EC(測定法を明記)と水分状態、施肥履歴で切り分けます。
  • 誤り2:ECの数値だけで危険/安全を断定する
    なぜ誤りか:ECは抽出法や測定対象で桁や意味が変わり、作物の耐塩性も異なります。
    本当の答え:同一手法で継続測定し、作物別の管理目標は採用している指針・栽培体系の基準に合わせるのが安全です。
  • 誤り3:石灰を入れれば除塩できると考える
    なぜ誤りか:炭酸カルシウム等はpH調整やCa供給にはなっても、塩を系外へ出しません。ナトリウム過多(ソーダ化)の是正は考え方が別です。
    本当の答え:塩類総量の低減は洗い流し(リーチング)+排水が基本で、ナトリウム過多なら石こう(硫酸カルシウム)等で交換性NaをCaに置換し、排水で流亡させるという手順が必要です。
  • 誤り4:微生物資材だけで耐塩性が上がるので解決できる
    なぜ誤りか:微生物資材は条件次第で根圏(こんけん)を補助し得ますが、塩類の蓄積自体を消せません。
    本当の答え:使うなら除塩・排水・施肥設計の是正を主対策に置き、微生物は補助として効果検証(比較区、収量・品質・EC推移)を前提に扱います。

塩類障害(えんるいしょうがい)の役目と役割

塩類障害は「資材」ではなく、土壌(どじょう)・培地(ばいち)の状態が悪化した結果として起きる障害です。つまり、何かを足して起きるというより、塩類が系内に残り続ける設計(施肥・水・排水)の破綻として位置づけます。肥料切れでも病害でもなく、過剰施肥や水質、乾燥、排水不良の組合せで再発します。

  • 土壌・培地の塩類蓄積を可視化し、施肥・灌水設計の見直し点を示す。
  • 作物の不調を「病害虫」へ誤診する前に、生理障害としての切り分けを促す。
  • 施設栽培でのドレン管理、洗浄灌水、排水改良など、運用で再発を抑える対象を明確にする。

塩類障害(えんるいしょうがい)のメリットと課題

メリット

  • EC等の指標で把握できれば、施肥量・濃度、灌水回数、排水を具体的に調整し、再発防止の設計に落とし込める。

課題

  • 測定値の解釈違い(抽出法・測定対象の混在)で判断を誤る。
    対処方法:測定法を固定し、「土壌(どじょう)」「培地(ばいち)」「養液(ようえき)」「ドレン」を混ぜて語らない運用にします。
  • 除塩をしても排水不良や施肥設計が変わらないと再発する。
    対処方法:排水性改善(暗渠・明渠、畝立て、透水性確保)と、施肥は「入れる量」だけでなく濃度と頻度を見直し、施設ではドレン率・洗浄灌水の手順を作業標準にします。
  • ナトリウム過多(ソーダ化)を塩類総量と同じ扱いにして改善が遅れる。
    対処方法:土壌分析で交換性Naを確認し、必要な場合は石こう等で置換→排水で流亡の順に実行します。
  • 症状だけで薬剤や資材投入に走り、原因が残る。
    対処方法:まずECと水分状態の確認を優先し、病害虫防除は切り分け後に行います。
【無償掲載キャンペーン】農材ドットコムに貴社の商品情報を掲載!!
新規CTA
新規CTA
種苗、肥料、農業資材の取扱店。 営農アドバイスも受けれます。
新規CTA
新規CTA
農材ドットコム SNSの告知
TOP