花冠とは
花冠(かかん)とは、
1つの花にある花弁全体をまとめた呼び名です。
英語では「corolla」といいます。
たとえば、5枚の花弁を持つ花では、
その5枚をまとめたものが花冠です。
- 花弁(petal):花冠を構成する一枚一枚の器官
- 花冠(corolla):1つの花にある花弁全体
典型的な花では、
花冠は萼の内側に位置し、
さらに内側に雄しべや
雌しべがあります。
ただし、すべての花が明瞭な花冠を持つわけではありません。
花弁を欠く植物や、
萼片と花弁を明確に区別できない植物もあります。
花冠と花弁の違い
花冠と花弁は同じものではありません。
花弁は一枚一枚の器官、花冠はそれらをまとめた名称です。
たとえばバラの花を見た場合、
それぞれの花びらが花弁で、
1つの花についている花弁全体が花冠です。
「花冠=1枚の花びら」と理解するのは誤りです。
花冠と萼・花被の関係
典型的な花では、
萼片全体を萼(がく)、
花弁全体を花冠と呼びます。
萼と花冠を合わせた部分を
花被(かひ、perianth)といいます。
- 萼片の集まり → 萼
- 花弁の集まり → 花冠
- 萼+花冠 → 花被
ただし、ユリやチューリップなどのように、
外側と内側の花被がよく似ていて
萼片と花弁を明確に区別しにくい植物があります。
このような場合、それぞれを
花被片(かひへん、tepal)と呼びます。
したがって、
花びらのように見える部分があるからといって、
必ず「花冠」があるとは限りません。
合弁花冠と離弁花冠
花冠は、花弁同士が合着しているかどうかによって
形態的に区別できます。
合弁花冠
合弁花冠(ごうべんかかん)とは、
花弁の一部または大部分が互いに合着している花冠です。
アサガオなどでは花弁が合着し、
漏斗状の花冠を形成しています。
合着していても、
花冠の先端には元の花弁に対応する裂片が確認できる場合があります。
離弁花冠
離弁花冠(りべんかかん)とは、
花弁同士が互いに合着せず、
それぞれ分かれている花冠です。
バラなどで見られます。
なお、「合弁」「離弁」は花冠の形態を説明する用語です。
かつて植物分類で用いられた
「合弁花類」「離弁花類」という大きな分類群と
そのまま同一視しないよう注意が必要です。
花冠の相称性
花冠の形は、
対称性によって説明されることがあります。
放射相称
中心を通る複数の方向で、
ほぼ左右対称に分けられる形を
放射相称(ほうしゃそうしょう)といいます。
アサガオやトマトなどの花では、
花冠が放射状に配置されています。
左右相称
基本的に1つの面でだけ左右対称になる形を
左右相称(さゆうそうしょう)といいます。
エンドウなどのマメ科植物では、
花弁の形や配置が上下で異なり、
左右相称の花冠を形成します。
花冠の相称性は、
植物の識別や花の構造を理解する際の重要な特徴の一つです。
ヒマワリを「放射相称花冠」の例にしない理由
ヒマワリは一見すると、
多数の花弁を持つ1個の大きな花のように見えます。
しかし、実際には多数の小さな花が集まった
頭状花序です。
一般的なヒマワリでは、
- 中央部:多数の筒状花
- 周辺部:花弁のように見える舌状花
から構成されています。
中央の筒状花の花冠は放射相称ですが、
周辺の舌状花の花冠は左右相称です。
したがって、
ヒマワリの花序全体を1個の「放射相称花冠」と説明するのは適切ではありません。
花冠の主な働き
昆虫や鳥などによって花粉が運ばれる植物では、
花冠の色、形、模様などが
送粉者を花へ誘う働きを持つ場合があります。
花冠の形によって、
送粉者が花粉や蜜のある位置へ入りやすくなる植物もあります。
ただし、
すべての花冠が送粉者を誘うために発達していると
一律に説明することはできません。
風によって花粉が運ばれる植物では、
花弁が小さく目立たなかったり、
花冠そのものを欠いたりする場合があります。
また、花冠が内部の花器官を覆うことで
保護に関わる場合はありますが、
蕾の保護を花冠の普遍的な主要機能として説明するのは適切ではありません。
花冠の形と植物の識別
花冠には、
筒状、漏斗状、鐘状、唇形など、
植物によってさまざまな形があります。
花弁の枚数、
花弁同士の合着の有無、
裂片の数、
相称性などは、
植物の種類を識別する手がかりになります。
ただし、
花冠の形だけで植物の種類を断定することはできません。
萼、雄しべ、雌しべ、子房、花序などの特徴も合わせて確認します。
農業・園芸で花冠を見るときの注意点
花き栽培では、
花冠の大きさ、形、色、傷、変形などが
商品性を評価する項目になることがあります。
また果菜類では、
開花状態を確認する際の目印になる場合があります。
一方で、
花冠の退色、変形、斑点、傷、早期脱落などだけを見て、
原因を特定することはできません。
温度、日射、病害、害虫、薬害、
水分状態、生理的な老化、物理的損傷など
さまざまな原因が考えられます。
花冠の異常だけを根拠に、
遮光、施肥、農薬散布などの対策を決めるのは適切ではありません。
原因を判断する場合は、
作物・品種、発生時期、花以外の症状、
温湿度、農薬や肥料の使用履歴などを確認する必要があります。
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