雄しべ(おしべ)

雄しべ

雄しべとは

雄しべ(おしべ)とは、
被子植物の花にある、花粉の形成・放出に関わる
雄性側の花器官です。
一般的な雄しべは、花粉を形成して放出する
葯(やく)と、
葯を支える花糸(かし)から構成されます。

漢字では「雄蕊(ゆうずい)」とも書き、
英語ではstamenといいます。
1つの花にある雄しべ全体は
雄蕊群(ゆうずいぐん、androecium)と呼ばれます。

雄しべの形、本数、葯と花糸の形態は植物によって大きく異なります。
花糸が非常に短いもの、複数の雄しべが合着するもの、
花粉を形成しない仮雄しべを持つ植物もあります。
そのため、「雄しべは必ず同じ形をしている」
「雄しべがあれば必ず正常な花粉をつくる」とは限りません。

雄しべの構造

雄しべは、基本的に葯と花糸の2つの部分から構成されます。

葯(やく)

葯は、
雄しべのうち花粉を形成し、
成熟した花粉を外へ放出する部分です。
多くの場合、花糸の先端付近にあります。

葯の内部には小胞子嚢(花粉嚢)があり、
その中で小胞子が形成され、花粉粒へと発達します。
花粉が成熟すると、葯が裂けたり孔が開いたりすることで
花粉が外部へ放出されます。

葯の内部構造や花粉の放出方法には植物による違いがあります。
そのため、
「すべての葯が同じ数の花粉嚢を持ち、同じ方法で開く」
とは考えない方が正確です。

花糸(かし)

花糸は、
葯を支える柄状の部分です。
花糸の長さや形、伸び方によって葯の位置が決まり、
花粉を放出する位置にも関係します。

花糸は必ず長く伸びるとは限りません。
植物によっては非常に短いものや、
複数の花糸が互いに合着しているものもあります。

花の構造を示した模式図

雄しべと花粉

雄しべの重要な役割は、
花粉を形成し、
成熟した花粉を葯から放出することです。

花粉は、葯内部の小胞子嚢で形成された小胞子から発達します。
成熟後に葯から放出され、
風や昆虫などによって運ばれたり、
花の振動などによって移動したりします。

なお、花粉そのものと雄しべは別のものです。
雄しべは花粉を形成・放出する花器官であり、
花粉はそこから生じる雄性配偶体です。

雄しべと受粉

被子植物では、
葯から放出された花粉が
雌しべの
柱頭に付着することを
受粉といいます。

雄しべは受粉に必要な花粉を供給する側の器官です。
雄しべそのものが雌しべに触れることを受粉というわけではありません。

また、
受粉と受精は別の現象です。
受粉後、花粉が発芽して花粉管を伸ばし、
その後の過程を経て胚珠内で受精が成立します。

雄しべと雄花・両性花

雄しべは雄花だけに存在する器官ではありません。

両性花では、
1つの花の中に正常に機能する雄しべと雌しべの両方があります。
一方、単性花のうち雄花では、
雄しべが正常に機能して花粉を形成します。

雌花では正常に機能する雄しべを持たないことが基本ですが、
植物によっては退化した雄しべや仮雄しべが残る場合があります。
このため、花の外観だけで雄花・雌花を判断できない場合もあります。

雄しべの形や本数は植物によって異なる

雄しべの本数、長さ、葯の向き、花糸の形などは植物によって異なり、
植物を識別・分類する際の特徴にもなります。

雄しべが互いに離れている植物もあれば、
花糸や葯が合着してまとまった構造になる植物もあります。
また、同じ花の中でも雄しべの長さが異なる植物があります。

したがって、
「雄しべは雌しべの周囲に同じ長さで並ぶもの」
という理解は正確ではありません。

農業で雄しべを確認する場面

果菜類や果樹などで着果や種子形成が不安定な場合、
雄しべ、特に葯や花粉の状態を確認することがあります。

確認する主なポイントは、
葯が正常に発達しているか、
葯から花粉が放出されているか、
花粉量が極端に少なくないか、
花粉の発芽能力が確保されているか、
雄しべと柱頭の位置関係に異常がないか、などです。

ただし、着果不良を雄しべだけで判断してはいけません。
温度、湿度、樹勢、栄養状態、
柱頭の受容性、訪花昆虫の活動、
受粉方法、薬害、品種特性なども関係します。

花が咲いているからといって、
正常な花粉が十分につくられ、
受粉・受精まで成立しているとは限りません。

雄しべで誤解しやすい点

「雄しべ=葯」ではありません。
葯は雄しべを構成する一部分です。
一般的な雄しべは葯と花糸から構成されます。

「花粉=雄しべ」でもありません。
雄しべは花粉を形成・放出する花器官で、
花粉は葯の内部で形成されます。

「受粉=受精」ではありません。
受粉は花粉が柱頭に付着する段階であり、
受精はその後に起こります。

「雄しべがあれば正常な花粉をつくる」とも限りません。
退化した雄しべや仮雄しべがあるほか、
環境条件などによって正常な花粉形成や放出が妨げられることがあります。

雄しべを英語でいうと

雄しべは英語でstamenといいます。
複数形はstamensまたはstaminaです。

関連する英語表記は次のとおりです。

  • 雄しべ:stamen
  • 雄蕊群:androecium
  • 葯:anther
  • 花糸:filament
  • 花粉:pollen

関連する資材分類・農業用語

参考資料

  • 福岡教育大学「花を構成する要素」
  • 北海道大学「植物形態」

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