育苗とは
育苗(いくびょう)とは、
本圃への定植・移植や、その後の栽培に使用する苗を、
作物や栽培方式に適した大きさ・生育段階まで育てる工程です。
種子から苗を育てる場合だけを指す言葉ではありません。
作物によって、播種、挿し木、接ぎ木、株分け、
ランナーから形成された子株など、
さまざまな方法で苗を作ります。
イチゴでは、親株から伸びたランナーに形成される子株を採苗し、
ポットなどで発根・生育させて定植苗に仕立てる方法が広く利用されています。
水稲では、育苗箱などに播種し、
田植えに適した葉齢や苗姿になるまで管理する工程が育苗にあたります。
育苗の目的
育苗の目的は、定植・移植後の栽培に適した、
健全で生育の揃った苗を必要な時期に確保することです。
苗の大きさだけでなく、根の発達、葉の状態、茎の充実、
生育の揃い、病害虫の有無などを確認します。
大きく育った苗が必ずしも良い苗とは限りません。
徒長した苗、根が傷んだ苗、老化した苗などは、
定植後の活着や初期生育が不安定になることがあります。
育苗条件は作物、品種、作型、生育段階、育苗方式によって異なります。
育苗全般に共通する温度や湿度の適正値はありません。
主な育苗方法
播種による育苗
種子をまいて発芽させ、苗を育てる方法です。
セルトレイ、育苗箱、ポットなどが利用されます。
播種後は、発芽に必要な温度や水分を確保し、
出芽後は光、温度、灌水、施肥などを生育段階に合わせて管理します。
栄養繁殖による育苗
親株の茎、芽、子株などを利用して苗を増殖する方法です。
イチゴのランナー育苗や、作物によって行われる挿し木・株分けなどが該当します。
栄養繁殖では親株の性質を引き継ぐため、
親株の生育状態や病害虫の有無も苗質に影響します。
接ぎ木育苗
台木と穂木を接いで苗を作る方法です。
トマト、ナス、キュウリ、スイカなどで利用されています。
土壌病害に抵抗性を持つ台木の利用、
草勢や低温期の生育など台木の特性を活用することが主な目的です。
接ぎ木後は、活着するまで温度、湿度、光などを適切に管理します。
水稲の育苗
水稲では、育苗箱などに播種し、
田植えに適した状態になるまで苗を育てます。
育苗方式には、稚苗・中苗・成苗などの苗齢による区分や、
マット苗、ポット苗など使用する資材・方式による違いがあります。
播種量、覆土量、温度、灌水、施肥、
日射などの管理条件は、育苗方式や地域、作型によって異なります。
育苗箱から伸びた根が育苗床や地面へ入り込むと、
田植え前に苗箱を持ち上げにくくなることがあります。
このような場合には、根切りシートや根切りネットを利用して、
育苗箱外への根の伸長を制御する方法があります。
育苗管理で確認すること
温度、光、水分、肥料、培地、株間、通風などは苗質に影響します。
過湿では根域の酸素不足や根傷みが起こりやすくなり、
乾燥が強すぎれば生育が停滞します。
過度な施肥や過密管理、光不足、高温管理などは、
徒長や生育不揃いにつながることがあります。
灌水では、
与えた水の量だけでなく、培地の保水性や排水性、
育苗容器の大きさ、根の発達状態も確認します。
定植前には、育苗環境から本圃環境へ急激に移すことで
苗が強いストレスを受ける場合があります。
作物や作型によっては、灌水や温度などを調整しながら
定植環境へ徐々に慣らす管理が行われます。
管理値を一律に決めず、
対象作物、品種、生育段階、育苗方式に適した条件を確認します。
育苗で起こりやすい失敗
育苗では「大きく育てればよい」と考えると、
定植適期を過ぎた老化苗や徒長苗を作ることがあります。
また、毎日同じ量を灌水する管理も適切とは限りません。
蒸散量や培地の乾き方は、天候、苗の大きさ、根量によって変化します。
苗の大きさだけで苗質を判断しないことが大切です。
地上部と根のバランス、生育の揃い、病害虫、
定植後の活着を含めて判断します。
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