頴とは
頴(えい)とは、主にイネ科植物の小穂や花を構成する、葉が変形した鱗片状の器官です。
イネでは、花を直接包む外頴(がいえい)と内頴(ないえい)があり、その基部には護頴(ごえい)と呼ばれる小さな構造があります。
「穎」と表記される場合もあります。
イネの外頴と内頴は、開花前には雄しべや雌しべなどの花器を包んで保護しています。
開花時には鱗被(りんぴ)が吸水して膨らむことで外頴と内頴が開き、雄しべの葯が外へ出て花粉を放出します。
花粉が雌しべの柱頭に付着する受粉を経て受精が成立すると、内部の子房が発達して米粒が形成されます。
開花後、外頴と内頴は再び閉じ、登熟する米粒を外側から包みます。
成熟すると外頴と内頴は、一般に籾殻(もみがら)と呼ばれる部分になります。
この籾殻に包まれた状態が籾(もみ)です。
外頴・内頴・護頴の違い
イネの「頴」を理解する際には、外頴・内頴・護頴を区別する必要があります。
これらは形や位置が異なり、英語名称もそれぞれ異なります。
- 外頴(lemma):イネの花を外側から包む主要な頴の一つです。内頴と組み合わさって花器や発達中の米粒を包みます。
- 内頴(palea):外頴と向かい合う位置にあり、外頴とともに花を包みます。
- 護頴(glume):小穂の基部にある小さな頴状の器官です。イネでは特に小さく退化した形になっています。
したがって、「頴」を英語で一律に glume と訳すのは正確ではありません。
どの部位を指しているかによって、lemma、palea、glumeを使い分けます。
頴と籾殻の関係
農業現場では、成熟した外頴と内頴をまとめて「籾殻」と呼ぶため、頴と籾殻が同じ意味のように扱われることがあります。
しかし、植物学上の「頴」は開花前から存在する器官名であり、籾殻はその外頴・内頴が成熟した状態を指す農業上の呼称です。
また、頴は玄米の「皮」ではありません。
玄米はイネの果実に相当する部分で、その内部には胚乳や胚などがあります。
頴はそれらとは別に、果実の外側を包む花由来の器官です。
開花と頴の動き
イネの開花では、外頴と内頴そのものが自力で開くわけではありません。
花の基部にある鱗被が急速に吸水して膨らみ、その力によって外頴と内頴が押し開かれます。
開花すると雄しべが伸び、葯から花粉が放出されます。
受粉後は頴が閉じ、内部では米粒の充実が進みます。
この粒が充実していく期間が登熟期です。
農業上の頴の重要性
頴は単なる籾の外皮ではなく、開花から登熟まで内部の生殖器官や発達中の米粒を包む構造です。
また、外頴の色、毛の有無、形状、先端部の色、芒の有無や長さなどは、イネの品種識別や形態調査に用いられることがあります。
種子として利用する種籾でも、頴を含む籾の状態や損傷の有無は重要です。
ただし、発芽する植物体そのものは頴ではなく、籾の内部にある種子・胚に由来します。
頴と頴果の違い
頴(えい)と頴果(えいか)は別の用語です。
頴はイネ科植物の花や小穂を構成する鱗片状の器官を指します。
これに対して頴果(caryopsis)は、イネ・コムギ・トウモロコシなどイネ科植物に特徴的な果実の型を指します。
イネの場合、私たちが玄米と呼ぶ部分が頴果に相当し、その外側を外頴と内頴が包んで籾を形成しています。
「頴果」という名称に「頴」の文字が含まれているため混同されやすいものの、両者は同じ器官ではありません。
英語表記
頴に関する英語名称は、部位によって異なります。
- 外頴:lemma
- 内頴:palea
- 護頴:glume
そのため、「頴」単独の英語表記として一語に固定するのではなく、lemma / palea / glumeとし、対象となる器官によって名称が異なることを併記するのが適切です。
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