チューブ灌水とは
チューブ灌水(灌水チューブ)とは、主にポリエチレン製などの細長いチューブに設けられた散水孔から水を吐出させる灌水方式です。
施設園芸や露地栽培で利用され、製品によって畝やマルチ下へ散水するタイプ、葉菜類や育苗向けに広く散水するタイプ、片側だけへ散水するタイプ、霧状に散水するタイプなどがあります。
灌水チューブには、針孔・パンチ孔・レーザー加工孔などさまざまな構造がありますが、孔の加工方法だけで性能の優劣は判断できません。
散水量、散水幅、使用圧力、均一散水長、孔間隔、必要なろ過条件などを確認し、作物・畝幅・栽培方式・水源・圃場条件に適した製品を選定する必要があります。
なお、一般的な散水孔を設けた灌水チューブと、エミッターや流路構造によって吐出量を制御する点滴灌水(点滴潅水)用の点滴チューブ・点滴テープでは、吐出特性や必要圧力、ろ過条件が異なります。
用途が異なるため、同じものとして選定しないことが重要です。
チューブ灌水取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名 | 特徴 |
|---|---|---|
| 合資会社浅井染工場 | 灌水チューブ | ハリ孔・パンチ孔などに対応するポリエチレン製灌水チューブ。エンボス加工タイプなどを展開 |
| タキロンシーアイ株式会社 | セフティ灌水チューブ | 水平散水タイプ。レーザー加工孔を採用し、両面・片面や孔ピッチの異なる規格を展開 |
| タキロンシーアイ株式会社 | セフティ灌水 潤水/育みワイド | 噴霧散水タイプなどを展開。ハウス・育苗・露地など用途に応じて最新規格を確認して選定 |
| 石本マオラン株式会社 | マイカエース | ポリエチレン製灌水チューブ。孔間隔・孔径・厚みなど複数規格を展開 |
| 石本マオラン株式会社 | マイカウイング | レーザー加工孔を採用した灌水チューブ。用途に応じて規格を選定 |
| 阪中緑化資材株式会社 | アルミ箔灌水チューブ | イチゴ育苗などの株元灌水向け。アルミ箔を貼り合わせた専用タイプ |
| 住化アグリテック株式会社 | スミサンスイM/M-03 | 施設・露地などの散水用。製品ごとに使用圧力・均一散水長・必要ろ過条件が設定されている |
| 住化アグリテック株式会社 | スミサンスイRシリーズ | 育苗・ハウスワイド・露地ワイドなど用途別に展開 |
| 住化アグリテック株式会社 | スミチューブシリーズ | 果菜・イチゴ・スイカ・メロンなど用途別の水平散水用チューブを展開 |
| 住化アグリテック株式会社 | ネオドリップウエシタ02L/04L | 上方・下方散水など用途に応じて使用する灌水チューブ |
| 住化アグリテック株式会社 | ミストエース20ポット育苗 | ポット育苗などの均一散水を目的とした噴霧散水タイプ |
| 住化積水フィルム株式会社 | タフカンスイ | レーザー加工による散水孔を採用した農業用灌水チューブ |
| 住化積水フィルム株式会社 | カンスイチューブ | 農業用散水チューブ。用途・散水条件に応じた規格を展開 |
| 日新化学工業株式会社 | ECOチューブ(灌水チューブ) | レーザー加工孔を採用した灌水チューブ。両面孔タイプ・片面孔タイプを展開 |
| MKVアドバンス株式会社 | エバフローシリーズ | 噴霧・根元散水など用途別に展開。製品ごとに適正圧力・均一散水長などを確認して選定 |
| MKVアドバンス株式会社 | キリコシリーズ | マルチ下・ハウス・片側散水・露地など用途別に複数タイプを展開 |
チューブ灌水の主な種類
水平散水・マルチ下向け
畝上やマルチ下などへ敷設し、作物の株元や根域周辺へ水を供給するタイプです。
果菜類、イチゴ、スイカ・メロンなどで利用されます。
製品によって散水方向、散水幅、孔間隔、散水量が異なります。
噴霧・広幅散水タイプ
細かな水滴を比較的広い範囲へ散水するタイプです。
葉菜類、育苗、ハウス内のベッドなどで使用されます。
散水幅は使用圧力や設置高さなどによって変化するため、製品仕様に示された条件を確認する必要があります。
片側散水タイプ
チューブの片側方向を中心に散水するタイプです。
通路側への散水を避けたい場合や、圃場の端部、ベッドの配置などに合わせて利用されます。
露地・広域散水タイプ
比較的広い散水幅を持ち、露地野菜や育苗などに使用するタイプです。
露地では風の影響によって散水分布が変化しやすいため、無風条件のカタログ値だけで判断しないことが重要です。

チューブ灌水を選ぶときに確認する仕様
灌水チューブは、チューブ径や孔間隔だけで選定すると灌水ムラが発生することがあります。
少なくとも次の条件を確認します。
- 散水量:チューブ1m当たり、または製品1本当たりの吐出量を確認します。
- 散水幅:畝幅、ベッド幅、作物の配置に適した範囲へ散水できるか確認します。
- 使用圧力:メーカーが指定する適正使用圧力で運転します。耐圧値と適正使用圧力は同じではありません。
- 均一散水長:1本のチューブを長くしすぎると末端側の圧力が低下し、散水量が不均一になることがあります。
- 必要流量:多数のチューブを同時に使用する場合は、ポンプ・主管・支管を含めて必要流量を確保できるか確認します。
- ろ過条件:散水孔の大きさや水源に応じて、メーカー指定のろ過器・フィルターを設置します。
- 圃場の高低差:傾斜地や高低差の大きい施設では、位置によって圧力差が生じます。
- 水源:井戸水、河川水、ため池水などでは、砂、藻、有機物、鉄・マンガンなど目詰まり原因が異なります。
特に注意したいのは、「耐圧が高い製品ほど高い圧力で使用できる」「圧力を上げれば散水が均一になる」という考え方です。
圧力が高すぎても散水幅や吐出量が設計値から外れたり、チューブや接続部へ過大な負荷が掛かったりするため、必ず製品ごとの適正使用圧力で運転します。
チューブ灌水の設置・接続方法
- 使用するチューブの散水量と本数から、必要な給水量を確認します。
- 水源に適したろ過器・フィルターを設置します。
- 主管・支管・バルブを配置し、必要に応じて灌水区画を分けます。
- チューブをねじれや折れが生じないように敷設し、散水孔の向きを製品仕様に合わせます。
- メーカー指定または適合するジョイント・継手を使用して配管へ接続します。
- 末端は専用ストッパーなどで確実に止水します。
- 試運転を行い、始端と末端の散水状態、圧力、漏水、散水幅を確認します。
灌水チューブを水道やポンプへ直接接続すればよいとは限りません。
水圧が高すぎる場合には減圧が必要であり、複数本を接続する場合には主管・支管の口径やポンプ能力も散水均一性に影響します。
均一に灌水できない主な原因
- メーカー推奨値よりチューブを長く敷設している
- 同時使用するチューブ本数が多く、必要流量を確保できていない
- 主管・支管の口径が小さく、配管の圧力損失が大きい
- 使用圧力が製品の適正範囲から外れている
- 散水孔やフィルターが目詰まりしている
- チューブが折れたり、ねじれたりしている
- 圃場やベッドの高低差によって圧力差が発生している
- 露地で風の影響を受けている
灌水ムラが発生した場合は、単純にポンプ圧力を上げるのではなく、始端・末端の圧力、流量、フィルターの状態、チューブ長、配管口径などを順に確認します。
チューブ灌水の目詰まり対策
灌水チューブの目詰まり対策では、詰まってから散水孔を掃除することよりも、水源側で異物を除去してチューブへ流入させないことが重要です。
水源と製品仕様に合ったろ過器・フィルターを設置し、定期的にフィルターを洗浄します。
製品によってはチューブ内部に補助的なフィルター構造を持つものもありますが、それだけで水源側のろ過器が不要になるとは限りません。
メーカーが水源側フィルターの設置を指定している場合は必ず併用します。
シーズン中は、メーカーが認める方法でチューブ末端から内部の水を排出・洗浄し、堆積物を除去します。
散水孔を針などで広げると孔径が変わり、吐出量や散水分布が変化するため推奨できません。
また、メーカーが指定していない高圧空気や高圧水による洗浄も、チューブや接続部を損傷させる可能性があるため避けます。
鉄・マンガン、藻、有機物、肥料成分の析出などが原因の場合は対処方法が異なります。
原因を確認せず酸・塩素などによる薬品洗浄を行うことは、作物、設備、作業者への危険につながるため行わず、設備メーカーや専門事業者へ確認してください。
チューブ灌水で液肥を施用する場合
チューブ灌水設備へ液肥を注入して施肥を行う場合は、液肥混入器などを使用し、灌水水へ適切な濃度で混入します。
単に液肥原液を灌水配管へ接続する方法は適切ではありません。
液肥施用では、作物や栽培方式に応じてECやpHを確認するとともに、水質、肥料同士の混合可否、沈殿の発生、フィルターや散水孔の目詰まりにも注意します。
高濃度の原液を混合すると、肥料の組み合わせによっては沈殿が生じる場合があります。
液肥の注入終了後は、作物・肥料・設備の条件に応じて清水を通水し、配管やチューブ内部へ肥料成分を長時間残さないよう管理します。
有機質を含む液肥などは、無機液肥より目詰まりや微生物増殖の原因となりやすい場合があるため、設備への適合性を確認してから使用します。
チューブ灌水の巻き取り・保管
栽培終了後に灌水チューブを再利用する場合は、内部の水や堆積物を排出し、折れや強いねじれを生じさせないよう巻き取ります。
巻き取り機を使用する場合も、チューブを強く引っ張ったり折り曲げたりしないよう注意します。
保管時は直射日光や高温を避け、チューブを潰したり重量物を載せたりしないようにします。
再使用の可否や耐用期間は製品によって異なるため、メーカーの仕様を確認します。
チューブ灌水のメリットと注意点
メリット
- 作物や畝の配置に合わせて比較的簡単に灌水ラインを設置できる
- 製品選定によって株元、畝全体、育苗床など目的に合った散水ができる
- 手灌水と比較して灌水作業を省力化しやすい
- バルブや制御機器と組み合わせることで灌水区画を分けて管理できる
注意点
- 使用圧力やチューブ長が適正でないと散水ムラが生じる
- 水質やろ過条件が不適切だと散水孔が目詰まりする
- 噴霧・広幅散水では茎葉が濡れるため、作物や時期によっては病害リスクへの配慮が必要
- 露地では風の影響を受けやすい
- 製品によって使用圧力、散水幅、耐久性、再利用可否が大きく異なる