ずらし作業とは
ずらし作業(ずらしさぎょう)とは、主に育苗中のポット苗が生長して葉が重なり始めたときに、ポット同士の間隔を広げて苗を配置し直す作業です。
「鉢ずらし」「苗ずらし」と呼ばれることもあります。
苗同士が密集した状態では、隣接する株の葉が重なって受光条件が悪化し、茎や葉柄が過度に伸びる徒長や、苗の軟弱化につながることがあります。
ずらし作業によって各株の間隔を確保し、葉に光が当たりやすい状態にすることで、節間の詰まった充実した苗に仕上げやすくなります。
苗を土ごと少しずつ移動させて、定植時の植え傷みを防ぐための作業という意味ではありません。
ずらし作業を行う目的
葉の重なりを減らして受光条件を確保する
苗が小さい時期にはポットを密に並べることができますが、生長すると葉が広がり、隣の苗と重なります。
葉の重なりが大きくなると、下位葉や株の内側まで光が届きにくくなります。ずらし作業ではポット間隔を広げ、各株が光を受けやすい状態にします。
徒長や軟弱化を抑える
育苗密度が高く、葉が互いに重なった状態が続くと、受光量の低下や周囲の光環境の変化などによって、茎や葉柄が上方へ伸びやすくなります。
ずらし作業は、こうした密植状態を解消し、徒長を防ぐために行われます。
ただし、徒長は苗の間隔だけで決まるものではありません。日射不足、高温、特に夜温の過度な上昇、過剰な窒素施肥、過湿なども関係します。
鉢ずらしを行えば徒長を防げる、と単独の対策として考えるのは誤りです。
株間の風通しを確保する
苗の間隔を広げると、葉が密集した状態に比べて株間へ空気が通りやすくなります。
葉の重なりや過度な蒸れを減らすうえでは有利ですが、ずらし作業そのものを病害防除と考えることはできません。病害の発生は、病原体、温度、湿度、葉面の濡れ、感染源など複数の条件によって決まります。
ずらし作業を行う時期
ずらし作業の時期を「播種後○日」「本葉○枚」と一律に決めることはできません。
作物、品種、ポットの大きさ、育苗温度、日射量、育苗期間などによって苗の広がり方が異なるためです。
一般には、隣接する苗の葉が触れ始める、または葉の重なりが増え始める時期を目安に、葉同士が過度に重ならないようポット間隔を広げます。
葉が大きく重なってからでは、すでに節間や葉柄の伸長が進んでいることがあります。ずらし作業は、徒長してから苗姿を戻すための作業ではなく、密植による徒長を予防するために早めに行う管理です。
ずらし作業後に確認する管理
かん水管理
ポットの間隔を広げると、ポット側面や培地表面が周囲の空気にさらされやすくなり、密に並べていた状態とは乾き方が変わることがあります。
ずらし前と同じ時間、同じ回数で機械的にかん水を続けるのではなく、培地の水分状態や苗の吸水量を確認して調整します。
育苗面積
ずらし作業を行うと、同じ苗数でも必要な育苗面積が増えます。
育苗後半に必要となる面積を確保せず、苗を密集させたまま管理すると、十分なずらしができません。播種時点から、育苗後半の占有面積まで考えて苗数と育苗施設を計画します。
温度・光・肥培管理
ずらし作業だけで苗質を調整することはできません。
温度、日射、かん水、施肥、ポット容量などを含めて管理し、過度な栄養成長や苗の老化を防ぎます。
定植が遅れた場合とずらし作業
天候や圃場条件によって定植が予定より遅れると、苗が育苗施設内でさらに生長し、葉の重なりが大きくなることがあります。
このような場合にも、苗の間隔を広げる管理は有効です。
ただし、ずらし作業は苗の生育を停止させるための作業ではありません。
定植延期が長期間になる場合は、ポット容量、温度、かん水、施肥、苗齢なども含めて管理を見直す必要があります。苗を狭いポットのまま長期間維持すると、根詰まりや肥切れ、苗の老化などが問題になることがあります。
てん菜の「苗ずらし」は意味が異なる
「苗ずらし」という言葉は、すべての作物で同じ作業を指すわけではありません。
てん菜のペーパーポット育苗では、育苗中の苗床を移動させることで、ポットから伸び出した根を切る作業も「苗ずらし」と呼ばれます。
根を一度切ることで側根の発達を促したり、水分や養分の吸収を一時的に抑えて徒長を防いだり、育苗ハウス内の場所による苗の生育差を小さくする目的で行われます。
これは、トマト、ナス、ピーマンなどのポット苗で行う「鉢の間隔を広げるずらし作業」とは、目的や作業内容が異なります。
ずらし作業と混同しやすい作業
| 作業 | 主な内容 |
|---|---|
| 鉢上げ | 苗を育苗箱やセルなどからポットへ植え替える作業 |
| 鉢ずらし・ずらし作業 | 生長したポット苗の間隔を広げる作業 |
| 順化 | 定植前に温度、光、湿度など圃場の環境へ徐々に適応させる管理 |
| 定植 | 育てた苗を最終的な栽培場所へ植え付ける作業 |
| てん菜の苗ずらし | ペーパーポット苗床を移動させ、伸び出した根を切るなどして苗質を調整する作業 |
ずらし作業で起こりやすい誤解
- 植え傷みを防ぐための作業:一般的な果菜類の鉢ずらしの主目的ではありません。苗間隔を広げ、受光条件を確保して徒長を防ぐことが中心です。
- 根を刺激して根張りを良くする作業:果菜類の通常の鉢ずらしでは、根を切ること自体を目的としていません。てん菜の苗ずらしとの混同に注意が必要です。
- 定植が遅れた苗の生育を止める作業:ずらしによって密植状態は改善できますが、生育を停止させるものではありません。
- 苗の間隔は決まった寸法でよい:必要な間隔は作物、苗齢、葉張り、ポット径、日射条件などによって変わります。苗の状態を見て判断します。
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参考資料
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