水和剤(すいわざい)

水和剤

水和剤とは

水和剤(すいわざい)とは、農薬の有効成分を細かな粒子に加工し、水に分散・懸濁(けんだく)させて使用する農薬の剤型(ざいけい)の一種です。

一般的な粉末状の水和剤は、有効成分に鉱物質微粉などの担体や界面活性剤などを加えて製剤化されています。

使用時には所定の量の水で希釈し、噴霧器などを使って作物や土壌などへ処理します。

水和剤は、粉末を水に完全に溶かす製剤ではなく、細かな粒子を水中に分散させて使用することが基本です。

殺菌剤だけでなく、殺虫剤や除草剤などにも利用されています。

英語では、粉末状の水和剤を「Wettable Powder(WP)」と呼びます。

水和剤の仕組みと特徴

水和剤は、水に溶けにくい有効成分などを微細な粒子にし、分散剤や湿潤剤などを加えて、水中に分散しやすくした製剤です。

水を加えると粒子が水中に広がり、懸濁液と呼ばれる状態になります。

懸濁(けんだく)とは、細かな固体粒子が液体中に分散している状態のことです。

例えば、一般的な水和剤を水に混ぜると、粒子が分散して白色や褐色などの濁った液体になる場合があります。

これは農薬が完全に溶解しているのではなく、微細な粒子が水中に存在しているためです。

水和剤には、次のような特徴があります。

  • 希釈して使用:製品ごとに定められた希釈倍数や使用液量に従って使用します。
  • 粉末状で保管:一般的な粉末状の水和剤は液体を含まないため、保管や運搬時に液漏れの心配がありません。
  • かくはんが必要:製品によっては散布液中の粒子が沈降するため、適切なかくはんが必要です。
  • 粉立ちに注意:計量や薬液調製時に粉じんが発生する場合があります。

水和剤という剤型そのものが、殺虫力や殺菌力の強さを決めるわけではありません。

防除効果は有効成分、対象病害虫、散布時期、付着状態などによって異なります。

水和剤の主な用途

水和剤は、殺菌剤、殺虫剤、除草剤など、さまざまな用途に使用されています。

殺菌剤としての使用

病原菌による病害を防除する目的で使用されます。

例えば「アリエッティ水和剤」は、ブドウのべと病などを対象とした登録を持つ殺菌剤です。

殺虫剤としての使用

害虫を防除するための水和剤もあります。

例えば「ISKテルスター水和剤」は、登録された作物の害虫防除に使用される殺虫剤です。

除草剤としての使用

雑草の発生や生育を抑制する水和剤もあります。

例えば「シバゲン水和剤」は、芝地などに使用される除草剤です。

このように、水和剤は殺菌剤に限られるものではありません。

製品例について:
上記は水和剤の用途を理解するための例示です。
実際の適用作物、対象病害虫・雑草、希釈倍数、使用液量、使用時期、使用回数、使用方法は製品ごとに異なります。
農薬登録情報は変更される場合があるため、使用前に最新の登録情報と製品ラベルを確認してください。

水和剤と他の剤型の違い

水和剤は粉末状の粉剤や、粒状の粒剤と混同されることがあります。

また、水に希釈して使用する水溶剤や顆粒水和剤、液体状のフロアブル剤とも区別が必要です。

粉剤との違い

粉剤は、一般に水で希釈せず、そのまま散布する製剤です。

水和剤は、水で希釈・懸濁させて使用します。

どちらも粉末状ですが、使用方法は異なります。

粒剤との違い

粒剤は、農薬の有効成分を粒状に製剤化したものです。

一般に水で希釈せず、土壌、株元、水田、育苗箱などへ施用します。

水和剤は散布液を調製して使用するため、粒剤とは必要な設備や作業方法が異なります。

水溶剤との違い

水溶剤は、水に溶解させて使用する農薬の剤型です。

水和剤は、固体の微細な粒子を水に分散・懸濁させることが基本です。

「水に溶ける」と「水に分散する」は、同じ意味ではありません。

水溶剤と水和剤では、薬液の状態や散布機での取り扱いが異なります。

顆粒水和剤との違い

顆粒水和剤は、水に分散させて使用する顆粒状の製剤です。

粉末状の水和剤と比べて、計量や薬液調製時の粉立ちを抑えやすい製品があります。

顆粒水和剤は「Water Dispersible Granule(WG)」と呼ばれ、ドライフロアブル剤と表記されることもあります。

一般的な粉末状水和剤と外観は異なりますが、水中に微粒子を分散させて使用する点は共通しています。

フロアブル剤との違い

フロアブル剤は、有効成分などの微粒子をあらかじめ液体中に分散させた製剤です。

粉末状の水和剤と比べて粉立ちが少なく、液体として計量できる特徴があります。

ただし、液体のフロアブル剤でも沈降が生じる場合があるため、使用前に適切な振とうやかくはんが必要です。

剤型の分類について:
日本の農薬登録上の分類では、顆粒水和剤やフロアブル剤なども「水和剤」に分類される場合があります。
本ページでは、一般的な粉末状の水和剤(WP)を中心に説明しています。
個別製品では商品名と登録上の剤型を確認してください。

水和剤の希釈と散布液の作り方

粉末状の水和剤は、使用する製品の登録内容と取扱説明に従って調製します。

製剤が均一に分散していないと、散布液中の有効成分の濃度が偏り、防除効果や薬害に影響するおそれがあります。

1. 農薬ラベルを確認する

使用する作物、対象病害虫、希釈倍数、使用液量、使用時期、使用回数、使用方法などを確認します。

また、希釈方法や混用に関する注意事項も確認してください。

2. 必要な薬剤量を計算する

水和剤は、一般に重量(g)で計量します。

例えば、1,000倍に希釈した散布液を10L作る場合、必要な水和剤は10gです。

製品専用の計量器具や、必要な精度を備えたはかりを使用してください。

一般的な計量カップは容量を測る器具であり、粉末の重量を正確に測れるとは限りません。

3. 水に分散させる

製品の使用説明に従い、水和剤を水に分散させます。

製品によっては、少量の水であらかじめ均一に分散させてから、散布タンクへ投入する方法が指定されることがあります。

一度に大量の粉末を投入すると、粉の塊ができて分散不良を起こす場合があります。

調製手順は製品によって異なるため、指定された方法を守ってください。

4. 所定の液量に調整する

薬剤が十分に分散したら、必要な量の水を加え、所定の散布液量に調整します。

散布液を調製する際は、適切にかくはんして薬剤を均一に分散させます。

希釈倍数は、薬剤を水に加えた後の散布液量を基準に計算します。

5. 散布中の沈降を防ぐ

水和剤の散布液は、放置すると固体粒子が沈降する場合があります。

散布中も製品や散布機の仕様に従い、適切なかくはん状態を保ってください。

沈降した状態で散布すると、薬液濃度が均一にならず、防除効果の低下や薬害につながるおそれがあります。

注意:
ここで説明した方法は、一般的な粉末状水和剤の調製に関するものです。
実際の調製順序、予備希釈の必要性、かくはん方法などは製品ごとに異なります。
特に複数の農薬を混用する場合は、製品の混用可否や調製順序を事前に確認してください。

水和剤を散布する際の注意点

沈降・分散不良による散布むら

水和剤は懸濁液として使用するため、粒子の沈降や分散不良に注意が必要です。

散布液が均一でないと、タンク内の位置や散布する時間帯によって薬剤濃度が異なる場合があります。

薬液調製後は、製品と散布機の取扱説明に従ってかくはんし、適切な状態を保って散布してください。

ノズルやフィルターの詰まり

水和剤が十分に分散していない場合や、散布液に異物が混入している場合は、ノズルやフィルターが詰まるおそれがあります。

また、粒子の大きさや散布液の性質によって、使用できるノズルやフィルターが制限される場合があります。

散布前に設備の適合性を確認し、散布中も吐出量や噴霧状態を点検してください。

粉じんの吸入や皮膚への付着

粉末状の水和剤は、容器の開封や計量、薬液調製の際に粉じんが発生する場合があります。

粉じんを吸入したり、皮膚や眼に付着させたりしないよう注意が必要です。

農薬ラベルに従い、適切な農薬用マスク、保護眼鏡、手袋、作業衣などを使用してください。

農薬の混用と展着剤の使用

水和剤と他の農薬を混用する場合は、製剤同士の相性に注意が必要です。

混用によって凝集、沈殿、分離などが起きると、防除効果の低下や散布機の詰まりにつながる場合があります。

また、展着剤は、すべての水和剤に加える必要があるわけではありません。

展着剤の添加によって薬液の付着状態や薬害の発生が変わる場合もあります。

混用可否や展着剤の使用は、製品ラベルとメーカーの技術資料を確認して判断してください。

散布後の洗浄と残液処理

散布後は、使用した散布機のタンク、配管、ノズルなどを適切に洗浄します。

製剤の残留によって、次に使用する薬剤との混合や薬害が起きる場合があります。

散布液は必要量を計算して調製し、余剰液の発生を抑えてください。

残った散布液や洗浄液を、河川、水路、排水溝などへ流してはいけません。

処理方法は農薬ラベル、関係法令、メーカーの指示などに従ってください。

水和剤を選ぶ際の判断

水和剤を選ぶ際は、剤型だけでなく、対象病害虫と作物への適用、散布設備、作業条件を確認します。

  • 対象病害虫:防除したい病害虫や雑草に適用があるか。
  • 使用方法:散布、灌注、種子処理など、登録された方法で使用できるか。
  • 散布設備:使用する噴霧器やノズルが製剤に対応しているか。
  • 薬液調製:正確な計量と適切なかくはんが可能か。
  • 作業者の安全:粉じんへの曝露や散布液の付着を防ぐ対策が取れるか。

水和剤は多くの農薬に採用される剤型ですが、どの作物にも使用できるわけではありません。

使用できる作物、対象病害虫、使用時期、使用量、本剤の使用回数、有効成分を含む農薬の総使用回数などを、最新の農薬登録情報で確認してください。

水和剤の参考動画

水和剤は、正確な計量と水への分散、散布液の調製が必要な製剤です。

散布液を作るまでの作業の流れを確認する際は、次の動画が参考になります。

農薬の正しい使い方「散布液の調製」
クロップライフジャパン(旧・農薬工業会)

農薬の適切な計量や、散布液の調製作業について解説しています。

農薬の正しい使い方「散布液の調製」(YouTube)を見る

動画について:
この動画は、農薬の散布液を適切に調製するための参考資料として紹介しています。
水和剤だけに限定した動画ではありません。
農材ドットコムが制作・管理している動画ではありません。
動画の内容、公開状況、URLなどは、公開元の都合により変更または削除される場合があります。
実際の調製方法は、農薬の剤型、製品の性質、希釈倍数、使用する散布設備などによって異なります。
必ず最新の農薬登録情報と製品ラベルを確認してください。

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参考資料

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