
粉剤(ふんざい)とは、主に害虫や病気を防ぐために用いられる粉末状の農薬であり、風のない穏やかな気象条件下で散布することが推奨される資材です。
粉剤は液体や粒剤と異なり、水に溶かす手間がなく、直接そのまま使用できる利便性から、小規模農家から大規模圃場まで幅広く利用されています。播種や定植時の畝(うね)表面への処理によって、地中や地表近くに潜む害虫を効果的に防除することができます。
特にキャベツやダイコンなどのアブラナ科野菜においては、コナガやアオムシなどの害虫対策として一般的です。
同意語としては「粉末農薬」「パウダー剤」などがあります。
粉剤の概要
粉剤は農薬の剤型(ざいけい)の一種で、主成分となる有効成分に鉱物粉末などの※担体(たんたい)を混合し、一定の粒径に整えたものです。 使用時にはそのまま作物や土壌表面に振りかけたり、手撒き・動力散布機などで広範囲に散布したりします。
粒子が軽いため、作物の表面や葉の裏側まで自然に付着しやすく、物理的なコーティング効果や忌避(きひ)効果が期待されます。
※担体はただの「増量剤」や「詰め物」ではなく、農薬の性能や安全性に大きな影響を与える重要な素材です。
粉剤の詳細説明
粉剤は、主に次のような場面で用いられます。
- 播種・定植時に畝表面へ撒くことで、初期の害虫から若い苗を守る
- 収穫前の薬剤制限期間が長い作物に対して、持続性のある防除効果を狙う
- 葉面の害虫に対し、粒子の付着による忌避や殺虫効果を発揮する
代表的な使用例としては、「タチガレン粉剤」による苗立枯病(なえたちがれびょう)対策や、「ネビジン粉剤」「カルホス粉剤」によるコガネムシ幼虫などの土壌害虫防除が挙げられます。 また、「トレボン」「ダントツ粉剤」などは汎用性の高い殺虫剤として、特にアブラナ科やナス科の野菜に多用されています。
粉剤の役割
- 害虫の初期防除
発芽直後や定植直後の作物における重要な防除手段となる。 - 簡便な使用性
水で希釈せず使用できるため、迅速な対応が可能。 - 持続的効果
土壌中でゆっくりと効果を発揮し、長期間の害虫抑制が可能。
粉剤の課題と対策
- 飛散性の高さ
粉剤は軽いため風による飛散が起こりやすく、周囲への影響や効果の低下が懸念されます。対策:風速が低く湿度の高い早朝や夕方に散布し、飛散防止マスクやゴーグルの着用も重要です。
- 作業者への曝露(ばくろ)リスク
粉末が吸引されると呼吸器に悪影響を及ぼす可能性があります。対策:マスク着用、散布後の衣類の交換、風上からの散布など安全対策の徹底が求められます。
- 降雨による流出
散布直後に雨が降ると、有効成分が流されて効果が薄れることがあります。対策:天気予報を確認し、散布後6時間以内の降雨がない時間帯を選びましょう。