粉剤(ふんざい)

粉剤
粉剤(ふんざい)

粉剤とは

粉剤(ふんざい)とは、農薬の有効成分を鉱物質微粉などの担体(たんたい)と混合し、細かな粉末状に製剤化した農薬の剤型(ざいけい)の一種です。

一般に粒径45μm(マイクロメートル)以下の微粉を主体とし、水で希釈せず、そのまま散布または土壌へ施用します。

粉剤には、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、植物成長調整剤などがあります。

薬液を調製する必要がなく、散布作業を比較的簡便に行える一方、細かな粒子が風で飛散しやすく、作業者の吸入や周辺圃場へのドリフト(農薬の飛散)に注意が必要です。

なお、「粉末農薬」や「パウダー剤」は一般的な表現であり、正式な剤型名である粉剤と厳密に同じ意味ではありません。粉末状でも、水に希釈して使用する水和剤などは粉剤とは区別されます。

粉剤の特徴と仕組み

粉剤は、農薬の有効成分をクレーなどの鉱物質微粉に混合し、散布に適した状態に製剤化したものです。

有効成分の量が少なくても、一定面積に必要な量を分布させられるよう、担体や補助成分が使用されています。

担体は単なる増量材ではなく、粒子の流動性や分散性、散布時の取り扱いやすさなどに関係する構成材料です。

粉剤の主な特徴は次のとおりです。

  • 希釈作業が不要:通常は水を加えず、そのまま使用できます。
  • 専用散布機による作業:粉剤に対応した背負式動力散布機などで広い面積へ散布できます。
  • 多様な使用方法:作物への散布だけでなく、登録内容によって土壌表面散布や土壌混和などに使用されます。
  • 飛散しやすい:粒子が細かいため、風や散布機の送風によって圃場外へ飛散するおそれがあります。

粉剤は葉の裏側まで自然に均一付着するものではありません。散布機の吐出量や送風、作物の繁茂状態、散布方向などによって付着分布が変わります。

また、粉剤そのものに共通する忌避効果や長期残効性があるわけではありません。防除対象や効果の持続期間は、有効成分と製剤の特性によって異なります。

DL粉剤とは

DL粉剤(ディーエルふんざい)は、通常の粉剤に比べて飛散を少なくするよう工夫された製剤です。

DLは「Drift Less(ドリフトレス)」の略で、飛散しにくいという意味です。

従来の粉剤に含まれる非常に細かな粒子を減らしたり、粒子が凝集しやすいようにしたりすることで、空気中へ長時間浮遊する微粉の割合を低減しています。

水稲の病害虫防除では、DL粉剤が使用されています。

ただし、DL粉剤は飛散を低減した製剤であり、ドリフトを完全に防止できる製剤ではありません。

風向きや風速、散布機の風量、圃場と周辺作物の位置関係などを確認し、飛散を防ぐ必要があります。

粉剤・粒剤・水和剤の違い

農薬には、使用方法に応じてさまざまな剤型があります。

粉剤

細かな粉末状の製剤で、原則として水で希釈せずに使用します。

作物への散布、土壌表面散布、土壌混和など、登録された方法で施用します。

粒剤

粒剤は、粉剤より粒子が大きい粒状の製剤です。

そのまま使用する点では粉剤と共通しますが、一般に細かな粉剤より飛散しにくい特徴があります。

土壌施用、水田への散布、育苗箱処理など、製品によって用途が異なります。

水和剤

水和剤は、粉末などの形状をした製剤を水に分散させて使用する剤型です。

粉剤と外観が似ていても、使用方法は異なります。

水和剤の有効成分は、水に完全に溶解するとは限らず、微粒子として分散・懸濁する場合があります。

粉末状の農薬を見た目だけで粉剤と判断し、水で希釈したり、そのまま散布したりしてはいけません。

製品名、剤型、使用方法を農薬ラベルで確認してください。

粉剤の主な使用例

粉剤には、作物へ直接散布する製品と、土壌へ施用する製品があります。

例えば、水稲では、ウンカ類やいもち病などの防除に登録された粉剤があります。

また、野菜では、播種前や定植前に土壌へ混和し、根こぶ病や土壌害虫などを防除する粉剤もあります。

代表的な登録製品の例を紹介します。

水稲の病害虫防除

  • ダントツ粉剤DL:稲のウンカ類、カメムシ類などを対象とする殺虫剤。
  • ビーム粉剤DL:稲のいもち病などを対象とする殺菌剤。

これらは、水稲での散布に使用される粉剤の例です。

対象となる病害虫や散布適期は製品ごとに異なり、同じ粉剤であってもすべての病害虫に効果があるわけではありません。

土壌病害虫の防除

  • ネビジン粉剤:キャベツの根こぶ病などを対象とし、登録された方法で土壌へ混和する殺菌剤。
  • カルホス粉剤:ダイコンのネキリムシ類などを対象とし、登録された土壌処理方法で使用する殺虫剤。

土壌へ施用する粉剤には、土壌表面散布、全面土壌混和、作条土壌混和などの使用方法があります。

粉剤であれば土壌へ散布するだけで効果が得られる、という判断は誤りです。

特に土壌混和が指定されている農薬では、定められた時期・方法で混和する必要があります。

製品例について:
上記は粉剤の用途を理解するための例示です。
各製品の適用作物、対象病害虫、使用量、使用時期、使用方法、使用回数などは、農薬登録情報の変更によって変わる場合があります。
実際に使用する際は、農林水産省の農薬登録情報提供システムと製品ラベルを確認してください。

粉剤の散布方法と散布機

粉剤の散布には、粉剤に対応した背負式動力散布機などが使用されます。

水稲では、散布ホースや多口噴頭などを取り付けて広い範囲へ散布する方式があります。

散布量は、散布機の開度、送風量、吐出量、歩行速度などによって変わります。

同じ散布機でも、粉剤とDL粉剤では流動性が異なる場合があるため、散布前に機械の設定を確認してください。

散布機の調整が不適切だと、部分的な過剰散布や散布不足が生じます。

また、粒剤専用機や肥料散布機が粉剤に対応しているとは限りません。使用する剤型に適した散布機を選び、機械メーカーの取扱説明書に従ってください。

粉剤を使用する際の注意点

農薬の飛散(ドリフト)

粉剤は粒子が細かく、風や散布機の送風によって散布区域外へ飛散することがあります。

農薬が周辺の農作物へ付着すると、薬害や意図しない農薬残留につながるおそれがあります。

散布時は風向きと風の強さを確認し、無風または風の弱い条件を選んでください。

飛散が避けられない条件では散布を延期し、必要に応じて、周辺への飛散が少ない別の剤型や防除方法を検討します。

DL粉剤でも風の影響は受けるため、周辺に住宅、学校、農作物、養蜂施設などがある場合は特に注意が必要です。

作業者への曝露(ばくろ)

粉剤の散布時には、微細な粒子を吸入したり、皮膚や眼に付着させたりする危険があります。

農薬ラベルに記載された防護装備を確認し、適切な農薬用マスク、保護眼鏡、手袋、長袖・長ズボンの作業衣などを使用してください。

マスクは種類だけでなく、顔への密着状態も防護性能に影響します。

散布後は、手洗い、洗顔、うがいなどを行い、汚染された衣服や保護具を適切に管理します。

降雨・葉面水分の影響

散布後の降雨や葉面の水分による影響は、製品の性質と使用方法によって異なります。

葉面に散布する粉剤では、降雨によって付着した薬剤が流失する場合があります。

土壌へ混和する粉剤では、土壌水分の状態が処理作業や薬剤の作用に関係することがあります。

すべての粉剤に共通する「散布後6時間は降雨を避ける」といった一律の基準はありません。

散布時の気象条件や降雨への注意事項は、製品ラベルと技術資料に従って判断してください。

登録内容と使用回数の確認

粉剤は水で希釈せずに使えるため、簡便に見えますが、使用量や使用方法の制限は他の剤型と同様に守る必要があります。

農薬登録情報では、適用作物、対象病害虫、使用量、使用時期、使用方法、本剤の使用回数などが定められています。

同じ有効成分を含む別製品を使用した場合は、その成分を含む農薬の総使用回数にも注意が必要です。

また、同じ製品名に見えても、粉剤、粒剤、水和剤などの剤型が異なれば、適用内容が異なることがあります。

粉剤を選ぶ際の判断

粉剤は希釈作業が不要であることから、作業の省力化に役立つ場合があります。

しかし、選定にあたっては、次の点を確認する必要があります。

  • 対象病害虫:防除したい病害虫に登録され、効果が期待できる製品か。
  • 使用方法:作物への散布、土壌表面散布、土壌混和など、作業方法が圃場条件に適しているか。
  • 散布設備:粉剤に対応した散布機があり、適切に散布量を調整できるか。
  • 周辺環境:風による飛散が周辺作物や住宅などに影響しないか。
  • 作業者の安全:必要な保護具を準備し、安全に散布できる条件か。

粉剤の使用が適切でない圃場では、登録内容を確認したうえで、粒剤や液体散布製剤などへの変更を検討します。

農薬の剤型は、使いやすさだけでなく、防除効果、作業条件、安全性、周辺環境への影響を踏まえて選ぶ必要があります。

粉剤の参考動画

粉剤を扱う際は、微細な粒子の吸入や皮膚への付着を防ぐため、適切な保護具の選択と着用が必要です。

参考動画として、クロップライフジャパンが公開する農薬用マスクの解説動画を紹介します。

自分を守る15分動画「チャプター3:マスクの有効性」
クロップライフジャパン(旧・農薬工業会)

農薬用マスクの有効性(YouTube)を見る

動画について:
この動画は、農薬使用時の保護具と作業者の安全対策を理解するための参考資料です。
粉剤の散布手順や個別製品の使用方法を説明するものではありません。
農材ドットコムが制作・管理している動画ではありません。
動画の内容、公開状況、URLなどは、公開元の都合により変更または削除される場合があります。
実際の作業では、使用する農薬のラベルと安全使用上の注意事項に従い、適切な防護装備を選択してください。

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