師部(しぶ)

師部(しぶ)
師部は、葉で作られた糖などの栄養(同化産物)を、根や果実などの必要な場所へ運ぶための維管束組織

師部(しぶ)とは

師部(しぶ)は、葉などで作られた糖(とう)やアミノ酸などの同化産物(どうかさんぶつ)を、果実・新芽・根などの「需要部(じゅようぶ)」へ運ぶための維管束(いかんそく)の組織です。

病害名・害虫名・生理障害名ではありません。茎の褐変(かっぺん)や萎(しお)れが見えても、それだけで「師部が原因」と断定できません。肥料・農薬・資材の名称でもありません。
表記は「篩部(しぶ)」と書かれることがあり、ここでは同じ対象(植物体内の輸送組織)を指す語として扱います。

師部・木部の違い(簡易整理)

  • 師部(しぶ):糖などの同化産物を需要部へ運ぶ組織/水と無機養分(むきようぶん)を根から葉へ運ぶ「木部(もくぶ)」ではありません。
  • 木部(もくぶ):主に水と無機養分を通す組織/糖の主要輸送を担う「師部」ではありません。
  • 師管(しかん):師部の中で、主に輸送を担う管状要素(主に被子植物で中心的)/師部そのもの全体を指す語ではありません。
  • 導管(どうかん):木部の中で、通水を担う管状要素/師部や師管の名称ではありません。

師部の役割と「運び方」の限界

師部の輸送は「どこから(供給源)どこへ(需要部)」で流れが決まり、果実肥大期(かじつひだいき)・根の伸長期(しんちょうき)など、需要が強い部位へ同化産物が配分されます。
ただし、師部の輸送量や配分は、光・温度・葉面積・着果負担・根の健全性など複数条件に依存します。「師部がある=糖が十分届く」「師部を見れば収量が決まる」といった単純化はできません。
また、外観症状だけで師部の輸送不全を断定することはできず、原因の切り分けには追加の観察と履歴が必要です。

師部の構成要素と用語の整理

師部は、輸送を担う要素(師管など)だけでなく、周辺の細胞(伴細胞(はんさいぼう)など)や、支持・貯蔵に関わる細胞も含む「組織」のまとまりです。

現場で混同が多い点として、「師部(組織)」と「師管(その中の輸送要素)」は同義ではありません。さらに、植物群によって内部の要素の呼び分けが異なるため、用語だけで作物体内の状態を決め打ちしないことが重要です。

師部の異常を疑う前に必要な判断材料

師部の機能不全を、萎れ・黄化(おうか)・生育停滞(ていたい)などの外観だけで断定するのは判断不能です。
少なくとも次を確認しない限り、「師部が原因」とは言えません。

  • 症状の分布:株全体か、枝・つる・片側だけか、先端だけか。局所なら物理障害(折れ・締め付け)の可能性を先に疑う必要があります。
  • 茎の切断面の見え方:導管側の褐変が目立つのか、維管束輪が帯状に変色するのか。見え方だけで病名は断定できませんが、少なくとも「師部と決め打ち」する材料にはなりません。
  • 根と根域条件:根量、根の白さ/褐変、異臭、培地水分、排水性、EC・pH、灌水(かんすい)履歴。根が崩れていれば輸送以前の問題として成立します。
  • 環境と負荷:日射・温度・夜温、着果量(負担)、整枝・摘果履歴。需要と供給のバランス崩れは起こり得ますが、外観だけでは師部の障害と区別できません。
  • 薬剤・作業履歴:薬害(やくがい)、高濃度施肥、強い摘葉、急激な乾湿変動など。原因の候補は増えますが、確認なしに師部障害へ結論づけるのは誤りです。

上の情報が揃わない場合は「不明」「条件により変動」「判断不能」と扱い、追加確認を先行させるのが損失回避として妥当です。

師部(しぶ)で起きやすい典型的な誤判断

  • 誤判断①:萎れや生育停滞=師部が詰まった
    なぜ誤りか:萎れは通水不足(根・木部側)や蒸散過多でも起こり、師部だけに特異的ではありません。
    何が誤解されやすいのか:「糖が届かない=しおれる」という短絡で、根・水分・導管側の確認が飛ばされます。
    正しい判断・考え方:症状分布、根の状態、灌水履歴、切断面の観察を揃えるまで師部原因は断定しない。
  • 誤判断②:茎が茶色い=師部の病気
    なぜ誤りか:茎の褐変は位置(表皮・形成層付近・維管束・髄)と進み方で意味が変わり、見た目だけでは原因の切り分けができません。
    何が誤解されやすいのか:「維管束が見える=師部が悪い」と、師部・木部・周辺組織の区別が曖昧なまま結論が出ます。
    正しい判断・考え方:褐変部位の位置関係、輪状か点状か、株内での連続性を確認し、病名や師部障害の断定は避ける。
  • 誤判断③:収量/糖度が落ちた=師部輸送が悪いから資材で改善できる
    なぜ誤りか:収量や品質は光合成量、着果負担、葉量、根域、温度管理など複合要因で決まり、師部だけを単独原因に固定できません。
    何が誤解されやすいのか:「師部=糖の通り道」だけが強調され、条件(光・葉・根・負担)の確認が省略されます。
    正しい判断・考え方:供給(葉・光)と需要(果実・新芽)と根域(吸水・養分)の3点を同時に点検し、単用で改善を断定できる資材・操作はない前提で組み立てる。

現場での実務メモ(誤更新・誤防除の回避)

師部は「植物の内部構造の用語」であり、単独で防除や施肥の指示語にはなりません。
外観症状から師部障害を想定したとしても、病害虫の特定や対策選定は「判断不能」になりやすく、先に確認すべき観察点と履歴(根域、灌水、EC・pH、症状分布、切断面、作業・薬剤履歴)を揃える必要があります。

この前提を外すと、過剰防除・誤投資・誤更新(本来不要な株入れ替え等)に直結します。

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