維管束(いかんそく)の概要
維管束(いかんそく)は、植物体内で「水・無機養分」と「光合成(こうごうせい)産物(さんぶつ)」を別々の通路で運ぶために、木部(もくぶ)と師部(しぶ)がまとまって配列した組織です。維管束は病害名ではなく、維管束が褐変(かっぺん)して見えることだけで、特定の病気や肥料欠乏を断定できる根拠にはなりません。
また、維管束は「水だけを運ぶ管(=導管だけ)」でもなく、「糖だけを運ぶ管(=師管だけ)」でもありません。作物や器官(茎・葉・根)によって配置や見え方が異なり、観察条件(切り方、鮮度、乾湿、光の当て方)でも外観は変動します。そのため、色や筋模様だけで即断せず、どの器官の、どの部位の維管束を、どの切断面で見ているかを揃えて判断する必要があります。
導管・師管・維管束の違い(簡易整理)
- 維管束:木部と師部がセットで並ぶ「組織のまとまり」/単一の管の名称ではありません。
- 導管(どうかん):木部を構成する通水要素の代表で、主に水と無機養分を根から上部へ運ぶ経路/糖の主輸送路ではありません。
- 師管(しかん):師部を構成する通導要素で、光合成産物(主に糖)などを各部位へ分配する経路/水の主輸送路ではありません。
「維管束の褐変=病気」という判断は外観だけの短絡です。褐変の範囲・位置・進行性、根の状態、環境履歴、切断面の再現性が揃わない限り断定はできません。
維管束(いかんそく)の詳細説明
維管束は、木部と師部が隣り合って配列し、植物が体内輸送(たいないゆそう)と器官の支持(しじ)を同時に成立させるための基盤となる組織です。木部には導管(どうかん)や仮道管(かどうかん)が含まれ、細胞壁(さいぼうへき)が発達した構造により通水性と支持性を担います。一方、師部は師管(しかん)や伴細胞(はんさいぼう)からなり、葉で合成された同化産物(どうかさんぶつ)を必要な部位へ分配する輸送に関与します。
維管束の配置や見え方は器官ごとに異なります。茎では輪状(わじょう)や散在(さんざい)など作物群による差があり、葉では葉脈(ようみゃく)として網目状(あみめじょう)に広がります。根では中心柱(ちゅうしんちゅう)にまとまって配置され、吸水した水が木部へ導入される経路の一部を構成します。したがって、「維管束=茎の中の筋」という固定的な理解は誤りです。観察時は、器官・位置・切断方向(縦断・横断)を揃え、切断面が乾燥する前に確認することが基本になります。
維管束をめぐる誤判断で多いのは、輸送物の取り違えと外観のみでの決め打ちです。木部は水と無機養分、師部は光合成産物という役割分担が基本ですが、「養分」という言葉が水溶性肥料・無機養分・糖を混同させやすく、説明が曖昧だと誤解が固定化します。維管束の変色や萎(しお)れが見られても、根傷み、温度ストレス、乾湿差、高EC、酸素不足(過湿)、薬害、物理的損傷など、要因は複合的です。この段階で原因を一つに決めると、対策が逆方向になりやすくなります。
維管束の状態を判断材料として用いる場合、褐変だけで病害虫名を特定することは判断不能です。判断を進めるためには、少なくとも次の観察点が必要です。
・どの器官(根・地際茎・上位茎・葉柄)の維管束か
・褐変が連続的か、点状か、外周か中心か、左右対称か
・萎れの出方(昼のみ/終日、上位から/下位から)と回復性
・灌水・施肥履歴(EC、pH、乾湿差、急変の有無)
・根の色、新根量、異臭、褐変の有無
・温度、日射、換気、夜温の推移
これらが揃わない状態で防除や施肥を上乗せすると、被害を拡大させる可能性があります。
維管束のイメージイラスト
維管束(いかんそく)の役割と、限界(単用不可の判断)
役割:木部と師部をまとめた維管束として配列されることで、植物は体内輸送(通水・転流)と器官の支持を両立します。葉脈としての維管束は葉形を維持し、茎の維管束は倒伏(とうふく)や折損に対する抵抗性に関与します。
限界(単用不可):維管束は診断名ではありません。外観だけで病害・害虫・肥料欠乏・水切れを確定する用途には使えません。維管束の情報は、輸送障害が関与している可能性を絞り込む材料であり、最終判断には根域条件と環境履歴の整合が不可欠です。
維管束(いかんそく)で起きやすい典型的な誤判断
- 誤判断①:「維管束=導管」として水の話だけで説明する/なぜ誤りか:師部を無視すると症状解釈が破綻します/正しい判断軸:通水低下か転流低下かを、症状と根域・環境履歴で切り分けます。
- 誤判断②:「維管束が茶色い=病気確定」と判断する/なぜ誤りか:褐変は非感染要因でも起こります/正しい判断軸:器官・位置・進行性と履歴の一致を確認します。
- 誤判断③:「養分を運ぶ=肥料を増やす」と短絡する/なぜ誤りか:根傷みが原因なら悪化します/正しい判断軸:EC・根の状態・乾湿差を先に点検します。
- 誤判断④:「木部=化学成分名」として誤記憶する/なぜ誤りか:木部・師部は組織名です/正しい判断軸:機能(通水・分配)で用語を整理します。






