導管(どうかん)の概要
導管(どうかん)は、植物体内で水と無機養分(主に根から吸収された水溶液)を主として上方向へ運ぶ「木部(もくぶ)」の通水組織です。糖(とう)や同化産物(どうかさんぶつ)を運ぶ組織ではありません。病害虫の名称でもなく、導管が見える・褐変(かっぺん)しているという外観だけで、病名や肥料欠乏を断定する根拠にはなりません。
導管は細胞が縦方向に連結してできた管状構造で、蒸散(じょうさん)による吸い上げや根圧(こんあつ)などの作用により通水が成立します。導管の通水機能が低下すると、葉の萎(しお)れ、日中萎凋(いちゅういちょう)、生育停滞など「水が十分に上がらない」症状が現れます。ただし、同様の症状は根傷み、乾燥、水切れ、過湿、塩類濃度(EC)上昇、低温など複数の要因でも発生するため、導管の状態だけから原因を特定することはできません。
導管・師管の違い(簡易整理)
- 導管:水と無機養分を主に上方向へ運ぶ木部の通水組織/糖や同化産物の主要な輸送路ではない
- 師管(しかん):糖や同化産物を主に輸送する師部(しぶ)の組織/水を根から吸い上げるための管ではない
- 維管束(いかんそく):導管(木部)と師管(師部)が一体となった構造の総称/導管そのものを指す用語ではない
導管(どうかん)の詳細説明
導管(どうかん)は、木部(もくぶ)を構成する通水組織として、根域(こんいき)から吸収された水と無機養分を葉へ輸送し、蒸散(じょうさん)による冷却、細胞の膨圧(ぼうあつ)維持、光合成(こうごうせい)が成立する前提条件を支えます。導管は「栄養を運ぶ=糖を運ぶ」管ではなく、糖の主要な長距離輸送は師管(しかん)が担います。
また、導管は肉眼で見える「太い空洞」ではなく、細胞壁が肥厚した微細な通水構造です。茎や根を切断した際に観察される褐変や変色は、導管そのものだけでなく、周囲の木部組織や形成層の変質・壊死(えし)を含む外観である場合が多く、導管が褐変して見えることと、特定の病害が存在することは直結しません。
原因を確実に断定できない場合は、無理に結論づけず「不明」とし、以下の観察点と履歴情報を整理して判断します。
追加確認が必要な観察点・条件・履歴: ①萎れが日中のみか終日か、夜間に回復するかどうか ②株元から根の状態(白根量、褐変根、腐敗臭、根張り) ③培地・土壌の水分状態(乾湿差、過湿・滞水の有無)と灌水頻度・1回量 ④EC・pHの実測値と経時変化 ⑤直近の高温・低温・強日射・強風などの環境条件 ⑥施肥、薬剤散布、土壌消毒、定植直後などのストレス履歴 ⑦褐変が導管に沿って連続するか、節や分岐で途切れるか ⑧同一畝内での発生分布(局所的・点在・連続) ⑨品目・品種・台木の有無(果菜類) ⑩土壌病害が疑われる場合の連作年数と前作作物。
導管(どうかん)で起きやすい典型的な誤判断
- 誤判断①:導管と師管を混同し、「糖の流れが悪い」と説明してしまう/なぜ誤りか:導管は水と無機養分の通路であり、糖の主要輸送は師管が担う。誤解されやすい点:どちらも管状構造で、維管束として一括説明されがち。本来の判断:水分輸送障害と同化産物輸送障害を分け、症状の部位と経過で整理する
- 誤判断②:茎断面の褐変だけで青枯病・萎凋病など特定病害に決め打ちする/なぜ誤りか:褐変は根傷み、塩類障害、低酸素、薬害、乾湿差、老化などでも起こり、病害特異性は低い。誤解されやすい点:褐変=病原菌侵入というイメージが強い。本来の判断:褐変の出方と進行、発生分布、根域環境と履歴を併せて整理する
- 誤判断③:萎れを水不足と即断し、灌水量を増やしてしまう/なぜ誤りか:通水低下は過湿、低酸素、根腐れ、高ECでも生じ、追加灌水が根域環境をさらに悪化させることがある。誤解されやすい点:萎れは乾燥症状と外観が似ている。本来の判断:まず根域水分、排水性、培地温、ECを測定し、日中のみ萎れる蒸散過多型か、終日萎れる通水障害型かを切り分けて調整する







