サツマイモ基腐病とは
サツマイモ基腐病(さつまいももとぐされびょう)とは、糸状菌(カビ)の一種であるDiaporthe destruens(ディアポルテ・デストルエンス)の感染によって引き起こされる、サツマイモの重要な病害です。
主に株元の茎が黒色~暗褐色に変色し、病気が進むと茎葉のしおれや枯死、地下の塊根(いも)の腐敗を引き起こします。
感染した種いもや苗、罹病した植物残さなどが伝染源となり、雨水や汚染土壌の移動によって周囲の株や別の圃場へ広がるおそれがあります。
本病の防除では、病原菌を「持ち込まない・増やさない・残さない」という3つの対策を組み合わせることが基本です。

サツマイモ基腐病の症状
株元の茎の黒変
代表的な病徴は、株元付近の茎が黒色~暗褐色に変色することです。発病が進むと茎の腐敗部分が広がり、地上部がしおれて枯死する場合があります。
ただし、感染部位や病徴の現れ方は一様ではありません。株元だけでなく、茎のほかの部分にも症状が現れることがあります。
茎葉の変色と萎凋
葉が黄色や赤紫色に変色したり、株全体の生育が悪くなったりすることがあります。病勢が進行すると、茎葉がしおれ、地上部が枯死する場合もあります。
茎葉の異常は本病を疑う手掛かりになりますが、葉の黄化やしおれだけでサツマイモ基腐病と確定することはできません。
似た症状は、ほかの病害や根の障害、水分不足などでも現れます。株元の茎や塊根の状態、発生状況を合わせて確認する必要があります。
塊根の腐敗
塊根では、茎との接続部に当たるなり首側から腐敗する症状が代表的です。内部が褐色~暗褐色に変色し、腐敗が進むと商品価値を失います。
収穫時に初めて異常が見つかる場合や、収穫後の貯蔵中に腐敗が明らかになる場合もあります。
ただし、塊根の腐敗には本病以外の原因もあるため、外観だけで病名を断定しないことが重要です。
病原菌と伝染経路
病原菌は糸状菌の一種で、学名はDiaporthe destruensです。文献によっては旧学名のPlenodomus destruensや、異名のPhomopsis destruensが使われています。
本病は主としてサツマイモに被害を与えますが、アサガオなどを含むヒルガオ科植物にも感染することが知られています。
主な伝染経路
- 感染した種いも・苗:病原菌を保有した種いもや苗を使用すると、育苗床や本圃へ病原菌が持ち込まれるおそれがあります。
- 罹病した植物残さ:発病した茎、葉、塊根などが圃場に残ると、次作の伝染源になる場合があります。
- 雨水・滞水:発病部に形成された胞子が水とともに移動し、周囲の株へ伝染することがあります。
- 汚染土壌・農機具:病原菌を含む土壌や植物片が、長靴、農具、農業機械などに付着して別の圃場へ移動するおそれがあります。
- 罹病した茎葉との接触:発病株に接した周辺の茎葉にも感染が広がる場合があります。
一度発生した圃場では、罹病残さなどに病原菌が残り、翌作以降の発生につながることがあります。
発生歴のある圃場で、翌年に症状が見られなかったとしても、病原菌がなくなったと判断することはできません。
発病や感染拡大に関係する条件
高温期の発病
本病は温暖な条件で発病しやすく、サツマイモの生育期に病勢が進行することがあります。ただし、気温だけで発病の有無や被害程度が決まるわけではありません。
苗の感染状況、圃場の汚染度、品種、降雨条件、防除履歴などを合わせて評価する必要があります。
排水不良と滞水
排水性の悪い圃場では、降雨によって病原菌の胞子を含む水が移動し、感染拡大につながるおそれがあります。
排水路の整備や畝間の滞水防止が重要ですが、水分不足もサツマイモの生育に悪影響を及ぼします。適切な水分管理と排水対策を両立させることが基本です。
連作と罹病残さ
発病した植物残さが圃場に残った状態で連作すると、次作でも病原菌による感染が発生するおそれがあります。
発生履歴のある圃場では、残さ処理や輪作、土壌消毒、次作の品種選択などを総合的に検討します。
輪作や土壌消毒を行った場合でも、病原菌が完全になくなったとみなすことはできません。作付け再開の判断には、地域の防除指導や圃場の発病履歴などを反映させます。
サツマイモ基腐病の防除対策
1. 病原菌を持ち込まない
感染した種いもや苗を使用しないことが、最も基本的な対策の一つです。
- 来歴と生産管理履歴が明らかな健全な種いも・苗を使用する。
- 育苗床を衛生的に管理し、病徴のある株を採苗に使用しない。
- 地域の指導に従い、苗消毒や必要な種いも消毒を実施する。
- 農機具・農具・長靴に付着した土や植物片を除去し、必要に応じて適切に消毒する。
- 発生圃場から種いもや苗を安易に持ち出さない。
外観が正常な種苗でも、病原菌を保有している可能性があります。また、消毒を行ったからといって、すべての感染リスクを排除できるわけではありません。
2. 病原菌を増やさない
本圃では、排水対策、発病株の早期発見、登録農薬による適期防除などを組み合わせます。
- 排水路や畝間を整備し、降雨時の滞水を防ぐ。
- 生育期間中は定期的に圃場を見回り、株元や茎葉の異常を調べる。
- 疑わしい症状を発見した場合は、速やかに地域の農業改良普及センターや病害虫防除所等へ相談する。
- 発病株の抜き取り、周辺への薬剤散布などは、関係機関の指導や地域の防除指針に従って実施する。
- 本病に登録のある農薬を、適切な時期・方法で使用する。
- 栽培目的や地域条件に適する場合は、基腐病抵抗性を持つ品種の利用も検討する。
登録農薬による防除は、発病してからの対応だけでなく、感染拡大を抑えるための予防的な管理として重要です。
農薬を使用する場合は、必ず最新の登録内容を確認してください。農薬名だけで判断せず、対象作物、適用病害、希釈倍数、使用時期、使用回数、使用方法などを確認します。
また、抵抗性品種でも感染・発病が完全になくなるわけではありません。
3. 病原菌を残さない
罹病した茎葉や塊根を圃場に放置すると、翌作の感染源になる場合があります。
- 発病株や発病のおそれがある株は、関係機関の指導に従って適切に除去・処分する。
- 収穫後の罹病残さや取り残した塊根を適切に処理する。
- 作業機械や農具に付着した土、植物片を除去して洗浄する。
- 必要に応じて、土壌消毒や輪作、作付け体系の変更を検討する。
残さの処分方法は、地域の防疫方針や関係法令に従って判断してください。発病株を別の場所へ無造作に運んだり、未処理のまま堆肥化したりすると、感染拡大につながるおそれがあります。
サツマイモ基腐病を疑う症状を見つけた場合
株元の黒変、茎葉の萎凋、塊根の腐敗などが見られた場合は、まず発見した圃場と場所、症状、発生範囲を記録してください。
疑わしい株を見つけた段階では、自己判断による大量の抜き取りや土壌移動を避け、速やかに地域の農業改良普及センターや病害虫防除所等へ相談してください。
その後の抜き取り、処分、周辺の薬剤防除、土壌消毒などは、診断結果や地域の指導内容に従って実施します。
また、発生が疑われる圃場で使用した農機具や長靴を、洗浄せずに別の圃場へ持ち込まないよう注意します。
国内の発生状況と最新情報
サツマイモ基腐病は、2018年度に国内で初めて確認され、その後、各地で発生が報告されています。
2026年11月:茨城県ひたちなか市で発生を確認
茨城県は2026年11月6日、ひたちなか市内のサツマイモ圃場(4アール)で本病の発生を確認したと発表しました。
11月5日の収穫作業中に生産者が疑わしい症状を発見し、茨城県農業総合センターの検査によって陽性と判明しました。
今回の感染経路は確定していません。雨水や汚染土壌、農機具などを介した伝染は一般的な感染拡大経路として知られていますが、今回の発生原因と断定することはできません。
茨城県では、2026年4月17日にサツマイモ基腐病に関する遵守事項を見直し、発生圃場で2年間サツマイモを作付けしないことなどを定めています。
これらは茨城県の総合防除計画に基づく遵守事項です。ほかの地域で栽培する場合は、各都道府県の総合防除計画や防除指導を確認してください。
食品への影響と出荷時の注意
サツマイモ基腐病の病原菌自体は、人に感染するものではありません。
ただし、腐敗や変色した塊根は品質が低下しているため、健全な塊根と区別し、選別によって流通・加工原料から除外する必要があります。
基腐病の発生が確認されたことと、その産地で生産されたサツマイモ全体の食品安全性は区別して考える必要があります。
また、収穫物の管理や出荷に関する対応は、発生状況と地域の防疫方針に従って判断します。
サツマイモ基腐病の参考動画
農研機構では、生産者向けに防除対策を解説する動画を公開しています。発病株への対応や収穫後の残さ処理など、現場での作業を理解するための参考になります。
初期発病株の抜き取りと消毒
制作:農研機構(NAROchannel)
収穫時および収穫後の対策
制作:農研機構(NAROchannel)
動画について:これらは農研機構が公開している参考動画であり、農材ドットコムが制作・管理しているものではありません。動画内の農薬情報や作業方法については、公開時点の説明である可能性があります。実際の防除に当たっては、最新の農薬登録内容と地域の防除指導を優先してください。
参考資料
- 農林水産省「その他病害虫・雑草に関する情報(サツマイモ基腐病の防除)」
- 農林水産省「サツマイモ基腐病対策について」
- 農研機構「サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策(令和4年度版)」
- 農研機構「かんしょ種苗生産工程におけるサツマイモ基腐病発病リスク低減技術」マニュアル
- 農研機構「本圃におけるサツマイモ基腐病発病リスク低減技術」マニュアル
- 農研機構「次作におけるサツマイモ基腐病防除対策の意思決定支援技術」マニュアル
- 鹿児島県「サツマイモ基腐病対策のポイント(総合的対策)」
- 茨城県「サツマイモ基腐病の発生について」(2026年11月6日更新)
- ひたちなか市「サツマイモ基腐病とは」
- 農林水産省「農薬登録情報提供システム」
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