高設栽培(こうせつさいばい)

高設栽培

高設栽培とは

高設栽培(こうせつさいばい)とは、
作物を植える栽培槽やベンチを地面より高い位置に設置して栽培する方法です。
日本の施設園芸では特にイチゴ栽培で広く利用されています。

イチゴは草丈が低く、地面の畝で栽培すると、
収穫、摘葉、芽かきなどの管理作業を中腰やしゃがんだ姿勢で行う時間が長くなります。
高設栽培では栽培位置を上げることで、
立ち姿勢に近い状態で作業しやすくし、身体的な負担の軽減を図ります。

高設栽培では、栽培槽にピートモス、ヤシ殻、ロックウール、樹皮、もみ殻などを利用した培地を入れ、
灌水・かん水や施肥を行う方式が多く採用されています。
イチゴでは、培地、栽培槽、給液設備、排液設備、架台などを組み合わせた
高設栽培システムとして導入されるのが一般的です。

高設栽培と養液栽培の違い

高設栽培と養液栽培は、同じ意味ではありません。

高設栽培は、主に「作物をどの位置・構造で栽培するか」を表す言葉です。
養液栽培は、土壌を使用せず、
培養液によって水分と肥料成分を供給する栽培方法を表します。

実際のイチゴ高設栽培では、
ヤシ殻、ピートモスなどの固形培地へ培養液を供給する
固形培地耕型の養液栽培が多く利用されています。
そのため両者が同じ意味のように扱われる場合がありますが、
用語としては区別して考える必要があります。

高設栽培の主な特徴

作業姿勢を改善できる

高設栽培の代表的な目的は、作業負担の軽減です。
イチゴでは、収穫、摘葉、芽かき、果房管理などを
地面付近で行う必要がなくなり、中腰やしゃがみ姿勢を減らせます。

観光農園では、利用者が果実を見つけやすく、
立った状態で収穫しやすいことも利点になります。

圃場土壌から根域を分離できる

栽培槽を地面から離すため、
作物の根域を圃場土壌から分離できます。
培地の種類、量、排水性、保水性などを設計しやすく、
圃場ごとの土壌条件の影響を小さくできます。

ただし、地面から離せば土壌病害が発生しなくなるわけではありません。
感染苗、汚染された培地・水・器具などから病原菌が持ち込まれることがあります。
排水不良によって根傷みや病害が発生する場合もあります。

水分・肥料管理を細かく行える

培地を使用する高設栽培では、
EC、給液量、給液回数、排液量などを利用して
根域の水分・養分状態を管理できます。
日射量に応じて給液回数を変更する制御方式もあります。

管理しやすい反面、培地量が少ないシステムでは
土耕より根域の水分や肥料濃度が短時間で変化します。
給液停止や灌水ムラの影響が出やすい点は、高設栽培の重要な注意点です。

高設栽培の主な方式

固定式

一定の高さに栽培ベッドを固定する方式です。
構造が比較的単純で、イチゴ高設栽培で広く利用されています。
作業者の身長や作業内容を考慮して、栽培槽の高さや通路幅を設定します。

可動式

栽培ベッドを横方向などへ移動できる方式です。
作業する場所だけ通路を確保することで、
固定式より施設内の栽培スペースを増やせるシステムがあります。

設備構造は複雑になり、
可動部、配管、給液設備などの保守管理も必要になります。

多段式

栽培槽を上下または段状に配置して、
施設内の立体空間を利用する方式です。
限られた施設面積で栽植株数を確保する方法の一つです。

段数を増やすほど有利になるわけではありません。
上段による遮光、株ごとの受光量の差、作業性、灌水ムラなどを考慮する必要があります。

高設栽培の注意点

高設栽培は作業性を改善できる反面、
導入すれば自動的に収量や品質が向上する設備ではありません。

特にイチゴでは、培地量が限られるため、
根域の水分、肥料濃度、温度、酸素状態が変化しやすくなります。
培地の保水性だけでなく、
排水性や栽培槽の構造、給液方法まで含めて設計します。

ポンプ、電磁弁、制御装置などを利用するシステムでは、
停電や機器故障によって給液が停止する可能性があります。
高温・強日射時に給液が止まると、
培地量の少ないシステムでは短時間で水分不足になる場合があります。

設備を選ぶ際は、導入価格だけで比較せず、
培地交換、排液処理、部品交換、給液設備の保守、
栽培終了後の洗浄や消毒まで含めて判断します。

高設栽培で誤解されやすい点

「高設栽培なら収量が増える」とは限りません。
固定式高設栽培では通路幅を広く取る必要があり、
方式によっては土耕より栽植株数が少なくなることもあります。
収量は栽植密度、品種、苗質、培地、灌水・施肥、
温度、湿度、日射など多くの条件で変わります。

「高設栽培なら病害が少ない」とも断定できません。
圃場土壌から根域を隔離できることは利点ですが、
感染苗や汚染水から病原菌が侵入する可能性があります。
排水不良や過湿も根部病害の原因になります。

「高設栽培なら水管理が簡単」という考えにも注意が必要です。
根域が限られるため、
土耕より灌水量や灌水間隔の誤差が生育へ直接影響する場合があります。
栽培システムに適した水分管理が必要です。

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