不織布とは
不織布(ふしょくふ)とは、
繊維を織ったり編んだりせず、
繊維同士を機械的、熱的、化学的な方法などで結合し、
シート状に形成した材料です。
英語ではNonwoven Fabric、
またはNonwovenと呼ばれます。
農業では、
ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、
ポリエチレン(PE)などを原料とした製品があり、
べたがけ資材、
トンネル被覆、育苗、
防草、果樹用マルチ、施設内張りなど、
さまざまな用途に使用されています。
「不織布」という名称は、材料の構造・製法を示すものであり、性能等級を示すものではありません。
同じ不織布でも、
原料、繊維径、繊維密度、坪量、厚み、製造方法、
積層構造、表面処理などによって、
透光性、遮光性、通気性、透水性、透湿性、
保温性、強度、耐摩耗性、耐候性などが異なります。
不織布の主な製法
不織布には複数の製造方法があります。
製法によって、
繊維の長さや太さ、絡み方、
シートの厚みや強度などが変わります。
同じ「不織布」という名称でも
性能や用途が異なるため、
製法だけでなく製品仕様まで確認して選定します。
スパンボンド法
溶融した樹脂から連続した繊維をつくり、
その繊維をシート状に積層して結合する方法です。
農業では、
べた掛け、被覆、防草、
育苗関連などに使用される製品があります。
同じスパンボンド不織布でも、
薄く軽量な被覆用から、
高坪量の防草用まで用途は大きく異なります。
ニードルパンチ法
繊維を重ねた層に多数の針を通し、
繊維同士を機械的に絡ませて
シート状にする方法です。
比較的厚みを持たせた製品や、
防草、緑化、土木などに使用される製品があります。
ニードルパンチ製だから防草性能が高い、と一律には判断できません。
遮光性、繊維構造、
雑草の貫通に対する抵抗性、
耐候性などは製品規格ごとに確認します。
その他の結合方法
熱によって繊維を結合する方法、
接着剤などを利用する方法、
高圧水流によって繊維を絡ませる方法などがあります。
極細の長繊維を直接シート状に形成する製法や、
複数の素材・構造を組み合わせた
積層・複合タイプもあります。
複合シートでは、不織布部分だけで製品全体の性能を判断できません。
農業で使用される不織布
農業用不織布は、
用途によって求められる性能が大きく異なります。
例えば、
作物へ直接かけるべた掛けでは、
軽量性、透光性、通気性、透水性、
保温性などが選定条件になります。
防草用途では、
遮光性、雑草の貫通に対する抵抗性、
耐候性、施工性などが重視されます。
育苗施設では、
透水性、泥はねの抑制、
耐摩耗性などが求められる製品もあります。
果樹栽培では、
白色の不織布や不織布を利用した複合シートを敷設し、
光反射や土壌水分管理に利用する製品があります。
同じ「不織布」であっても、べた掛け用、防草用、育苗用、果樹用では構造も要求性能も異なります。
べた掛けに使用する不織布
農業では、
べたがけ資材
として軽量な不織布が広く使用されています。
作物や畝を覆うことで、
保温、霜害や風害の軽減、
害虫や鳥による被害の軽減、
初期生育の安定などを目的に使用します。
べた掛け内部の温度や湿度は、
外気温だけで決まるわけではありません。
日射、風、土壌水分、被覆方法、
作物の蒸散などによって変化します。
低温期には保温効果が有効でも、
気温や日射が高い条件で被覆を続けると、
資材内部の温度が上昇し、
高温障害につながる場合があります。
べた掛けを行えば、凍霜害を完全に防げるわけではありません。
最低気温、霜の強さ、風、
資材の種類、被覆方法、
作物の種類や生育段階によって効果は変わります。
防草に使用する不織布
不織布タイプの防草シート
には、
高密度・高坪量の不織布や、
複数の繊維層を組み合わせた製品などがあります。
地表へ届く光を減らすことで、
シート下で雑草が生育しにくい環境をつくります。
製品によっては、
繊維層による物理的な抵抗によって、
雑草の出芽やシートの貫通を抑えます。
防草性能は「不織布かどうか」だけでは判断できません。
遮光性、繊維構造、貫通抵抗性、
耐候性、使用場所、発生している雑草、
施工状態などを製品ごとに確認します。
坪量や厚みも選定材料になりますが、
「厚いほど強い」「坪量が大きいほど防草性能が高い」と単純には判断できません。
また、防草シートは
除草剤のように
雑草そのものを枯らす資材ではありません。
端部、重ね部、固定ピン周辺、
支柱や配管まわりの切り込み、
破損部分などから雑草が発生する場合があります。
シート上に土や有機物が堆積すれば、
その堆積物の上で雑草が発芽・生育することもあります。
果樹用マルチに使用する不織布
果樹栽培では、
白色の不織布や、
不織布を反射層として利用した複合シートを
マルチとして使用する場合があります。
白色の反射性を利用して、
地表へ届いた光を樹冠方向へ反射させ、
果実周辺の受光条件を改善することが目的の一つです。
リンゴ、モモなどでは、
果実の着色を補助する目的で利用される製品があります。
カンキツでは、
光反射に加えて、
降雨の土壌への侵入を抑えながら
土壌水分を調節する目的で使用される製品もあります。
果樹用の不織布がすべて同じ水分特性を持つわけではありません。
液体の水を通しにくく、
水蒸気を通す耐水・透湿タイプもあれば、
微細な孔などによって
雨水を通しやすくした透水タイプもあります。
「白色」「不織布」という外観だけで判断せず、
透水性、耐水性、透湿性、
反射特性などを製品ごとに確認してください。
果樹用については、
不織布タイプ(果樹用)
でも解説しています。
育苗や農業施設で使用する不織布
育苗施設や鉢物生産では、
育苗容器や鉢の下に
不織布系のシートを敷く場合があります。
用途によって、
泥はねの抑制、透水、
鉢底から地面への根の伸長抑制、
施設内の衛生管理や
作業性の改善などを目的とします。
施設通路に使用する場合は、
防草性能だけでは判断できません。
長靴による歩行、
台車の走行や旋回、
鉢、コンテナ、培地袋などとの摩擦によって、
表面が摩耗する場合があります。
土木用の高強度な不織布でも、農業施設の露出通路に適するとは限りません。
メーカーが示す使用用途と、
歩行や台車走行への適否を確認してください。
不織布を選ぶときの確認項目
最初に使用目的を決め、
その用途に必要な性能を確認します。
- 原料:ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンなどがあります。原料だけで製品性能は決まりません。
- 製法・構造:スパンボンド、ニードルパンチなどのほか、積層・複合構造があります。
- 坪量・厚み:製品比較の目安になりますが、この数値だけで強度や防草性能は判断できません。
- 透光性・遮光性:べた掛け用では透光性、防草用では遮光性など、用途によって求める性能が異なります。
- 通気性:空気の通りやすさは、繊維密度、厚み、積層構造などによって異なります。
- 透水性:液体の水を通す量や速度は製品によって異なります。不織布だから必ず水を通すとは限りません。
- 透湿性:水蒸気の通しやすさです。透水性とは異なる性質なので、混同しないでください。
- 強度・耐摩耗性:風、歩行、台車、資材との擦れなど、実際の使用条件に適するか確認します。
- 耐候性:屋外使用では、紫外線、温度変化、風雨などによる劣化を考慮します。
- 使用期間:短期間の作物被覆なのか、長期間の屋外施工なのかを確認します。
不織布で起きやすい誤解
「不織布なら水を通す」
誤りです。
不織布という構造だけでは
透水性は決まりません。
繊維径、繊維密度、坪量、
積層構造、表面処理などによって、
水の通しやすさは変わります。
降雨や
灌水
をシート越しに行う場合は、
製品の透水性能を確認します。
「透水性と透湿性は同じ」
異なります。
透水性は、
液体の水が資材を通過する性質です。
透湿性は、
主に水蒸気が資材を通過する性質を指します。
液体の水を通しにくくても、
水蒸気を通す製品があります。
特に果樹用の水分管理シートでは、
この違いを確認しないと用途を誤ります。
「不織布なら通気性がよい」
これも一律には判断できません。
繊維密度や積層構造、
表面処理やコーティングなどによって
空気の通りやすさは変わります。
べた掛けなどで作物を覆う場合は、
透光性だけでなく通気性も確認します。
「べた掛け用と防草用は同じ」
用途が異なります。
べた掛け用では、
軽量性、透光性、通気性などが求められます。
防草用では、
遮光性、貫通抵抗性、耐候性などが重視されます。
同じ不織布でも代用できるとは限りません。
「厚い不織布ほど高性能」
厚みだけでは判断できません。
坪量、繊維径、繊維構造、
製法、積層方法、使用している樹脂などによって
性能は変わります。
製品の厚みや重量だけを比較して
選定しないでください。
「不織布を掛ければ必ず防霜できる」
防霜効果は、
最低気温、霜の強さ、風、
資材の種類、被覆方法、
作物の生育段階などによって変わります。
強い冷え込みでは、
不織布だけでは凍霜害を防げない場合があります。
「防草用不織布ならどこでも長期間使える」
誤りです。
屋外露出、砂利下、
農業施設内、法面などでは、
資材が受ける紫外線、摩耗、荷重、風の条件が異なります。
用途指定と施工条件を確認して選定します。
「果樹用の白色不織布なら雨を通さない」
誤りです。
耐水性を持たせた製品もあれば、
微細な孔などによって
透水性を持たせた製品もあります。
カンキツの水分管理用と、
落葉果樹の光反射を主目的とした製品では、
必要な水分特性が異なる場合があります。
用途と製品仕様を確認してください。
不織布と他の被覆資材の違い
不織布は
被覆資材
として使用される材料の一つですが、
農ビ、農PO、ネット、織物シートなどとは構造が異なります。
例えば、
農ビや農POは連続した樹脂フィルムです。
ネットや樹脂織物は、
糸やテープ状の材料を
規則的に編んだり織ったりして形成します。
不織布は、
多数の繊維をシート状に形成し、
繊維同士を結合した構造を持ちます。
不織布とネット、
織物などを積層した複合資材もあります。
また、
マルチ、
防草シート、
トンネル栽培用資材などでも
不織布が使われる場合があります。
「不織布」は材料・構造の分類であり、「べた掛け」「防草」「マルチ」などは用途や使用方法を表す言葉です。
両者を混同せず、
使用目的とメーカーが示す製品仕様から選定してください。
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