農業用タンク容器とは
農業用のタンク容器とは、灌水(かん水)用水、液肥、培養液、農薬の希釈液などを、一時的に貯留・調製・運搬するための容器です。
農業では、ポリエチレン製のローリータンクや据置型貯水タンクが多く使用されています。
製品によって、液体の運搬を目的としたもの、据置貯水用、完全排液型、遮光型、攪拌・調製用など用途が異なります。
同じ形状・容量であっても、使用できる液体、比重、温度、運搬可否、据置可否、耐薬品性などが異なるため、容量だけでタンクを選定してはいけません。
タンク容器取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名 | 特徴 |
|---|---|---|
| スイコー株式会社 | SLT(スーパーローリー) | 100~3,000L。農作業の散水・防除などに使用する液体運搬用ポリエチレンタンク。据置用途は別途据置用タンクを選定 |
| スイコー株式会社 | スカット | 100~1,200L。底部の残液を排出しやすい完全液出し型ローリータンク。散水・防除用 |
| スイコー株式会社 | HLT(ホームローリー) | 50~500L。園芸・家庭菜園、飲料水等の運搬に対応する小型ローリータンク |
| スイコー株式会社 | クリーンタンク | 100~500L。黒色の円筒型ポリエチレンタンク。据置使用に対応し、雨水・園芸用途などに |
| 合同産業株式会社 | ローリー型 L型・NL型 | 50~2,500L。水・農薬散布、農薬調合・運搬、果樹・野菜の灌水などに対応 |
| 合同産業株式会社 | スッキリタンク ST型 | ポリエチレン台付き完全排水式。農薬調合・運搬、灌水などに使用 |
| 合同産業株式会社 | ハウス用水タンク G型・GS型 | スリースバルブ付きの貯水・灌水用タンク |
| 合同産業株式会社 | 貯水槽 T型 | 農業用水・ハウス灌水・家畜給水などに使用する黒色二層成形貯水槽 |
| ダイライト株式会社 | ローリータンク Y型 | 100~3,000L。農薬希釈・散布、水の簡易貯槽などに対応。工業用化学薬品には使用不可 |
| ダイライト株式会社 | ローリータンク YB型 | 200~3,000L。遮光性があり藻が発生しにくく、水・水耕栽培用液肥の貯蔵などに対応 |
| コダマ樹脂工業株式会社 | タマローリー | 高密度ポリエチレン製。横型・縦型・開放型を展開し、防除・灌水などに使用 |
| 積水テクノ成型株式会社 | セキスイ水槽・ローリータンク | LL型農業用ポリエチレンタンク、SKL型受け台付ローリータンクなどを展開 |
農業用タンクの主な用途
灌水用水の貯留
井戸水、水道水、雨水などを一時的に貯留し、ポンプや配管を介して灌水設備へ供給します。
水源の供給量と瞬間的な灌水使用量が一致しない場合、タンクを緩衝槽として使用することもあります。
液肥・培養液の調製・貯留
養液栽培や液肥施用では、肥料を溶解した培養液や希釈液肥の調製・貯留にタンクを使用します。
この用途では、光がタンク内へ入ると藻類が発生しやすくなるため、遮光性の高いタンクを使用するか、タンク自体を遮光します。
「黒色であればよい」のではなく、実際に光を十分遮る構造であることが重要です。
農薬希釈・防除用
農薬散布では、所定量の水と農薬を混合するための調製槽や、散布機へ薬液を供給するタンクとして利用されます。
農薬を調製する場合は、登録内容に定められた希釈倍率、使用量、使用方法を守ります。
また、農薬の種類によってはタンク本体だけでなく、バルブ、パッキン、ホースなどの材質適合性を確認する必要があります。
液体の運搬
横型ローリータンクなどは、圃場への灌水用水や防除用水の運搬に使用されます。
ただし、すべてのタンクが車載運搬に対応しているわけではありません。
据置専用製品を満水状態で運搬すると、変形や破損につながるおそれがあります。
主なタンクの種類
ローリータンク
液体を運搬することを想定した比較的横長のタンクです。
軽トラックやトラックなどへ積載して灌水・防除用水を運搬する用途に使用されます。
運搬する場合は、タンク本体だけでなく内容液の重量も積載量に含めます。
水はおおむね1Lで約1kgであるため、300Lなら水だけで約300kg、500Lなら約500kgになります。
タンク本体、ポンプ、ホースなどの重量も加算して、車両の最大積載量を超えないようにします。
据置型貯水タンク
施設や圃場へ固定して、水や培養液などを貯留するためのタンクです。
ローリータンクとは構造や設計条件が異なる場合があるため、長期間据え置いて使用する場合はメーカーが据置用途を認めている製品を選定します。
完全液出し型タンク
タンク底面に傾斜を設けるなどして、排出口へ液体が集まりやすくしたタイプです。
液肥や農薬希釈液など、使用後の残液を減らしたい用途や洗浄頻度の高い用途に適しています。
ただし、「完全液出し」という名称でも、配管・バルブ部分まで残液が完全になくなることを意味するとは限りません。
実際の排出構造を確認します。
遮光型タンク
光を通しにくくしたタンクです。
水や培養液を長期間貯留する設備では、タンク内への光の侵入を抑えることで藻類の発生を抑制しやすくなります。
黒色タンクは遮光方法の一つですが、色だけで性能を判断せず、メーカーが示す遮光性や用途を確認します。
農業用タンクを選ぶ重要なポイント
1.使用する液体を確認する
清水、雨水、液肥、培養液、農薬希釈液では、必要な耐薬品性が異なります。
「ポリエチレン製だから、すべての薬液に使用できる」と判断してはいけません。
薬剤名、濃度、液温などをメーカーの耐薬品表で確認します。
2.容量を決める
容量は単に「大きい方が安心」という考え方ではなく、1回の灌水量、水源からの補給能力、ポンプ能力、必要な予備量などから決めます。
大き過ぎるタンクでは、水や培養液の滞留時間が長くなる場合があります。
逆に小さ過ぎると、灌水中に水位が低下し、ポンプの空運転や給水不足につながる場合があります。
3.運搬用か据置用かを確認する
タンクは使用目的によって構造が異なります。
液体を入れた状態で車両運搬する場合は、メーカーが運搬用途を認めている製品を使用します。
据置専用タンクを満水状態で移動したり、反対に運搬専用ローリータンクを長期間据え置いたりすることは、メーカーの使用条件から外れる場合があります。
4.車両の最大積載量を確認する
タンクを軽トラックなどへ積載する場合は、タンク容量と車両の最大積載量を必ず確認します。
例えば最大積載量350kgの軽トラックでは、300Lの水だけで約300kgになります。
そこへタンク本体、ポンプ、ホース、作業資材などの重量が加わるため、満水300Lでも条件によっては最大積載量に近づきます。
500Lタンクを満水にして積載することはできません。
走行時にはタンクが移動・転倒しないよう確実に固定します。
5.排出口・バルブ径を確認する
タンク容量が大きくても、排出口が小さければ必要な流量を確保できない場合があります。
ポンプ吸水口、配管径、必要流量に合わせて排出口径を確認します。
メーカー独自規格のドレンねじを使用している製品もあるため、市販バルブを直接取り付けられるとは限りません。
6.通気を確保する
タンクから大量の水を排出したり、ポンプで吸水したりするときは、排出量に応じた空気がタンク内へ入る必要があります。
通気が不足するとタンク内部が負圧になり、タンクが変形することがあります。
反対に、密閉したタンクへポンプなどで加圧することも危険です。
一般的な農業用ローリータンクは圧力容器ではありません。
メーカー指定のエア抜き・通気方法を守ります。
7.設置面を確認する
満水時には大きな荷重がかかります。
例えば1,000Lの水だけで約1tになるため、水平で十分な支持力を持つ場所へ設置します。
製品によってはタンク底面全体を支持することが指定されています。
ブロックなどで部分的に支えると局部的に荷重が集中し、変形や破損の原因になることがあります。
8.遮光性を確認する
養液栽培などで培養液を貯留する場合は、藻類の発生を抑えるため遮光性を確認します。
透明・半透明タンクを使用する場合は、光を遮るカバーや設置場所などを含めて対策します。
9.洗浄・完全排液のしやすさを確認する
液肥や農薬の調製に使用するタンクでは、底部に残液が溜まりにくく、内部を洗浄しやすい構造が管理上有利です。
異なる農薬や肥料へ切り替える場合、前回使用した液が残っていると濃度変化、混用不適合、作物への影響などにつながる場合があります。
養液栽培で使用する場合の注意点
養液栽培の培養液タンクでは、遮光だけでなく、容量、攪拌・循環、液温、清掃性、ポンプ吸込み位置なども重要です。
黒色タンクを使用することだけで培養液管理が適正になるわけではありません。
ECや培養液の状態、タンク・配管内部の汚れなども定期的に確認します。
よくある間違い
- 黒いタンクなら藻が絶対に発生しないと考える:遮光によって発生を抑えやすくなりますが、完全防止を保証するものではありません。配管や開口部から入る光、衛生管理なども関係します。
- 500Lタンクだから軽トラックに500L入れて運べると考える:水だけで約500kgになります。車両の最大積載量を超えます。
- ポリエチレン製なら農薬・肥料を何でも入れられると考える:薬剤、濃度、温度、シール材などによって適合性が異なります。
- ローリータンクなら据置にも使用できると考える:運搬用と据置用ではメーカーの想定用途が異なる場合があります。
- 蓋を完全密閉した方が衛生的と考える:排液時に十分な通気がなければタンクが負圧になり、変形する可能性があります。
- タンクの目盛りを正確な計量値として使用する:メーカーが目盛りを目安としている製品があります。農薬など正確な希釈が必要な場合は適切な計量方法を使用します。
- タンクだけ固定すれば車載できると考える:走行時には液体が動いて荷重が変化します。車両積載量を守り、タンクを確実に固定します。