寒冷紗とは
寒冷紗(かんれいしゃ)とは、比較的粗い網目を持つ織物状の被覆資材で、農作物の遮光、防風、防霜、防寒、蒸散抑制、害虫・鳥害の軽減などを目的として利用されます。
農業用では、ビニロン(PVA)やポリエステルなどを使用した製品が多く、色、糸、織密度、目合い、遮光率などによって性能が異なります。
「寒冷紗」という名称だけで遮光率や防虫性能、保温性能が決まるわけではありません。製品によって白・黒、目合い、遮光率、素材、重量などが大きく異なるため、使用目的と規格を確認して選定します。
寒冷紗は古くから使われている多目的被覆資材で、べたがけやトンネル被覆、育苗、霜よけ、遮光などに利用されています。一方、現在では遮光を主目的とした遮光ネットや、対象害虫に合わせた目合いを持つ防虫ネット、不織布など用途別に設計された資材もあるため、目的によって使い分けることが重要です。
寒冷紗の主な用途
- 遮光:強い日射を和らげ、葉焼けや強光によるストレスを軽減します。遮光率は製品ごとに異なります。
- 防霜・防寒:作物の上を覆うことで放射冷却や冷気、着霜による影響を軽減する目的で利用されます。ただし、強い低温や凍結を完全に防ぐ資材ではありません。
- 防風・蒸散抑制:作物へ直接当たる風を弱め、乾燥や葉擦れなどを軽減する用途があります。
- 害虫侵入の軽減:目合いなどの条件によって飛来害虫の侵入を減らせる製品があります。ただし、対象害虫に合わせて設計された防虫ネットと同等とは限りません。
- 鳥害の軽減:べたがけ・トンネル被覆によって播種直後や幼苗期の鳥害を軽減する用途があります。
- 育苗・活着補助:播種後・定植直後などに強光、風、乾燥の影響を緩和するため利用されます。
寒冷紗の種類
ビニロン(PVA)寒冷紗
ビニロンを使用した寒冷紗です。吸湿性、耐候性、耐薬品性などを特長とする製品があり、野菜・花きの育苗、トンネル栽培、防風、防霜など幅広く利用されています。
ビニロン寒冷紗には、雨などで濡れた後の乾燥時に収縮する製品があります。収縮率は製品によって異なるため、一律の余長を設定せずメーカーの施工要領を確認してください。
また、一部のビニロン紡績糸製品では糸表面の毛羽を利用して小型害虫の侵入を軽減する製品がありますが、すべてのビニロン寒冷紗に同じ性能があるとは限りません。
ポリエステル寒冷紗
ポリエステルを使用した寒冷紗です。軽量で取り扱いやすい製品があり、べたがけ、トンネル、遮光、防風、防霜などに利用されています。
製品によって白・黒、遮光率、目合いなどが異なります。素材名だけで使用時期や性能を判断せず、規格を確認してください。
その他の寒冷紗
寒冷紗は製造メーカーや用途によって使用する糸・繊維が異なります。スフ糸などを使用した寒冷紗も製造されています。
そのため、寒冷紗を「特定の合成繊維だけで作られた資材」と定義するより、比較的粗い網目を持つ織物状の被覆資材として、素材と規格を個別に確認する方が実務的です。
白色と黒色の違い
白色寒冷紗
比較的光を通しやすい規格が多く、育苗、防虫、防霜、防寒、風よけなど多目的に使用されています。
ただし、白色でも遮光率は製品によって異なります。「白=冬用」と一律に決めず、遮光率や目合いを確認してください。
黒色寒冷紗
白色より遮光率を高く設定した製品が多く、夏季の遮光、葉焼け対策などに使用されています。
黒色でも遮光率には製品差があります。過度な遮光は光量不足や徒長などにつながる場合があるため、作物・時期に適した規格を選びます。
寒冷紗の選び方
- 使用目的を決める
遮光、防霜、防風、防虫、育苗など、何を目的として使用するのかを明確にします。 - 遮光率を確認する
寒冷紗にも製品ごとに遮光率があります。高ければ良いわけではなく、作物と時期に必要な光量を確保します。 - 目合いを確認する
防虫用途では特に重要です。寒冷紗の目合いより小さい害虫は侵入できるため、対象害虫によっては専用防虫ネットを使用します。 - 素材を確認する
ビニロン、ポリエステルなど素材によって吸湿性、重量、取り扱いやすさ、収縮性などが異なります。 - 施工方法を確認する
べたがけ、トンネル、固定展張などで必要な幅、長さ、固定方法が変わります。 - 収縮・寸法変化を確認する
特にビニロン寒冷紗では降雨・吸湿後に収縮する製品があります。メーカー指定の余裕を持たせて施工します。
寒冷紗の使用方法
べたがけ
作物や畝の上へ直接被覆します。播種直後や幼苗期の防風、防霜、防鳥、乾燥緩和などに利用できます。
作物が生長すると資材の重量や擦れが葉へ影響する場合があるため、作物と被覆期間を確認してください。
トンネル被覆
支柱を設置し、その上へ寒冷紗を被覆します。作物との間に空間ができるため、べたがけより葉擦れを抑えやすく、換気・管理作業にも対応しやすくなります。
風によるばたつきやめくれを防ぐため、端部や裾を適切に固定します。
固定・長期展張
長期間使用する場合は、寒冷紗の収縮、風による荷重、支柱・固定具との擦れなどを考慮します。
特に吸湿性のあるビニロン寒冷紗では、メーカーが指定する収縮分の余裕を持たせて展張してください。
寒冷紗で期待できる効果と限界
- 遮光:製品の遮光率に応じて日射を減らします。高遮光用途では専用遮光ネットも比較します。
- 防霜:霜害を軽減できる場合がありますが、気温、風、放射冷却、被覆方法によって効果は変わります。
- 防虫:物理的障壁として侵入を減らせる場合がありますが、目合いより小さい害虫には十分な効果を得られない場合があります。
- 防風:作物へ直接当たる風を弱める用途がありますが、大規模な防風対策には専用防風ネットを使用します。
- 保温:被覆によって夜間の温度低下を緩和する場合がありますが、加温設備の代わりになる資材ではありません。
寒冷紗・遮光ネット・防虫ネットの違い
寒冷紗
- 特徴:遮光、防風、防霜、防虫など複数用途に利用される多目的な織物状被覆資材。
- 選定指標:素材、色、遮光率、目合い、重量など。
- 主な用途:べたがけ、トンネル、育苗、防霜、軽度の遮光・防風。
遮光ネット
- 特徴:主に光量・日射環境の調整を目的として設計されたネット。
- 選定指標:遮光率、遮熱性、色、構造、設置位置など。
- 主な用途:施設園芸、育苗、花き、茶などの遮光・遮熱。
防虫ネット・防虫網
- 特徴:対象害虫の侵入抑制を主目的として目合いを設計したネット。
- 選定指標:目合い、糸径、通気性、対象害虫など。
- 主な用途:ハウス開口部、トンネル、露地栽培などの物理的防虫。
寒冷紗・遮光ネット・防虫ネットの用途には重なる部分があります。「寒冷紗だから遮光には使えない」「防虫ネットだから長期被覆できない」といった一律の区分ではなく、目的と製品規格から選定してください。
寒冷紗使用時の注意点
- 遮光率を確認する:同じ寒冷紗でも白・黒・規格によって遮光率が異なります。
- 防虫性能を過信しない:防ぎたい害虫と目合いを照合します。
- 収縮を考慮する:ビニロン寒冷紗などでは吸湿・乾燥によって寸法変化する製品があります。
- 固定部の擦れを点検する:支柱や留め具との摩擦は穴・破れの原因になります。
- 強風時は固定状態を確認する:ばたつきや端部のめくれが発生すると作物や資材を傷める場合があります。
- 被覆期間を固定しない:気温、日射、生育段階に応じて取り外しや開放を検討します。
寒冷紗取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名 | 素材・規格 | 主な用途・特徴 |
|---|---|---|---|
| ビニロン(PVA)/白・黒 | #200・#300・#600・#610を展開。遮光率の目安は約20~50%。防虫、遮光、蒸散抑制、防寒、防風等に使用。濡れた後の乾燥時に収縮するため、メーカーは6~10%程度の余裕を見た展張を案内。 | ||
| ビニロン(PVA)/V500・V510・V520 | 白色。遮光率15~30%、目合1.0~2.0mm。害虫防除、遮光・遮熱、防寒・防霜、風雨対策等に使用。長期展張・降雨後は約5~6%の余裕を取るようメーカーが案内。 | ||
| ビニロン寒冷紗ほか | 明治期から寒冷紗を製造する紗織物メーカー。農業用ビニロン寒冷紗を製造販売し、寒冷紗の二次加工にも対応。 | ||
| 白・黒 | 白は遮光率約22%、黒は約51%。保温、防虫、防鳥、遮光、防風、防霜など多目的に使用。パック品はカット面のほつれ止め加工済み。 | ||
| ポリエステル/ビニロン | ポリエステル製とビニロン製を取り扱い。防風、防霜、日焼け・害虫対策、保湿等の用途向けに複数規格を展開。 | ||
| ビニロン/白・黒 | 遮光率15%から複数規格を取り扱い。防虫、防寒、防霜、遮光用途。継ぎ加工、テープ・ハトメ加工にも対応。 | ||
| スフ糸/織物 | 農業・園芸・産業用途向けの寒冷紗を製造。保温、通気、遮光、防霜、防虫等の用途。生地・OEM製造先として掲載。 |
関連する資材分類・農業用語
まとめ
寒冷紗は、遮光、防風、防霜、防虫、育苗など幅広い目的に利用される農業用被覆資材です。
ただし、「寒冷紗」という名称だけで性能を判断することはできません。素材、色、目合い、遮光率、重量、寸法変化などは製品ごとに異なります。
選定時は、何を防ぎたいのか → 必要な遮光率・目合いを確認する → 素材と施工方法を決めるという順序で検討してください。
遮光を主目的とする場合は遮光ネット、微小害虫の侵入防止を重視する場合は防虫ネット、不織布による保温・べたがけが適する場合は不織布資材も比較し、目的に合う資材を選ぶことが重要です。