
晩霜(ばんそう)とは、春が深まった後の時期に突然降りる霜のこと
晩霜(ばんそう)とは、春の終わりから初夏にかけて、気温が不意に下がる夜間に発生する霜のことを指します。植え付けが済み、生育を開始している農作物にとっては、まさに成長の初期段階を直撃されるため、「遅霜(おそじも)」とも呼ばれ、被害が大きくなりやすいのが特徴です。
特に日本の気候では、4月下旬から5月上旬にかけて、移動性高気圧に覆われた晴天・無風の夜間、放射冷却によって地表の温度が急激に低下し、朝方に霜が発生することがあります。 その結果、葉や芽が凍結し、作物の品質や収量に深刻な影響を及ぼします。
同意語としては「遅霜(おそじも)」「凍霜害(とうそうがい)」「別れ霜(わかれじも)」などがあります。
晩霜の概要
- 発生時期
主に4月下旬〜5月上旬(晩春) - 発生条件
快晴・無風・夜間の放射冷却、夜8時時点の気温が10℃以下、または12℃以下で霜発生確率が70~80% - 影響範囲
野菜類・果樹類・花卉類を中心に幅広い作物 - 代表的被害作物
スイートコーン、ジャガイモ、タケノコ、落葉果樹など
晩霜の詳細説明
晩霜は、春の季節が一見安定してきたように見える時期に突如として発生し、農家にとっては非常に警戒すべき自然現象です。日中の気温が20℃近くに達する日でも、夜間の気温が一桁台にまで冷え込むことで地表の水分が凍結し、作物の若芽や蕾、開花直後の花が損傷を受けやすくなります。
放射冷却が大きく関係しており、夜間に空気中の熱が地表から逃げやすくなる「快晴・無風・乾燥」状態が整うと、気温は急激に下がります。世羅町などの高原地帯では、この影響が顕著で、気象庁の過去データでも昭和期から晩霜による果樹類の被害が記録されています。
特にスイートコーンやジャガイモなど、比較的早い段階で植え付けられる作物はリスクが高く、「ジャガイモ晩霜」や「晩霜過ぎ」という言葉が地域の農業用語として定着しています。
晩霜による課題と対策
- 1. 作物の成長点への損傷
晩霜が作物の成長点(生長の起点となる部位)を凍らせてしまうことで、作物の発育が停止し、最悪の場合は枯死することがあります。スイートコーンや果樹の新芽は特に霜に弱く、翌年の収穫にも影響を及ぼします。
対策:防霜ファンによる空気撹拌、防霜ネットの設置、植え付け時期の見直しなどが効果的です。 - 2. 着果率の低下
晩霜は果樹の花を凍結させ、正常な受粉を妨げることで、着果(果実がつく)率を低下させます。特に落葉果樹(モモ・ナシなど)では、開花期と晩霜の時期が重なると被害が深刻です。
対策:花の開花期を遅らせる薬剤の使用や、発芽・開花調整のためのバイオ茶の散布などが試みられています。 - 3. 品質低下と収量減
晩霜による軽度の凍結でも、生育不良により野菜や果実の形状が不均一になったり、糖度が下がったりすることがあります。見た目の悪さから市場価格も低下し、農家の経営に打撃となります。
対策:気象データと連動した防霜予報アプリの活用、防風林や畝立て工夫による地温保持が有効です。