不織布遮光・保温資材とは
不織布遮光・保温資材とは、繊維を織物や編物とは異なる方法でシート状に形成した不織布や、不織布を他の素材と組み合わせた複合資材を利用し、施設園芸での遮光・遮熱・保温・結露対策などに使用する被覆資材です。
主に温室・ビニールハウスの内張りカーテン、育苗、トンネル被覆などに使用されますが、製品によっては外張り遮熱材として使用するものもあります。
不織布であれば同じ性能を持つわけではありません。ポリエステル長繊維不織布、PVA系不織布、ポリエチレン系不織布、フラッシュスパン不織布などがあり、遮光率、光反射性、吸湿性、透水性、保温性、耐候性は製品ごとに大きく異なります。
不織布資材の主な役割
遮光・遮熱
強い日射を遮ったり、赤外線を反射したりすることで、作物や施設内への日射負荷を軽減します。
遮光と遮熱は同じ性能ではありません。光を多く遮る製品と、可視光をできるだけ確保しながら赤外線を反射する製品では目的が異なります。高温対策を目的とする場合は、遮光率だけでなく反射特性やメーカーが示す遮熱性能を確認してください。
保温
夜間に施設内部から失われる熱を抑えるため、内張りカーテンとして使用される製品があります。
不織布の繊維層や複層構造によって空気層を保持し、保温性を高めた製品がありますが、保温性能は素材、厚み、構造、カーテンの隙間、開閉状態などによって異なります。
吸湿・結露対策
PVAなど吸湿性を持つ素材を利用した製品では、水分を吸収してカーテン面の水滴や結露水のボタ落ちを抑えることを目的としたものがあります。
一方、ポリエチレン系など吸湿性を主機能としない不織布もあります。「不織布=湿度を調整する資材」と一律に考えないでください。
育苗・トンネル被覆
製品によっては育苗時の保温、遮光、防霜、強光緩和などを目的として、トンネルや育苗床へ使用できます。
内張りカーテン専用品と、べたがけ・トンネルにも使用できる資材では規格や耐候性が異なるため、メーカー指定用途を確認します。
主な不織布の種類
ポリエステル長繊維不織布
ポリエステルの長繊維をシート状に形成した不織布で、農業用では内張りカーテン、育苗、トンネル被覆などに使用されます。
製品によって遮光、保温、透水、耐候などの性能を付加したものがあります。厚みや表面加工が違えば性能も変わるため、「ポリエステル不織布」という素材名だけでは比較できません。
PVA系不織布
PVA(ポリビニルアルコール)を使用した不織布には吸湿性を利用した内張りカーテンがあります。保温性に加えて、結露水のボタ落ちや水たまりの軽減を目的とする製品があります。
吸湿すると資材自体に水分を保持するため、施工方法や開閉方式はメーカーの指示を確認してください。
ポリエチレン系不織布
ネット状ポリエチレン不織布や、極細ポリエチレン繊維を結合したフラッシュスパン不織布などがあります。
軽量性、反射性、耐水性などを利用して、遮光・遮熱、内張り、外張り、トンネル被覆などに使用されます。
複合・多層タイプ
不織布をネットやクロスで補強した資材、不織布同士を複層化した資材、表面へ反射・遮熱加工を施した製品などがあります。
単層不織布と性能が異なるため、素材名称よりも製品構造と用途を確認することが重要です。
内張りと外張りの違い
内張り
ハウス内部へカーテン状に設置し、夜間の保温や日中の遮光・遮熱に利用します。開閉式にすることで、天候や時間帯に応じて光量や保温状態を調整できます。
内張りでは収束性、開閉時の摩擦、結露水、支持線との擦れなども確認する必要があります。
外張り
ハウス外部へ展張し、太陽光が被覆材を通過する前に反射・遮蔽する用途があります。
外張りでは風、雨、紫外線、積雪などを直接受けるため、内張り専用品をそのまま外張りへ使用できるとは限りません。必ずメーカーが外張り用途を認めている製品を使用してください。
不織布遮光・保温資材の選び方
- 目的:遮光、遮熱、保温、吸湿、結露対策、育苗のどれを重視するか確認します。
- 遮光率:高ければ良いわけではありません。日中に閉じて使用する場合は、作物に必要な光量を確保します。
- 遮熱性能:高温対策では赤外線反射など、遮光率とは別の性能も確認します。
- 透光性:冬季の日中など光量を確保したい場合は、透光性の高い保温資材を選択する方法があります。
- 吸湿性:結露対策を目的とする場合は、素材自体に吸湿性があるか確認します。
- 設置位置:内張り、外張り、トンネル、育苗などメーカー指定用途を確認します。
- 開閉方式:スライド式、巻上げ式などによって資材へ掛かる摩擦や負荷が異なります。
- 耐候性:紫外線透過性の高い外張りフィルムの下では、資材によって劣化が早まる場合があります。
使用時の注意点
- 遮光・遮熱・保温を同じ性能と考えない:目的に応じて性能を確認します。
- 遮光し過ぎない:日中に高遮光資材を長時間閉じると、光量不足によって生育へ影響する場合があります。
- 換気を止めない:遮熱資材を使用しても、施設内へ入った熱を排出するための換気は必要です。
- 内張り専用品を外張りに使用しない:屋外耐候性や耐風性が不足する場合があります。
- 結露対策を過信しない:吸湿性・透水性がある資材でも、施設全体の高湿度や換気不足そのものを解消するものではありません。
- カーテンの隙間を確認する:保温用途では、資材性能だけでなく妻面・側面・合わせ部などからの熱損失も影響します。
不織布遮光・保温資材取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元・取扱元 | 製品名 | 素材・構造 | 主な用途・特徴 |
|---|---|---|---|
| 特殊不織布+ワリフ®の3層構造 | 保温性のある不織布をワリフ®で補強した被覆材。保温・除湿用途。トンネル被覆、内張りカーテンに使用。 | ||
| ポリエステル100%長繊維不織布 | ハウス内張り、ハウス内トンネル、トンネル被覆、育苗などに使用。保温・遮光・通気性を用途別規格で選択。 | ||
| ポリエステル長繊維不織布+遮熱加工 | 内張りカーテン用。従来の不織布カーテンの保温性に加え、夏季の遮光・遮熱性能を付加。 | ||
| デュポン™タイベック®系不織布・有孔仕様 | ハウス内張り用の反射・遮熱資材。結露水を逃がす孔を設けた仕様。メーカーはスライドカーテンでの使用を推奨。 | ||
| 高密度ポリエチレン・フラッシュスパン不織布 | ハウス内張りカーテン、養生用。高反射性を利用した遮熱・保温用途。700AGより目付けを高めた仕様。 | ||
| タイベック®+補強クロスの複合シート | 外張り専用の農業用環境コントロールシート。高反射性と補強構造を利用し、キノコハウス・畜舎・作業小屋等に使用。 | ||
| ポリエステル長繊維不織布 | 農業用の育苗・内張りカーテン等に使用される長繊維不織布。旧ユニチカのスパンボンド不織布事業を2026年1月に承継。 | ||
| PVA100%割繊維不織布 | 温室内張りカーテン用。保温性に加え、PVAの吸湿性を利用して結露水のボタ落ちや水たまりを軽減。ホワイトタイプは遮光用途にも対応。 | ||
| ネット状ポリエチレン不織布(ワリフ®) | 赤外線反射材を使用した遮熱資材。遮光率20~50%の規格を展開。外張り、内張りカーテン、巻上げ、トンネルに使用可能。 |
遮光ネット・不織布・温室カーテンとの違い
遮光ネット
主に光量や日射環境の調整を目的とするネット状資材です。遮光率、色、構造、反射性などを基準に選定します。
不織布遮光・保温資材
繊維層や複合構造を利用し、遮光だけでなく保温、吸湿、透水、反射など複数の機能を持つ製品があります。
温室カーテン
「温室カーテン」は資材そのものだけでなく、それを支持・開閉するワイヤー、駆動装置、モーター、制御盤などを含む設備として考える必要があります。不織布は温室カーテンに使用される資材の一つです。
べたがけ用不織布
作物へ直接被覆することを前提とした軽量不織布です。内張りカーテン用不織布とは、重量、強度、耐候性、透光性などが異なるため、用途を区別します。
関連する資材分類・農業用語
- 遮光・遮熱・防風・防虫・鳥獣害・農薬飛散対策資材
- 遮光ネット
- 遮光シート・光質制御・波長変換シート
- 遮光塗料
- 寒冷紗
- 温室カーテンメーカー・カーテン施工企業
- べたがけ資材
- 不織布
- 遮光・遮光資材
- 高温障害
- 被覆資材
まとめ
不織布遮光・保温資材には、ポリエステル、PVA、ポリエチレンなど多様な素材と構造があり、遮光、遮熱、保温、吸湿、透水などの性能は製品ごとに異なります。
選定では、「不織布だから同じ」と考えず、目的、遮光率、透光性、遮熱性、保温性、吸湿性、内張り・外張り適性、開閉方法を確認することが重要です。