農業ハウス用遮光・遮熱塗布剤とは
農業ハウス用遮光・遮熱塗布剤とは、温室やビニールハウスの外張り被覆材へ吹き付け・塗布し、太陽光や赤外線の一部を反射・遮蔽することで、施設内への日射負荷を軽減する資材です。
一般的な白色遮光剤のほか、光合成に利用される可視光をできるだけ確保しながら、温度上昇に関係する近赤外線を選択的に反射する遮熱型塗布剤もあります。
遮光と遮熱は同じ性能ではありません。光量そのものを減らしたいのか、明るさをできるだけ保ちながら熱線を減らしたいのかによって、選ぶ製品が変わります。
また、塗布剤は遮光ネットのように資材を張ったり撤去したりする必要がない一方、希釈倍率、塗布量、吹き付けムラ、被覆材の種類、降雨、風、表面の汚れなどによって遮光率や持続期間が変化します。
遮光剤と遮熱剤の違い
遮光剤
太陽光の広い波長域を反射・遮蔽し、施設内へ入る光量と日射エネルギーを減らす資材です。
遮光率は希釈倍率や塗布量によって調整できる製品が多く、強光による葉焼け・果実焼け、夏季の施設内昇温、作業者への直射負荷の軽減などを目的として使用されます。
ただし、遮光率を高くし過ぎると、作物に必要な光合成有効放射(PAR)まで減少する場合があります。
遮熱剤
赤外線、特に近赤外線(NIR)など、温度上昇に関係する波長域を選択的に反射しながら、植物が光合成に利用する可視光をできるだけ透過させることを目的とした資材です。
光要求量の多い果菜類や花きなどで、「暗くし過ぎずに日射熱を減らしたい」という場合に候補となります。
ただし、遮熱剤を使用しても換気が不要になるわけではありません。施設内へ入った熱を排出するため、側窓・天窓・換気扇などと組み合わせて管理します。
塗布型資材の主な特徴
- 既設ハウスへ施工できる:外張りフィルムやガラス等の表面へ塗布して使用します。
- 遮光率を調整できる:希釈倍率や塗布量を変えることで、遮光の程度を調整できる製品があります。
- 大型施設にも施工しやすい:動力噴霧器などによる吹き付け施工が一般的です。
- 撤去作業が不要な製品がある:降雨や経時劣化によって徐々に減少・剥離する製品があります。
- 専用除去剤を使用できる製品がある:秋冬期の採光確保などを目的として、専用除去剤で塗膜を除去する製品があります。
- ドローン散布対応製品もある:農業用ドローンでハウス屋根へ散布することを前提に開発された製品もあります。
遮光・遮熱塗布剤の選び方
1. 遮光が必要か、遮熱が必要かを確認する
単純に光量を減らしたい場合と、光量をできるだけ確保しながら熱線を減らしたい場合では、選ぶ製品が異なります。
光要求量の高い作物では、遮光率だけでなくPAR透過率や近赤外線反射性能も確認します。
2. 被覆材への適合を確認する
製品によって使用できる被覆材が異なります。農ビ、農PO、ポリエチレンフィルム、フッ素フィルム、ガラス、ポリカーボネート、アクリルなど、メーカーが適合を確認している素材へ使用してください。
「ハウス用だからすべての被覆材へ使用できる」とは限りません。
3. 必要な持続期間を確認する
数週間~数か月程度の短期遮光を目的とする製品と、夏季を通して長期間効果を維持する製品があります。
持続期間はメーカーが示す目安であり、希釈倍率、塗布量、降雨量、降雨頻度、被覆材の状態、ハウスの傾斜、日射条件などによって変動します。
4. 除去方法を確認する
自然に風化・剥離するタイプ、専用除去剤を使用するタイプ、自然減少と除去剤の両方に対応するタイプがあります。
秋冬期に高い採光性が必要な施設では、塗布前に除去方法まで確認しておくことが重要です。
5. 施工方法を確認する
一般には動力噴霧器などを使用してハウス外面へ均一に吹き付けます。製品によって希釈倍率、必要水量、ノズル、散布量が異なるため、メーカー指定条件に従ってください。
施工前に確認したいこと
- 塗布面をきれいにする:汚れ、藻、ほこりなどがあると付着状態に影響する場合があります。
- 被覆面を乾燥させる:濡れた状態では塗布剤が均一に付着しない製品があります。
- 降雨予報を確認する:塗布後の乾燥前に雨が降ると、塗膜が流されたりムラになる場合があります。
- 強風時を避ける:飛散によって作物、周辺施設、住宅、車両などへ付着するおそれがあります。
- 希釈液を十分に撹拌する:沈殿する製品では、濃度ムラやノズル詰まりにつながる場合があります。
- 他製品を混用しない:メーカーが認めていない遮光剤・除去剤との混合は避けます。
使用時の注意点
- 温度低下量を一律に考えない:施設形状、換気量、外気温、湿度、作物量、塗布量などによって結果は異なります。
- 遮光率を上げ過ぎない:過度な遮光は光合成量の低下、徒長、着果・着色・収量への影響につながる場合があります。
- 換気設備と併用する:塗布剤は施設内の熱い空気を排出する資材ではありません。
- 被覆材との適合を確認する:新品フィルムでは表面処理によって塗布剤が定着しにくい場合もあります。
- 除去時期を考える:秋以降も塗膜が残ると、日射量が少ない時期の採光を妨げる場合があります。
- 作業者を保護する:吹き付け作業や除去剤の使用時は、メーカーが指定する保護眼鏡、手袋、作業着などを使用してください。
自然剥離型と除去剤使用型
遮光・遮熱塗布剤には、降雨や紫外線などによって徐々に自然減少する製品と、耐候性の高い塗膜を形成し、シーズン終了時に専用除去剤を使用する製品があります。
ただし、「自然剥離型」「除去剤使用型」と完全に二分できるわけではありません。自然に減少する製品でも早期除去用の専用剤が用意されている場合があります。
製品選定では、施工時だけでなく、必要な遮光期間が終わった後にどう除去するかまで確認してください。
農業ハウス用遮光・遮熱塗布剤取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元・取扱元 | 製品名 | 区分 | 主な特徴・除去方法 |
|---|---|---|---|
| 遮熱塗布剤 | 近赤外線(熱線)の反射を重視し、PARを比較的多く透過する塗布剤。効果持続の目安は約3~5か月。専用除去剤ReduCleanに対応。 | ||
| 遮光塗布剤 | 太陽光と熱を広い波長域で反射する汎用遮光剤。濃度調整で遮光率を変更可能。ガラス、農PO、農ビ、ポリカーボネート、アクリル等に対応。ReduCleanで除去。 | ||
| 遮光剤 | 農ビ・農PO向け。水で8倍に希釈して吹き付け、遮光率20~30%。標準タイプと長期タイプを展開。雨で徐々に自然減少し、専用除去剤でも除去可能。 | ||
| ドローン散布専用遮光剤 | 農ビ・農PO向けのドローン散布専用品。希釈不要、遮光率20~30%。大型ハウス等での施工省力化を目的とした製品。 | ||
| 長期遮光剤 | 雨の多い日本向けの耐候型遮光剤。ガラス、農ビ、ポリエチレン、ポリカーボ、アクリル、フッ素フィルム等に対応。専用除去剤リムービットで除去。 | ||
| 高遮光・自然減少型遮光剤 | 高い遮光率を必要とする用途向け。塗布量により遮光率を調整でき、低~中遮光条件では降雨による自然減少を利用可能。必要に応じリムービットで除去。 | ||
| 遮熱塗布剤 | 近赤外線(NIR)を選択的に反射しながらPARを多く透過する遮熱型。ガラス、農ビ、ポリエチレン、ポリカーボ、アクリル、フッ素フィルム等に対応。リムービットで除去。 | ||
| 遮光剤 | 希釈倍率で遮光率を調整。目安30~55%程度。持続期間の目安は約2~4か月で、自然分解または専用除去剤エクリプスネットで除去。 | ||
| 長期遮熱剤 | 晴天時は白色、雨天時には半透明となる遮熱剤。PAR透過を確保しながら遮熱し、効果持続の目安は約5~7か月。専用除去剤トップクリアに対応。 |
遮光ネットとの使い分け
遮光ネットは取り外して再利用でき、開閉式にすることで日射条件に応じた運用が可能です。一方、塗布型遮光剤はハウス屋根へ資材を張る必要がなく、大面積へ均一な遮光・遮熱を行いやすい特徴があります。
ただし、塗布後はネットのようにすぐ開閉することはできません。そのため、遮光が不要となる時期や曇天時にも一定の塗膜が残る点を考慮する必要があります。
固定的な夏季遮光には塗布型、天候に応じて頻繁に調節したい場合には開閉式遮光ネット・カーテンなど、それぞれの特徴を比較して選定してください。
関連する資材分類・農業用語
- 遮光・遮熱・防風・防虫・鳥獣害・農薬飛散対策資材
- 遮光ネット
- 遮光・光質制御・波長変換シート
- 不織布遮光・保温資材
- 寒冷紗
- 農業用ビニール(農ビ)
- 農PO(農業用ポリオレフィン)
- 遮光・遮光資材
- 光合成有効放射(PAR)
- 高温障害
- ビニールハウス
- 被覆資材
まとめ
農業ハウス用遮光・遮熱塗布剤は、既設ハウスの外面へ施工し、強い日射や熱線による施設内への負荷を軽減する資材です。
一般遮光型、近赤外線を選択的に反射する遮熱型、短期型、長期型、自然減少型、専用除去剤対応型など製品ごとに特徴が異なります。
選定では、遮光と遮熱のどちらを重視するのか、対象作物に必要な光量、被覆材への適合、必要な持続期間、施工方法、除去方法まで確認してください。
また、塗布剤だけで高温対策を完結させるのではなく、換気、循環、灌水、遮光ネットなど施設全体の環境管理と組み合わせることが重要です。