
マグネシウム欠乏(まぐねしうむけつぼう)とは、植物の成長に不可欠なミネラルであるマグネシウムが不足し、葉の色が抜ける「黄化」症状や、葉の枯死(こし)といった生理障害(せいりしょうがい)を引き起こす現象です。
特に砂地や火山灰土壌など、保肥力が低い土地で発生しやすく、ハクサイ、トマト、ナス、ブドウ、メロンなど多くの作物に影響を与えます。
マグネシウムは葉緑素(ようりょくそ)の構成要素であるため、不足すると光合成が低下し、収量や品質に悪影響を及ぼします。
同意語としては「苦土欠乏(くどけつぼう)」があります。
マグネシウム欠乏の概要
マグネシウムは植物の生命活動に欠かせない元素のひとつで、葉緑素(ようりょくそ)の中心部分に存在しています。そのため、マグネシウムが不足すると光合成の能力が落ち、植物全体の活力が低下します。
マグネシウム欠乏の典型的な症状は、古い葉の葉脈間(ようみゃくかん)が黄化し、やがて葉全体が枯れ、最終的には落葉に至ることです。特にイチゴやバラなどでは葉脈の間に不規則な黒い斑点が現れることもあります。
マグネシウム欠乏の詳細説明
- 発生しやすい環境
砂質土壌(さしつどじょう)、火山灰(かざんばい)土壌、酸性土壌(さんせいどじょう)など。 - 発生要因
土壌中のマグネシウム量の不足、土壌pHの低下、カルシウムやカリウム過剰による吸収阻害(きゅうしゅうそがい)。 - 症状の現れ方
下位葉(かいよう)から始まり、葉脈間の黄化、葉の枯死、落葉へ進行。 - 対象作物
トマト、ナス、ブドウ、スイカ、レタス、イチゴ、ミカン、キャベツ、ブロッコリーなど。
マグネシウム欠乏の役割(マグネシウム自体の役割)
マグネシウムは、植物の体内で次のような重要な役割を担っています。
- 光合成の中心元素
葉緑素(ようりょくそ)の中心にマグネシウムが存在し、太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換します。 - 栄養素の移動促進
植物体内でリン酸(りんさん)や糖分などをスムーズに移動させる働きがあります。 - 酵素反応の活性化
数百種類もの酵素(こうそ)の働きを助ける補因子(ほいんし)の役割を持っています。
マグネシウム欠乏の課題と対策
課題1:葉の黄化と落葉による光合成能力の低下
光合成(こうごうせい)の低下により、作物の生育遅延や収量減少を招きます。
対策:早期に苦土石灰(くどせっかい)や硫酸マグネシウムなどの施肥を行い、葉面散布によってマグネシウムを速やかに補給します。
課題2:果実品質の低下(果実肥大期の葉枯れ)
メロンやスイカでは果実が肥大する過程で葉からマグネシウムが転流(てんりゅう)し、葉の欠乏症が進行してしまいます。
対策:果実肥大初期からマグネシウムを葉面施肥し、欠乏の進行を抑制します。
課題3:土壌条件によるマグネシウム不足の慢性化
酸性化した土壌や砂質土では、慢性的にマグネシウムが不足するため、毎年同じ問題が繰り返されます。
対策:土壌診断に基づき、pH矯正(きょうせい)や定期的な苦土肥料の施用計画を立て、長期的に土壌改良を行います。