キュウリ黒点根腐病(きゅうりこくてんねぐされびょう)

キュウリ黒点根腐病(きゅうりこくてんねぐされびょう)
キュウリ黒点根腐病は根が侵され吸水不良となり、晴天で萎凋と回復を繰り返し、根に黒点が出て枯れる土壌伝染性病害。

キュウリ黒点根腐病(きゅうりこくてんねぐされびょう)の概要

キュウリ黒点根腐病は、キュウリホモプシス根腐病とは病原菌が異なる別の土壌伝染性病害であり、両者を同一の病気として扱うことは適切ではありません。
糸状菌(かび)が根に感染して根量を急減させることで吸水不良を引き起こし、晴天日中に萎凋(いちょう)して朝夕に回復する状態を反復したのち、最終的に急激な枯れ上がりに至ります。
地上部症状のみでは他要因(害虫被害、塩類障害、過湿など)と区別できないため、根の病徴および標徴を確認することが診断の前提となります。

キュウリ黒点根腐病(きゅうりこくてんねぐされびょう)の詳細説明

病原は主に Monosporascus cannonballus(モノスポラスカス属)とされ、土壌中や残根に由来する感染源から根に侵入します。本病の本質は、根が腐敗して吸水機能を失うことにあります。初期には蒸散量が増える晴天日中にのみ萎凋(いちょう)が現れ、朝夕や曇雨天で一時的に回復する状態を繰り返しますが、進行すると細根が脱落して根量が著しく減少し、根があめ色から褐色に変化して腐敗します。その結果、回復しない萎凋へ移行し、最終的に枯死に至ります。

本病は肥料成分やpHの不適正によって生じる化学性障害ではなく、病原菌の感染と根域環境(地温・通気・水分条件)が関与する土壌病害です。特に高温期の根域(目安として25〜35℃帯)では発生が助長されやすく、ウリ科作物の連作や輪作間隔の短縮、過湿や踏圧による根域の酸素不足が重なると被害が顕在化しやすくなります。病原菌自体に養分供給性やpH調整機能はなく、根の生理機能を破壊することで植物体の生育を停止させます。

現場で問題になりやすいのは誤診です。萎凋の反復は、コガネムシ類幼虫の食害、塩類障害、根傷み、過湿による一般的な根腐れ、つる割病などでも起こり得ます。判断基準は必ず根を確認することであり、株を抜き取って根を水洗いし、
(1) 細根が著しく少ない、
(2) 根が褐変・腐敗している、
(3) 進行例で根表面に微小な黒点状の標徴が多数認められる、
という所見の組合せから本病を疑います。なお、本病でみられる根表面の黒点は子のう殻(しのうかく)と呼ばれる病原菌の果実体であり、キュウリホモプシス根腐病でみられる疑似菌核や黒色菌糸塊とは性質が異なります。確定診断が必要な場合は、普及指導機関等による検査を行います。

キュウリ黒点根腐病キュウリ黒点根腐病

キュウリ黒点根腐病(きゅうりこくてんねぐされびょう)の診断ポイント

本病は水不足や肥料不足によって生じる生理障害ではなく、発病後に灌水量や施肥量を調整して回復させられる性質の病害ではありません。
地上部症状は非特異的で他要因とも共通するため、診断は必ず根の観察結果に基づいて行います。

  • 地上部症状:晴天日中に萎凋し、朝夕や曇雨天で一時的に回復する状態を反復する
  • 根の病徴:細根が脱落して根量が著しく少なく、残った根があめ色〜褐色化して腐敗する
  • 根の標徴:進行例では、根表面に微小な黒点状の子のう殻が多数認められる
  • 混同回避:キュウリホモプシス根腐病では疑似菌核や黒色菌糸塊が主体であり、黒点の正体が異なる

キュウリ黒点根腐病(きゅうりこくてんねぐされびょう)の発生しやすい条件

発生は病原菌の存在に加えて、根域環境および作付体系の影響を強く受けます。
単年の偶発と決めつけず、複数条件が重なっていないかを点検し、再発を抑制する視点が重要です。

  • 高温期の根域:根域温度が高い条件では病原菌の活動が助長され、発生リスクが高まります
  • 連作・短い輪作:ウリ科作物の連作や輪作間隔が短い体系では、土壌中や残根に感染源が残存しやすくなります
  • 根域の酸素不足:過湿、排水不良、踏圧や締め固めにより通気性が低下すると根が弱り、感染を受けやすくなります

キュウリ黒点根腐病(きゅうりこくてんねぐされびょう)の管理と再発防止

キュウリ黒点根腐病(きゅうりこくてんねぐされびょう)の管理と再発防止

発病後は根機能の回復が起こりにくく、栽培途中での「治療」を前提にしないことが管理の基本です。
圃場内外の土の移動を減らし、感染源と根域条件の両面から対策します。

  • 発病株の処分
     対処方法:発病株は速やかに抜き取り圃場外で処分し、残根を可能な限り除去する
  • 圃場間の土移動の抑制
     対処方法:作業機・長靴・資材は洗浄し、発生圃場の土を別圃場へ持ち込まない
  • 連作回避と作付見直し
     対処方法:ウリ科の連作を避け、輪作体系を組み直す。作型や定植時期を見直し、高温期の負荷を下げる
  • 根域環境の改善
     対処方法:排水性と通気性を確保する(高畝化・過湿回避・踏圧低減)。根域温度の過度な上昇を抑える管理を行う
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