つる枯病(つるがれびょう)

つる枯病とは

つる枯病(つるがれびょう)とは、キュウリ、メロン、スイカ、カボチャなどのウリ科作物に発生する糸状菌による病害です。

茎、葉、葉柄、果実などに発生し、茎では淡褐色から褐色の水浸状病斑、ヤニ状の分泌物、病斑上の小さな黒色粒点などが現れます。病斑が茎を取り囲むように広がると、その上部がしおれて枯れることがあります。

メロン栽培では、茎に生じるつる枯病を「キャンカー」と呼ぶことがあります。ただし、キャンカーという言葉自体は茎や枝に生じる局部的な壊死病斑を表す場合もあるため、つる枯病そのものの正式な同義語として一律に扱わない方が適切です。

つる枯病の病原菌

国内の病害虫防除資料では、つる枯病菌としてDidymella bryoniae(ディディメラ・ブリオニアエ)という学名が広く使われています。

現在の菌類分類では、Stagonosporopsis cucurbitacearum(スタゴノスポロプシス・ククルビタケアルム)が現行名として扱われ、Didymella bryoniaeは異名として整理されています。

海外では、ウリ科作物の英語でいうgummy stem blightを複数の近縁なStagonosporopsis属菌が引き起こすことも報告されています。

国内の栽培・防除情報を調べる際は、Didymella bryoniaeの名称で掲載されている資料も多いため、両方の名称を知っておくと資料を確認しやすくなります。

つる枯病の主な症状

茎・つるの症状

地際部、節、葉柄の付け根などに淡褐色から褐色の病斑を生じます。

湿度が高いと病斑が水浸状になり、進行すると軟化したり、赤褐色から褐色のヤニ状物質を生じたりすることがあります。病斑が乾燥すると灰白色に見える場合もあります。

病斑が茎の周囲を取り囲むように進展すると、水分や養分の移動が妨げられ、その上部の葉やつるがしおれ、最終的に枯死することがあります。

葉の症状

葉では、葉縁から褐色の病斑が広がることがあり、円形、不整形、扇形などの比較的大きな病斑になります。

病斑が進むと中央部が乾燥して破れやすくなる場合があります。

果実の症状

果実にも感染します。

作物によって症状は異なり、腐敗、褐変、亀裂などを生じる場合があります。カボチャでは、収穫時に明瞭な症状がなくても、貯蔵中に発病して腐敗する例があります。

病斑に現れる小黒粒点

つる枯病を診断するときに特に確認したいのが、病斑上に形成される多数の小さな黒色粒点です。

これらは病原菌の分生子殻や偽子のう殻などで、茎や葉の病斑に黒い粒として確認できることがあります。

水分があると、分生子殻から胞子を含む塊が放出されることがあります。

ただし、発病初期には小黒粒点がまだ形成されていない場合があります。「黒い粒が見えないから、つる枯病ではない」とは判断できません。

つる枯病の伝染

病原菌は、感染した茎葉や巻きひげなどの残さで生存し、次作の伝染源となることがあります。

支柱などの資材に罹病した巻きひげや植物残さが残っている場合も、伝染源を残す原因になります。

また、種子伝染も知られているため、育苗段階から発病することがあります。

病斑上で形成された胞子は、水滴や降雨、散水などによって周囲へ移動します。そのため、病原菌が存在する条件では、植物体が長時間濡れる環境や高湿度が感染・病勢進展を助長します。

発生しやすい条件

つる枯病は多湿条件で発生・まん延しやすくなります。

施設栽培では、換気不足、結露、株元の過湿などによって植物体が濡れた状態が続くと、発病リスクが高くなります。

病原菌の生育適温として、メロンでは20~24℃程度とする報告があります。

「高温多湿なら必ず発生する」「梅雨時だけ発生する」という病害ではありません。

病原菌の存在、植物体の濡れ、温度、傷口、作物の生育状態などが重なって発病します。

摘葉・摘心などの傷口にも注意する

つる枯病菌は、摘心、摘葉、整枝などによって生じた傷口から感染することがあります。

特に曇雨天時や施設内の湿度が高い状態で管理作業を行うと、傷口が乾きにくくなります。

摘葉や摘心など茎葉を傷つける作業は、可能であれば晴天時など傷口が乾きやすい条件で行います。

ハサミなどの管理器具についても、罹病植物を扱った後に健全株へ病原菌を移さないよう衛生管理を行います。

つる枯病とつる割病の違い

つる割病とつる枯病は名前が似ており、どちらも萎凋や茎の褐変、ヤニ状物質などを生じることがあるため、外観だけでは混同しやすい病害です。

「ヤニが出たからつる枯病」と判断するのは誤りです。

つる枯病では、茎や葉などに形成される病斑と、その病斑上に生じる多数の小黒粒点が重要な診断材料になります。

つる割病では、根から侵入した病原菌が導管部へ広がり、茎を切断すると維管束・導管部の褐変が確認されることがあります。

ただし、発病初期などでは典型症状がそろわない場合があります。病徴だけで判断できない場合は、病害虫防除所や農業試験場などへ診断を依頼します。

つる枯病の防除

健全な種子・苗を使用する

種子伝染することがあるため、健全な種子と苗を使用します。

育苗期に子葉や茎などへ疑わしい病斑が認められる苗を、そのまま本圃へ持ち込まないことが重要です。

植物体を長時間濡らさない

施設栽培では換気を行い、結露や高湿度が長時間続かないよう管理します。

灌水時に株元や茎へ水を直接かけ続ける管理も避けます。

露地栽培では、雨よけ、排水改善、マルチなどによって植物体への泥はねや長時間の濡れを減らすことが防除につながります。

病気の残さを残さない

発病した茎葉、果実、巻きひげなどを栽培終了後も圃場や施設内へ残すと、次作の伝染源となる可能性があります。

発病残さは圃場から持ち出し、地域のルールに従って適切に処分します。

支柱、誘引資材などに残った罹病した巻きひげや茎葉も除去します。

作業による傷を管理する

摘葉、摘心、整枝などは、できるだけ傷口が早く乾燥する条件で行います。

曇雨天時や結露が多い時間帯に、大量の摘葉・整枝作業を行うことは感染リスクを高める可能性があります。

過繁茂と樹勢低下を避ける

過剰な窒素施肥によって茎葉が過繁茂すると、株内部の通風が悪くなり、植物体が乾きにくくなります。

反対に、生育後半の肥料切れや着果負担によって樹勢が著しく低下した場合にも病勢が進みやすくなることがあります。

単純に肥料を増減するのではなく、作物、生育段階、土壌・培地分析などに基づいて肥培管理を行います。

農薬は予防を含めて使用時期を判断する

つる枯病では、病斑が大きく進展して株が萎凋してからでは回復が難しくなります。

発生履歴のある圃場などでは、地域の防除暦や発生予察情報を確認し、必要に応じて登録農薬を適期に使用します。

薬剤散布では葉だけでなく、発病しやすい株元、茎、葉柄などへ薬液が十分に届くかも確認します。

農薬を使用する場合は、農林水産省の農薬登録情報提供システムなどで、対象作物、対象病害、希釈倍率・使用量、使用時期、使用回数、使用方法などの最新登録内容を確認してください。

つる枯病でよくある誤解

「多湿だから発病した」と考える

多湿だけで病気が発生するわけではありません。

病原菌が存在し、感染に適した温度、水分、傷口などの条件がそろうことで発病します。

湿度管理だけでなく、健全苗、残さ除去、作業管理なども含めて対策します。

「赤褐色のヤニが出ればつる枯病」と判断する

誤りです。

メロンのつる割病などでも、地際部や茎から赤褐色のヤニ状物質が生じる場合があります。

病斑上の小黒粒点、根や茎内部の状態、萎凋の現れ方などを合わせて確認します。

「小黒粒点がないのでつる枯病ではない」と判断する

発病時期や病斑の状態によっては、小黒粒点がまだ明瞭に形成されていない場合があります。

小黒粒点は有力な診断材料ですが、その有無だけで病名を確定・否定することはできません。

「つる枯病は土壌病害なので土壌消毒をすればよい」と考える

この考え方では防除が不十分です。

つる枯病菌は罹病した茎葉や巻きひげなどで生存し、種子伝染や水滴による胞子の伝播も起こります。

土壌だけを処理しても、罹病苗、植物残さ、資材などに伝染源が残っていれば再び発生する可能性があります。

「発病してから農薬を散布すればよい」と考える

病斑が拡大して茎を取り囲み、上部が萎凋する段階になると、薬剤散布だけで元の状態へ戻すことは期待できません。

発病履歴、栽培環境、地域の発生予察などからリスクを判断し、感染・病勢進展を抑える管理を組み合わせます。

関連する資材分類・農業用語

参考資料

診断・防除について:
つる枯病は、つる割病などと症状が似る場合があります。ヤニ、萎凋、小黒粒点など一つの症状だけで断定せず、葉・茎・根・茎内部の状態、発生位置、栽培履歴を合わせて確認してください。農薬を使用する場合は、使用時点の登録内容を必ず確認してください。

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