防滴(無滴)とは
防滴(ぼうてき)・無滴(むてき)とは、
ビニールハウスや温室の被覆資材の内面に発生した結露水を、
大きな水滴として付着・落下させにくくし、フィルム面に沿って流れやすくする性能です。
農業用ビニール(農ビ)や農業用ポリオレフィン系フィルム(農PO)などに付加されています。
防滴・無滴は、結露そのものを防止する性能ではありません。
施設内の水蒸気が多く、フィルム表面温度が
露点以下になると結露は発生します。
防滴性は、その結露水の付き方や流れ方を変え、作物への水滴の落下やフィルムの曇りを抑えるための性能です。
防滴の仕組み
一般的なプラスチックフィルムの表面では、水が粒状の水滴となって付着することがあります。
防滴性を持たせた農業用フィルムでは、フィルム内面を水になじみやすい状態にすることで、
結露水を大きな水滴に成長させにくくし、薄い水膜として広げてフィルム面に沿って流れやすくします。
このため、防滴性のないフィルムと比較して、ハウス内への水滴の「ボタ落ち」を抑えることができます。
また、フィルム内面に多数の水滴が付着すると光が散乱して光線透過量が低下するため、
防滴性は施設内への採光を維持するうえでも重要な性能です。
防滴・無滴・流滴・防曇の呼び方
農業用被覆フィルムでは、
「防滴」「無滴」「流滴」などの名称が使われています。
メーカーによっては「防曇」を同様の性能を示す名称として使用する場合もあります。
ただし、「防曇」と「防霧」は区別する必要があります。
農業用被覆資材における
防霧は、主としてハウス内の空気中に発生する霧・モヤを抑える性能を指します。
一方、防滴・無滴は、主としてフィルム内面に生じた結露水の状態や流れ方に関係する性能です。
製品カタログでは「防霧・防滴」「防霧・無滴」などと両方が併記されている場合があります。
名称だけで判断せず、メーカーが示す性能・処理方法を確認することが重要です。
防滴処理の方法
農業用フィルムの防滴性を持たせる方法には、製品によって違いがあります。
代表的なものとして、防滴剤をフィルムへ配合する方法と、
フィルム表面に防滴性を持つ処理剤をコーティングする方法があります。
練り込み型
フィルム原料に防滴剤などを配合し、使用中にフィルム表面へ作用させる方式です。
農ビなどで広く使用されています。
製品によって防滴性能や持続期間は異なります。
塗布型・コーティング型
フィルムの内面に防滴性を持つ処理剤を塗布・コーティングする方式です。
長期展張用の農POなどで採用されている製品があります。
塗布型ではフィルムに表裏が指定されている場合があるため、
メーカーの展張方向に従う必要があります。
練り込み型と塗布型のどちらが常に優れているということではありません。
展張期間、用途、フィルムの材質、製品設計によって適した方式が異なります。
防滴性が重要な理由
作物への水滴落下を抑える
被覆材から大きな結露水滴が作物へ落下すると、葉や果実が濡れる原因になります。
葉濡れが長時間続く条件は、一部の病害が発生・進展しやすい環境につながることがあります。
防滴性は、このような水滴のボタ落ちを減らすために利用されます。
ただし、防滴フィルムを使用すれば病害を防止できるわけではありません。
病害発生には温度、湿度、葉濡れ時間、病原菌、作物の状態など複数の条件が関係します。
光線透過の低下を抑える
フィルム内面に細かな水滴が多数付着すると、光が散乱して施設内へ入る光が減少することがあります。
結露水を水膜状に広げて流すことで、水滴による光線透過の低下を抑える効果が期待できます。
施設園芸では作物の光合成に利用できる光を確保することが重要であるため、
特に日射量の少ない冬季には被覆材の透明性と防滴性の維持が重要になります。
防滴性と結露は別の問題
防滴・無滴という名称から「フィルムに水が付かない」と誤解されることがありますが、
実際には結露水が発生しなくなるわけではありません。
施設内の相対湿度が高く、
フィルム表面温度が露点以下になれば結露は発生します。
防滴性は、その水を粒状にせず流れやすくするための性能です。
したがって、高湿度や結露そのものを減らすには、
換気、加温、除湿、内張りの開閉、灌水時間・灌水量の調整など、
環境制御と組み合わせて管理する必要があります。
防滴性能の持続性
防滴性能は永久に維持されるものではありません。
その持続性は、フィルムの種類、防滴処理の方式、使用期間、温度、結露量、
汚れ、藻・カビの付着、表面の傷などによって変わります。
特に塗布型フィルムでは、フィルム表面を強くこすったり傷つけたりすると、
無滴性能が低下する場合があります。
また、使用開始時やフィルムが濡れ始めた直後には、
一時的に細かな水滴が付着して曇って見える製品もあります。
「防滴・無滴」と表示されていることだけで展張期間中の性能を保証できるわけではないため、
長期展張する場合はメーカーが示す防滴処理方式や使用上の注意を確認してください。
防滴フィルムを使用する際の注意点
- 結露防止材と考えない:
防滴・無滴は結露そのものを止める機能ではありません。 - 表裏を確認する:
塗布型農POなどでは、内面・外面が指定されている製品があります。
逆向きに展張すると本来の性能を発揮できない場合があります。 - フィルム表面を傷つけない:
塗布処理された製品では、こすれや傷によって防滴性能が低下することがあります。 - 性能の持続期間を一律に判断しない:
防滴性の持続期間は製品や使用環境によって異なります。 - 高湿度対策を別に行う:
防滴フィルムを使用していても、過湿状態が続く場合は換気・加温・除湿などの管理が必要です。 - 防霧との違いを確認する:
防滴・無滴はフィルム面の結露水、防霧は施設内の霧・モヤに主として関係する性能です。
よくある誤解
- 「無滴なら水滴が発生しない」:
誤りです。結露水を粒状の大きな水滴にしにくくし、フィルム面に沿って流れやすくする性能です。 - 「防滴なら結露しない」:
誤りです。フィルム表面温度が露点以下になれば結露は発生します。 - 「防滴と防霧は同じ」:
誤りです。防滴は主としてフィルム面の結露水、防霧は主としてハウス内の霧・モヤに関係します。 - 「防滴フィルムなら病害を防げる」:
誤りです。水滴の落下を減らすことはできますが、病害防除そのものを代替する機能ではありません。 - 「すべての防滴フィルムは同じ仕組み」:
誤りです。練り込み型や塗布・コーティング型などがあり、製品によって処理方法や持続性が異なります。
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