被覆資材(ひふくしざい)

被覆資材

被覆資材とは

被覆資材(ひふくしざい)とは、
農作物、栽培施設、土壌などを覆い、
温度、光、水分、風雨、害虫などの影響を調整するために使用する農業資材の総称です。

ビニールハウスの外張り・内張りに使用する農ビや農POだけでなく、
トンネル用フィルム、
不織布、
防虫ネット、
遮光・遮熱資材、
マルチなども、
用途によって被覆資材に含まれます。

「被覆資材=ビニールハウス用フィルム」という意味ではありません。

また、「被覆資材」という言葉が指す範囲は、
資料や業界分野によって多少異なります。
施設園芸では、農ビや農POなどの施設被覆材を中心に指して使われる場合もあります。

被覆資材の主な種類

ハウス・温室の被覆資材

  • 農業用ビニール(農ビ):ポリ塩化ビニル(PVC)を主原料とする軟質フィルムです。
  • 農PO:ポリオレフィン系樹脂を使用した農業用フィルムです。
  • 農サクビ:エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を使用した農業用フィルムです。
  • フッ素フィルム:ETFEなどを使用し、長期展張用途で利用されるフィルムがあります。
  • 硬質被覆材:ポリカーボネート板やアクリル板など、ガラス以外の硬質材料を施設の屋根や側面に使用する場合があります。
  • その他のフィルム:ポリエステルフィルムなど、用途に応じて施設被覆に使用される材料があります。
  • 内張り・カーテン資材:保温、遮光、遮熱などを目的として施設内部に設置する資材です。

同じ農ビや農POでも、
厚さ、耐候性、光線透過特性、散乱性、
防滴性、防霧性などは製品によって異なります。

素材名だけで性能を判断することはできません。

作物・圃場を覆う被覆資材

  • トンネル資材:トンネル栽培で作物の上を被覆し、保温、防霜、雨よけ、防風、防虫などに利用します。
  • べたがけ資材:不織布などを作物の上へ直接または近接して被覆し、保温、防霜、防風、防虫などに利用します。
  • 防虫ネット:対象害虫の侵入を抑える目的で使用します。目合いが細かくなるほど通気抵抗が大きくなる場合があります。
  • 遮光資材:入射する光の一部を遮り、過度な受光や施設内・作物体の温度上昇を抑える目的で使用します。
  • 遮熱資材:主に熱負荷の低減を目的とする資材です。近赤外線を選択的に反射・遮蔽する製品などがあり、遮光資材と同じ原理とは限りません。
  • マルチ:土壌表面を覆い、地温調節、土壌水分の蒸発抑制、雑草抑制、泥はね防止などに利用します。

被覆資材によって変わる栽培環境

被覆資材を設置すると、
単に「作物を覆う」だけでなく、
施設や作物周辺の環境そのものが変化します。

光

透明に見えるフィルムでも、
すべて同じ光を同じ割合で透過するわけではありません。

全光線透過率、
散乱光の割合、
紫外線や近赤外線など波長別の透過特性は製品によって異なります。

作物では光合成に利用される光だけでなく、
施設内部への熱負荷や、
花粉交配用昆虫への影響なども考慮する必要があります。

温度

被覆によって放熱や空気交換が抑えられると、
施設内や作物周辺の温度が変化します。

冬季には保温に利用できますが、
日射の強い時期には過度な温度上昇を招くことがあります。

遮光・遮熱資材についても、
遮光率や表面色だけでは温度への影響を判断できません。

日射量、
施設構造、
換気能力、
資材の設置位置などを合わせて考えます。

湿度・結露

フィルムなど通気性の低い資材で施設を覆うと、
施設内の水蒸気が外へ逃げにくくなる場合があります。

温度低下によってフィルム表面が露点以下になると、
内面に結露が発生します。

防滴・流滴性を持つフィルムは、
結露水を大きな水滴として落下しにくくし、
フィルム面を流れやすくするためのものです。

防滴フィルムでも結露そのものを防ぐことはできません。

換気

防虫ネット、不織布、内張り資材などを追加すると、
空気の流れが変化する場合があります。

特にハウス開口部へ細かな目合いの防虫ネットを設置すると、
害虫侵入を抑えられる反面、
通気抵抗が増えて換気量が低下することがあります。

害虫対策だけを見て目合いを決めると、
夏季の高温対策で問題が生じることがあります。

被覆資材を選ぶときの考え方

被覆資材は素材名だけで選定してはいけません。

同じ農ビ、農PO、防虫ネット、不織布でも、
製品によって性能が異なります。

少なくとも次の条件を確認します。

  • 外張り、内張り、トンネル、べたがけ、マルチなどの使用場所
  • 必要な透光性、散乱光性、遮光性
  • 紫外線や近赤外線などの波長別透過特性
  • 保温性、遮熱性
  • 防滴・流滴性、防霧性
  • 通気性、透水性
  • 耐候性と予定使用期間
  • 風、雪などによる荷重と固定方法
  • 換気や巻き上げなどの開閉方法
  • 作物、作型、栽培時期
  • 花粉交配用昆虫の利用条件
  • 使用後の回収、分別、処理方法

例えば、
「農POだから農ビより必ず長持ちする」
「透明度が高いほど作物に良い」
「厚いフィルムほど長寿命」
「UVカットなら病害虫対策として常に有利」
といった判断はできません。

耐用性には、
樹脂の種類だけでなく、
厚さ、
耐候処方、
展張方法、
風によるばたつき、
骨材との摩擦、
地域の日射条件なども関係します。

光についても、
作物、
作型、
季節、
施設構造によって求められる性能は変わります。

資材の名称ではなく、製品仕様と使用条件を照合して選定します。

被覆資材でよくある誤解

  • 「農POなら農ビより必ず長持ちする」
    誤りです。耐候性は製品ごとの設計、厚さ、使用環境、展張条件などで変わります。
  • 「透明なほど作物に適している」
    透過光量だけでは判断できません。散乱光、波長特性、遮熱性なども栽培環境へ影響します。
  • 「遮光率が高いほど夏は涼しくなる」
    単純には判断できません。資材の光学特性、設置位置、換気条件などによって施設内温度への影響は変わります。
  • 「防滴なら結露しない」
    誤りです。防滴性は結露水の付き方や流れ方を調整する性能で、結露の発生そのものを止めるものではありません。
  • 「防虫ネットは細かいほど良い」
    対象害虫より必要以上に細かな目合いを選ぶと、換気量の低下によって高温化する場合があります。
  • 「UVカットフィルムなら常に病害虫対策として有利」
    紫外線域の制御は一部害虫や病害への影響が期待される場合がありますが、対象生物や作物、花粉交配用昆虫などへの影響も考慮する必要があります。

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