ハウスリフォームとは
ハウスリフォームとは、
既存の農業用ハウスや温室を活用しながら、
被覆資材の張り替え、
換気設備、
遮光・遮熱設備、
防虫ネット、
カーテン、暖房設備、開口部、樋、骨組などを補修・更新・改造することです。
「ハウスリフォーム」は、単一の工法や性能を示す名称ではありません。
施工企業によって、単純な張り替え・修理から、
骨組補強、かさ上げ、設備更新、
環境制御設備の導入まで含む場合があります。
最初に決めるのは工事内容ではなく、何を改善するための改修なのかです。
例えば「夏に暑い」という問題でも、
換気開口が小さいのか、
細かな防虫ネットによって通気抵抗が大きくなっているのか、
日射負荷が大きいのか、
ハウス上部に熱がたまりやすい構造なのかで対策は変わります。
原因を確認せず、
「暑いから遮光材を張る」
「虫が多いからネットを細かくする」
と決めると、別の問題を大きくすることがあります。
リフォームできるハウスかを先に確認する
被覆材や設備を新しくしても、
骨組そのものの腐食や変形が進んでいれば、
施設全体の安全性が回復するとは限りません。
特に確認したいのは、
柱脚、基礎、柱、梁、アーチパイプ、接合部、筋かい、谷樋、妻面などです。
サビが表面だけなのか、
断面欠損まで進んでいるのかによっても判断は変わります。
骨組の状態を確認せず、先に高額設備を載せるべきではありません。
既設構造を継続使用できるか判断できない場合は、
施工企業などによる現地確認が必要です。
腐食や変形が広範囲に進んでいる場合は、
部分補修を繰り返すより、
建て替えを含めて比較した方が合理的なことがあります。
かさ上げ・間口変更・骨組改造は特に注意する
ハウスのかさ上げ、
間口や開口部の変更、
柱・梁・補強材の変更などは、
単純な設備交換とは分けて考えます。
形状や高さを変更すると、
風圧を受ける条件や荷重の伝わり方が変わります。
既設ハウスへカーテン、栽培棚、配管、ダクト、
暖房設備などを追加する場合も、
新たな重量や力が骨組へ加わることがあります。
「取り付けられる」と「構造上問題がない」は別です。
地域によって想定される風速や積雪条件も異なります。
既設ハウスの状態と地域条件を確認したうえで改修内容を決めます。
また、ハウスの構造、被覆、規模、設置条件や改修内容によっては、
建築基準法上の取扱いや必要な手続きの確認が必要になる場合があります。
構造を大きく変更する工事では、
施工前に所在地を所管する行政機関などへ確認してください。
お悩みから考えるハウスリフォーム
夏場の高温を改善したい
最初に
換気能力と日射負荷を確認します。
側窓、天窓、谷換気、妻面換気、
換気扇などの能力が不足している場合、
遮光・遮熱資材だけを追加しても十分に改善しないことがあります。
外気温そのものが高い条件では、
換気だけにも限界があります。
換気、遮光・遮熱、細霧、外気導入などを
作物と施設条件に合わせて検討します。
害虫の侵入を減らしたい
防虫ネットの目合いだけを細かくするのは危険です。
細かなネットほど一般に通気抵抗が大きくなり、
換気量が低下する場合があります。
対象害虫、
ネットの目合い・開口率、
側窓や天窓の面積、
出入口、
ネットと骨組との隙間まで確認します。
暖房費を減らしたい
内張りカーテン、
二重被覆、
隙間対策、
暖房機や温風ダクトの見直しなどが候補になります。
被覆を増やせば必ず省エネになるわけではありません。
日中の透光性、
夜間の保温性、
カーテンの開閉、
施設の気密性、
暖房設備の能力を合わせて判断します。
採光性を改善したい
汚れや経年劣化した被覆資材の更新によって、
施設内へ入る光を改善できる場合があります。
しかし、透光率だけで資材を選ぶのは不十分です。
散乱光性、保温性、防滴・流滴性、耐候性、
使用期間なども確認してください。
また、
光が多ければ常に光合成や収量が増えるとは限りません。
作物、温度、CO2、水分、葉面積など他の条件にも左右されます。
雨漏りを直したい
フィルムの破れだけが原因とは限りません。
谷樋の腐食、
接合部、
フィルム止め部、
妻面、
樋と被覆材の取り合いなども確認します。
漏れている位置と、水が侵入している位置が同じとは限りません。
張り替え前に侵入経路を確認します。
作業性を改善したい
出入口の拡張、
かさ上げ、
巻き上げ装置の電動化、
カーテン自動化、
栽培ベンチや高設設備の導入などがあります。
省力化効果だけでなく、
新しい設備の保守、
停電時の操作、
交換部品の供給、
構造への追加荷重も確認します。
ハウスリフォームの主な工事
- 被覆材の更新:農ビ、農PO、フッ素フィルム、硬質被覆材などの張り替え・変更。
- 換気設備の改修:側窓、天窓、谷換気、妻面換気、換気扇、巻き上げ装置などの新設・更新。
- 遮光・遮熱設備:内外部の遮光・遮熱資材や開閉設備の設置・更新。
- 防虫対策:防虫ネット、出入口、二重扉などの設置・改修。
- 保温設備:内張りカーテン、二重被覆、開閉装置などの更新。
- 構造補修:腐食部材、樋、接合部、骨組、補強材などの補修・交換。
- 構造変更:かさ上げ、開口部変更、増改築など。
- 設備更新:暖房、灌水、電気、制御、栽培設備などの更新・追加。
リフォームで改善できること・できないこと
被覆材の劣化、
局所的な漏水、
換気設備の老朽化、
防虫設備の不足、
カーテンの劣化、
操作の省力化などは、
原因と改修内容が一致すれば改善しやすい項目です。
逆に、
骨組全体の著しい劣化、
地域条件に対して構造そのものが適していない施設、
施設外の高温、
排水不良、
栽培管理上の問題などは、
部分的な設備交換だけでは解決できません。
ハウスリフォームは、
既設施設を新品と同じ状態へ戻す工事とは限りません。
改修後に何年間使用する予定なのかまで含めて判断します。
見積もりで確認すること
ハウスリフォームの費用は、
面積だけでは比較できません。
例えば同じ「フィルム張り替え」でも、
既設フィルム撤去、
処分、
下地補修、
フィルム止め材交換、
足場、
高所作業、
樋補修などが含まれるかによって金額は変わります。
見積書では少なくとも、
撤去するもの、再利用するもの、新設するもの、補修するもの、工事対象外のもの
を分けて確認します。
電気工事、配管工事、廃材処理、運搬費、
施工後の調整などが別途扱いになっていないかも確認してください。
よくある失敗パターン
- 張り替えれば高温問題も解決すると考える:
なぜ間違いか:高温の原因が換気不足や日射負荷なら、被覆更新だけでは原因が残ります。
誤解されやすい点:新しいフィルムにすれば施設性能全体が改善すると考えやすいことです。
正しくは:換気、日射、外気温、施設形状を先に確認します。 - 細かな防虫ネットほど良いと考える:
なぜ間違いか:目合いを細かくすると通気抵抗が増える場合があります。
誤解されやすい点:防虫性能だけを見て換気性能を見落とすことです。
正しくは:対象害虫と必要な換気量の両方から選びます。 - かさ上げすれば栽培環境が良くなると考える:
なぜ間違いか:高さや形状の変更は風を受ける条件や構造条件にも関係します。
誤解されやすい点:空間が広がることと構造安全性を別問題として考えてしまうことです。
正しくは:栽培上の効果と構造条件を同時に確認します。 - 古い骨組へ新しい設備を追加すればよいと考える:
なぜ間違いか:設備重量や支持部への力が既設骨組へ追加されます。
誤解されやすい点:設備単体が軽く見えても、支持方法や施工範囲まで含めると条件が変わることです。
正しくは:骨組、接合部、基礎を確認してから設備を追加します。 - 最も安い見積もりを選ぶ:
なぜ間違いか:施工範囲そのものが違う可能性があります。
誤解されやすい点:「ハウスリフォーム」という同じ工事名なら内容も同じだと思いやすいことです。
正しくは:交換部材、補修範囲、撤去処分、調整、保証まで同条件にして比較します。
リフォームが向いているハウス
既設骨組を継続使用でき、
問題の原因がある程度特定できている場合は、
リフォームを検討しやすくなります。
例えば、
被覆材の劣化、
換気能力不足、
カーテンの老朽化、
防虫設備不足、
作業設備の旧式化などです。
新設より投資を抑えられる場合もありますが、
リフォームの方が必ず安いとは限りません。
残存する施設の寿命、
今後の補修費、
使用予定年数まで含めて比較してください。
リフォームより建て替えを検討したい状態
骨組の広範囲な腐食、
大きな変形、
複数箇所の基礎・接合部の劣化、
現在の栽培方式に対して根本的に寸法が合わない場合などは、
部分改修を積み重ねるより建て替えが合理的になることがあります。
この判断に一律の年数基準はありません。
建設年だけでなく、
材質、
腐食状況、
災害履歴、
補修履歴、
地域の風雪条件、
今後の使用期間を確認します。
施工事例を見るときの注意
ビフォーアフター写真だけで工法を評価しないでください。
確認すべきなのは、
どのようなハウスを、
何の問題に対して、
どこまで改修したのかです。
同じ工事名称でも、
施設規模、地域、構造、作物、作型が違えば結果も変わります。
ハウスリフォーム取り扱いメーカー・代理店
メーカー・施工企業によって、
対応地域、対象ハウス、施工内容は異なります。
既設ハウスが他社施工品の場合や、
図面が残っていない場合は、
対応できるか事前に確認してください。
| メーカー・施工企業 | 製品・サービス名 | 主な対応内容 |
|---|---|---|
| サンケンハウス株式会社 | ハウスリフォーム・工事 | ガラスからエフクリーンへの変更、カーテン改修、樋交換・フィルム張り替え、パイプハウス補強など |
| イノチオアグリ株式会社 | ハウスリフォーム事業 | 被覆・天窓・サイド・カーテン・暖房・電気・灌水設備の更新、骨組補強、かさ上げ、環境制御設備導入など |
| トヨタネ株式会社 | ハウスリフォーム | 被覆材張り替え、天窓改修、カーテン改修、防虫対策、かさ上げ、二重扉など |
| 長谷川興業株式会社(グリーンハウスハセガワ) | ビニールハウス設計・施工 | 鉄骨・大型パイプハウス等の新設、張り替え、補修工事、解体など |
| 拓南製作所株式会社 | 農業用施設関連 | 農業用施設の設計・施工・リフォーム。アーチ型施設、平張り施設などに対応 |
| トミタテクノロジー株式会社 | 温室・施設園芸リニュアルプロジェクト | 既存温室リフォーム、高断熱化、外部遮光、環境制御システム導入、温室かさ上げなど |
| アグリアシストジャパン株式会社 | 農業用ハウス増改築 | 既存ハウスの増築・改築、自然災害後の修繕、ガラスハウスからフィルムハウスへの変更など |
| 株式会社farmlab | 温室リフォーム | 温室の張り替え、外装下地交換、増築、形状変更など。現行公式メーカー製品ページを確認できなかったため外部リンクは付けておりません。 |
問い合わせ前のチェックリスト
- ハウスの所在地、棟数、間口、奥行、軒高などを確認したか
- 建設時期、メーカー、施工会社、図面の有無を確認したか
- 骨組、柱脚、基礎、接合部、谷樋などの写真を撮ったか
- 現在使用している被覆材と設備を確認したか
- 高温、害虫、雨漏り、作業性など、困っている問題を分けたか
- 過去の台風・積雪・倒壊・補修履歴を確認したか
- 残したい設備と交換したい設備を整理したか
- 今後何年間使用する予定かを決めたか
- 建て替え案も比較対象に入れたか
よくある質問
Q1. 古いハウスでもリフォームできますか?
A. 年数だけでは判断できません。
骨組、基礎、接合部、腐食、変形などを確認し、
既設構造を継続利用できるか判断します。
Q2. 他社が建てたハウスでも改修できますか?
A. 対応する施工企業はありますが、一律ではありません。
図面の有無、
部材の規格、
構造、
施工地域などによって変わります。
Q3. 防虫ネットを追加すれば害虫を防げますか?
A. 完全に防げるとは言えません。
対象害虫に適した目合いに加え、
出入口や地際などの隙間、
ネットの破損、
換気性能も確認します。
Q4. かさ上げすると高温対策になりますか?
A. 条件次第です。
施設容積や換気経路が変わることで有利になる場合はありますが、
高温の原因が別にあれば十分な改善にはなりません。
構造条件の確認も必要です。
Q5. リフォームと建て替えはどちらが安いですか?
A. 現地条件を確認しなければ判断できません。
改修費だけでなく、
既設骨組の残存寿命、
今後必要になる補修、
設備更新、
使用予定年数を含めて比較します。
まとめ
ハウスリフォームは、
古い部分を新しく見せるための工事ではありません。
既設施設のどこに問題があり、何を改善すれば栽培や経営上の損失を減らせるのかを整理したうえで行う改修です。
被覆、換気、防虫、保温、設備の問題なら、
既設ハウスを活かした改修が有効な場合があります。
骨組や基礎の劣化が大きい場合、
構造を大きく変更する場合は、
設備選定より先に構造条件を確認します。
「リフォームするか、建て替えるか」から考えるのではなく、
既設施設をあと何年、どのような栽培に使うのか
から判断してください。