双子葉植物とは
双子葉植物(そうしようしょくぶつ)とは、被子植物のうち、胚に通常2枚の子葉(しよう)をもつ植物をまとめた伝統的な区分です。「双子葉類」とも呼ばれ、英語ではdicotyledonsまたはdicotsと表記されます。
学校理科では、単子葉植物との違いを、子葉の数、葉脈、根、茎の維管束などの特徴から学びます。トマト、ナス、ダイズ、キャベツ、キュウリ、ヒマワリなど、多くの農作物も従来の双子葉植物に含まれます。
現代の植物分類では注意が必要です。DNAなどを利用した分子系統解析によって、従来「双子葉植物」とまとめられていた植物全体は、一つの共通祖先とそのすべての子孫からなる単系統群ではないことが分かっています。
そのため、現在のAPG分類では「双子葉植物」を一つの正式な大分類群として扱わず、その大部分を真正双子葉類(eudicots)という系統群として位置付けています。
「双子葉植物」と「真正双子葉類」は同じ意味ではありません。
真正双子葉類は、従来「双子葉植物」とされてきた植物の大部分を含む単系統群です。従来の双子葉植物には、モクレン類など真正双子葉類とは別の系統も含まれていました。
双子葉植物の典型的な特徴
学校理科などで単子葉植物と比較する場合、双子葉植物には次のような特徴が多く見られます。
- 子葉:胚に通常2枚の子葉をもつ
- 葉脈:葉脈が枝分かれして網目状になる網状脈が多い
- 根:主根から側根が分岐する根系をもつものが多い
- 茎:茎の維管束が輪状に配置されるものが多い
- 茎の肥大:形成層をもち、二次成長によって茎や幹が太くなる種類が多い
- 花:真正双子葉類では、花の各器官が4数性または5数性となるものが多い
これらはあくまで典型的な特徴です。すべての植物がこの組み合わせに当てはまるわけではありません。植物を一つの特徴だけで単子葉植物または双子葉植物と断定すると、例外によって誤判定することがあります。
また、「子葉が2枚」という場合、必ずしも発芽時に2枚の子葉が地上へ出てくるという意味ではありません。種類によっては子葉が種子内や地中に残る発芽様式もあります。
双子葉植物と真正双子葉類の違い
かつては、被子植物を大きく「単子葉植物」と「双子葉植物」の二つに分ける分類が広く使われていました。
その後、DNAの塩基配列などを比較する分子系統解析が進み、単子葉類は共通祖先からまとまった一つの系統群であるのに対し、従来の双子葉類全体は一つの系統群ではないことが明らかになりました。
従来の双子葉植物のうち大部分を占める系統が真正双子葉類(eudicots)です。バラ科、マメ科、アブラナ科、ナス科、ウリ科、キク科など、農業上重要な多くの植物が真正双子葉類に含まれます。
一方、モクレン類など、従来は双子葉植物として扱われてきたものの真正双子葉類には含まれない植物群もあります。
真正双子葉類を系統的に特徴付ける代表的な形質の一つが花粉です。真正双子葉類では、基本的に三つの溝またはそれに由来する構造をもつ花粉が見られます。子葉が2枚かどうかだけで定義された従来の「双子葉植物」とは、分類の考え方そのものが異なります。
APG分類では「双子葉植物」をどう扱うか
APG分類は、被子植物の進化上の系統関係を反映することを重視した分類体系です。
2026年に公表されたAPG Vでも、単系統群を分類の基本とする考え方が維持されています。そのため、複数の系統をまとめた従来の「双子葉植物」は、APG分類における一つの正式な系統群としては採用されません。
これは「双子葉植物」という言葉が誤りになったという意味ではありません。植物の外部形態を観察・比較する学校教育や、従来の植物図鑑・園芸資料を理解するうえでは現在も使われています。
学術的な系統関係を扱う場合には、「双子葉植物」と「真正双子葉類」を区別する必要があります。
離弁花類・合弁花類との関係
従来の植物分類では、双子葉植物を花弁が互いに離れている離弁花類(りべんかるい)と、花弁がつながっている合弁花類(ごうべんかるい)に分ける分類も使われていました。
現在の系統分類では、この区分を双子葉植物の主要な系統分類としては使用しません。
花弁が離れているか合着しているかという形質は、植物の系統関係と必ずしも一致しないためです。APG分類では、花弁の形だけでなくDNAなどから明らかになった系統関係を基に、目や科の範囲を整理しています。
古い図鑑を利用するときの注意:
「双子葉類―離弁花類―合弁花類」という分類が掲載されていても、その資料が誤っているとは限りません。採用された時代や分類体系が異なります。現在のAPG分類と照合する場合は、そのまま同一視しないようにします。
「広葉植物」と双子葉植物は同義ではない
農業では、イネ科雑草などに対して葉幅の広い植物を「広葉植物」「広葉雑草」と呼ぶことがあります。
広葉植物は葉の形態や農業上の管理区分として用いられる言葉であり、植物系統分類上の「双子葉植物」と完全に一致する用語ではありません。
単子葉植物にも幅の広い葉をもつ種類があり、真正双子葉類にも細長い葉をもつ種類があります。このため、「双子葉植物=広葉植物」とするのは不正確です。
農業で双子葉植物という区分を使うときの注意
双子葉植物という区分は、苗の形態観察、雑草識別、植物の基本構造を理解する際には有用です。
一方、双子葉植物であることだけを根拠として、栽培管理、土壌管理、病害虫防除などを一律に決めることはできません。
例えば、主根が発達する植物が多いからといって、すべての双子葉植物に深耕が必要になるわけではありません。必要な耕深や土壌条件は、作物の種類、品種、作型、土性、排水性、耕盤の有無などによって異なります。
「葉が広いので病害虫に弱い」「双子葉植物は単子葉植物より気温や湿度の変化に弱い」といった一般化もできません。病害虫の感受性や環境適応性は、分類群全体ではなく植物種や品種、栽培条件ごとに判断します。
除草剤についても同様です。「広葉雑草用」「イネ科雑草用」といった性質があっても、双子葉植物かどうかだけで使用可否を判断してはいけません。対象作物、対象雑草、使用時期、使用量など、農薬登録上の適用内容を確認する必要があります。
双子葉植物で誤解されやすい点
- 真正双子葉類は双子葉植物の同意語ではありません。
真正双子葉類は、従来の双子葉植物の大部分を占める単系統群です。 - 広葉植物も同意語ではありません。
広葉植物は主として葉の形態や農業上の管理区分を表す言葉で、系統分類とは一致しません。 - 離弁花類・合弁花類は現在のAPG分類の主要区分ではありません。
花弁が離れているか合着しているかだけでは、植物の系統関係を適切に表せないためです。 - 形態的特徴には例外があります。
子葉、葉脈、根、維管束など複数の特徴を観察し、一つの特徴だけで判断しないことが基本です。 - 分類から栽培・防除方法を直接決めることはできません。
栽培特性や病害虫感受性、農薬の適用は作物や品種ごとに確認します。
関連する資材分類・農業用語
参考資料
- 国立科学博物館「世界最古級の被子植物化石,日本で発見」― 被子植物の分類と進化
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」
- The Angiosperm Phylogeny Group「Large-scale nuclear and plastid phylogenomic analyses inform an updated Angiosperm Phylogeny Group classification: APG V」(2026)
- Royal Botanic Gardens, Kew「APG – classification by consensus」
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