ポリ鉢・プラ鉢とは
ポリ鉢・プラ鉢とは、植物の育苗、鉢物・苗木生産、仮植、流通などに使用するプラスチック製の鉢です。
農業現場で「ポリ鉢」「ポリポット」と呼ばれるものは、一般に薄手で柔軟なプラスチック製ポットを指します。ポリエチレン(PE)などの樹脂から製造され、野菜苗や花苗の生産に広く使用されています。
「プラ鉢」はプラスチック製の鉢全般を指す呼び方です。比較的厚みがあり、形状を保ちやすい硬質鉢を指して使う場合もありますが、ポリ鉢とプラ鉢の名称に、材質や厚さによる統一された境界はありません。
生産者が鉢を選ぶ際は、名称よりも口径、容量、深さ、材質、排水構造、使用する培地、灌水方式、栽培期間などを優先して確認します。
また、薄手のポリポットを出荷・販売に使用する場合も、硬質プラスチック鉢を生産段階から使用する場合もあります。生産用・販売用という区分だけでは適合性を判断できません。
ポリ鉢・プラ鉢の主な種類
標準的なポリポット
薄手で柔軟なプラスチック製ポットです。野菜苗、花苗、苗木などのポット育苗や流通に使用されています。
口径や色の種類が多く、大量の苗を生産する施設では、専用トレーやポット充填機などと組み合わせる場合もあります。
同じ口径でも、メーカーや型式によって高さ、容量、底穴の位置・数が異なります。
ポリポット(黒ポット)
浅型・深型・ロングポット
鉢の深さを変えることで、根が利用できる空間や培地量を調整した製品です。
例えば、苗木や花木を長期間育てる場合には、標準的なポットより深い容器が選ばれることがあります。浅型は草丈の低い鉢物などに使用されます。
深型でも、根量や灌水条件に対して適切な容量でなければ、過湿や乾燥の問題が発生します。
同じ口径でも、鉢の高さが違えば容量は変わります。号数だけでは選定できません。
カド穴・横穴・スリット付きポット
底面や側面に排水穴、切り込み、スリットなどを設けた鉢です。
スリット鉢には、鉢壁に沿って根が回るサークリングを抑える目的で設計された製品があります。側面や鉢底の形状を工夫したものなど、構造はメーカーによって異なります。
スリット鉢
スリットがあっても根詰まりを完全に防げるわけではありません。
また、鉢底穴が多くても、設置面によって穴が塞がれたり、培地の透水性が低かったりすると、根域が過湿になる場合があります。
鉢の構造と合わせて、培地の保水性、灌水量、栽培期間、設置する床面の状態を確認します。
硬質プラスチック鉢
比較的厚みや剛性があり、形状を保ちやすいプラスチック製の鉢です。
鉢花、観葉植物、花木、苗木などの生産から流通・販売まで利用されています。丸鉢・角鉢、深型、意匠性を持たせた製品などがあります。
材質にはポリプロピレン(PP)などが使用され、再生樹脂を利用した製品もあります。
プラ鉢・硬質プラスチック鉢
再利用を予定する場合は、鉢の耐久性と洗浄・消毒のしやすさも選定条件になります。
連結ポット・システムポット
複数のポットを連結したものや、専用トレーと組み合わせて使用する製品です。
大量の苗を生産する場合、土詰め、整列、搬送などの作業を省力化する目的で使用されます。
連結ポット・システムポット
連結ポットには、個別の鉢を分離できる製品や、トレーと一体で取り扱う製品があります。
セルトレイと似た構造でも、鉢の分離方法や株ごとの容量、対応する育苗設備が異なります。
大型ポット・コンテナ
果樹、庭木、花木などの長期栽培には、大容量のプラスチック製ポットやコンテナが使用されます。
大型ポットでは、根域容量に加え、鉢の強度、排水構造、移動方法、転倒の危険性なども確認します。
培地や水を含むと総重量が大きくなるため、搬送や設置方法も含めた選定が必要です。
再生樹脂製ポットと生分解性ポット
環境負荷への配慮から、再生プラスチックを使用した鉢や、樹脂の使用量を抑えたポットも製造されています。
また、生分解性素材を使用した栽培容器もありますが、再生樹脂製ポットと生分解性ポットは別のものです。
再生ポリエチレンや再生ポリプロピレンを使用した鉢は、通常のプラスチック製品と同様に回収・処理を考える必要があります。
生分解性ポットは、原料、分解条件、栽培期間中の強度などが製品によって異なります。土中での分解性や容器ごとの植え付けが可能かどうかは、メーカーの仕様で確認します。
二重鉢・ポットインポット方式との関係
ポリ鉢やプラ鉢は、二重鉢に使用する容器としても利用できます。
二重鉢は、植物を植えた内鉢を一回り大きな外鉢に収める方法です。鉢の間に空気層などを設け、根の周囲の急激な温度変化を和らげる目的で利用される場合があります。
鉢を組み合わせる際は、外鉢の内径と内鉢の外径・高さに加え、排水経路を確認します。
外鉢に水をためたままにしないでください。排水不良は内鉢の過湿や根腐れにつながります。
苗木や果樹の栽培では、鉢を重ねる「ポットインポット方式」も利用されます。東海化成の「TOポットインポット」は、地中設置とポットの取り出しを考慮した製品です。
ポットインポット方式は、根域制限、培地管理、鉢の入れ替えなどにも利用されるため、温度対策を目的とする一般的な二重鉢とは用途を区別します。
ポリ鉢とセルトレイの違い
ポリ鉢とセルトレイは、どちらも苗を育てるための容器です。
ポリ鉢は基本的に1鉢単位で使用し、セルトレイは多数の育苗セルを一体化しています。
| 確認項目 | ポリ鉢 | セルトレイ |
|---|---|---|
| 基本構造 | 独立した鉢が中心 | 多数のセルが一体化 |
| 根域容量 | 鉢の規格によって異なる | セル数とセル容量によって異なる |
| 株間調整 | 独立した鉢は配置変更しやすい | 一体型では株間変更に制約がある |
| 搬送 | カゴトレーなどと組み合わせる場合がある | トレー単位で搬送できる |
| 機械化 | 対応するポット・トレー・機械の組み合わせを確認する | セル規格と機械の適合を確認する |
| 水分管理 | 容量・培地・鉢配置で変わる | 小容量セルでは乾燥が速くなりやすい |
セルトレイで育てた苗をポリポットへ移す鉢上げは、苗の生育段階に応じて根域を拡大する方法の一つです。
作物、育苗期間、作業工程によって適する容器は異なります。容量だけでなく、根鉢の形成状態や定植方法も確認します。
ポリ鉢・プラ鉢の選び方
口径・容量・高さを確認する
園芸用鉢では、3号・4号などの号数が使用されます。一般に1号は口径約3cmが目安で、3号は約9cm、4号は約12cmです。
号数は容量を示すものではありません。同じ号数でも浅型と深型では培地量が異なります。
農業生産では、メーカーが表示する実寸、容量、高さ、底部形状を確認して選びます。
栽培期間と根域を合わせる
小さなポットで長期間育苗すると、根が容器内を高密度に占め、根詰まりが発生することがあります。
反対に、根量に対して容量が過大な場合は、培地の一部が長期間湿ったままになり、水分管理が難しくなることがあります。
作物、苗齢、栽培期間、培地、灌水条件を合わせて判断します。
鉢底穴と設置面を確認する
底穴の数を増やしても、過湿が解消しない場合があります。
例えば、鉢を防草シートや平らな床面へ直接置くと、鉢底の構造によっては排水穴が塞がれることがあります。培地の保水性や灌水量が過大な場合にも過湿が発生します。
排水性は、鉢・培地・灌水・設置面を組み合わせて判断します。
灌水方式との適合を確認する
手灌水、頭上灌水、点滴灌水、底面給水では、鉢に求められる構造が異なります。
底面給水では、培地への吸水経路や鉢底と給水面の接触状態が水分供給に影響します。底穴やスリットの形状だけでなく、培地の吸水性を確認します。
機械・トレー・出荷規格を確認する
ポット充填機や搬送設備を使用する施設では、鉢の寸法や形状の違いが作業効率に影響します。
- 充填機や専用トレーに適合するか
- 搬送時に倒れたり変形したりしないか
- 出荷箱や販売棚の規格に収まるか
- ラベルの取り付け位置が確保できるか
- 作業人数と処理能力に適した容器か
資材単価だけでなく、土詰め、整列、搬送、出荷までの作業費を含めて比較します。
ポリ鉢・プラ鉢で起こりやすい選定ミス
大きな鉢ほど生育によいと考える
大きな鉢は根域を確保できますが、根量に対して培地が多すぎると水分管理が難しくなる場合があります。必要な容量は栽培期間と根量に合わせて選びます。
同じ号数なら同じ容量だと考える
号数は主に口径を示す目安です。高さや底部形状によって容量は異なります。メーカーを変更する際は、実寸と容量を比較します。
スリット鉢なら根詰まりしないと考える
スリット鉢は根のサークリング抑制を目的とした製品がありますが、根域容量には限界があります。長期間栽培する場合は、根量と根鉢の状態を確認します。
硬質鉢なら繰り返し使えると考える
硬質鉢でも材質や厚さ、耐候性によって耐久性は異なります。再使用を前提とする場合は、破損、変形、紫外線劣化、洗浄・消毒への適合を確認します。
再生樹脂製なら土中で分解すると考える
再生樹脂と生分解性素材は異なります。再生プラスチックを使用した製品が、土中で分解するという意味ではありません。
鉢だけを変更すれば根域環境が改善すると考える
根域の水分や温度、酸素供給には、培地、灌水、設置面、日射、栽培密度などが関係します。
過湿や乾燥、根の生育不良が発生している場合は、容器以外の要因も確認します。
ポリ鉢・プラ鉢取り扱いメーカー・代理店
| 製造・発売元 | 製品名・製品群 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 株式会社東海化成 | TOポリポット丸型タイプ | 口径4.0~40.0cmの規格を展開する標準的なポリポット。サイズにより底穴・カド穴の仕様が異なります。 |
| 株式会社東海化成 | TO深鉢 | 標準的なポリポットより深さを確保した製品。花苗や苗木など、必要な根域に応じて選べます。 |
| 株式会社東海化成 | TOカド穴ポット | 底部のカド穴を特徴とするポット。排水や根の伸長方向を考慮した構造で、規格別に寸法・容量・穴数を確認できます。 |
| 株式会社東海化成 | TOポットインポット | 地中設置と鉢の重ね使いを想定した製品。果樹・庭木・切花向けの根域制限栽培や培地管理、鉢の移動に利用されます。 |
| 兼弥産業株式会社 | スリットポットシリーズ | 根のサークリング抑制を目的としたスリット構造。小型から大型、ロング型まで複数の規格があります。 |
| 兼弥産業株式会社 | プラスチック鉢シリーズ | 鉢物生産・園芸向けの硬質プラスチック鉢。丸型・角型・深型など幅広い形状を展開しています。 |
| 日本ポリ鉢販売株式会社 | CSPポット・SSPポット | ラベルの挿し込みを考慮した栽培用ポット。苗の識別や出荷作業でのラベル管理に利用されます。公式製品紹介ページで確認できます。 |
| 日本ポリ鉢販売株式会社 | プレステラシリーズ・硬質ポット | 栽培用の硬質プラスチック鉢などを展開。製品の現行規格はメーカーのデジタルカタログで確認できます。 |
| 中部農材株式会社 | 各種ポット | カラーポット、浅型、横穴、黒丸、深型、ロング、カド穴、スリットタイプなど複数の製品群を掲載しています。 |
| DICプラスチック株式会社 | NPポットシリーズ | ポリプロピレン製の栽培用鉢。スリット型、スクエア型、25~100Lの大型鉢などを展開し、果樹・庭木の苗木育成などに対応します。 |
| 株式会社サンポリ | サンポット | 果樹栽培向け大型ポット。根域を容器で制限する栽培や、培地を区分した栽培に利用できる製品です。 |
| 有限会社ナカハシ | 鉢物生産者向けプラスチック鉢 | 鉢物生産者向けの各種プラスチック鉢を製造販売。公式サイトに製品カタログを掲載していますが、掲載カタログの年次は2019年のため現行規格は要確認です。 |
| 大和プラスチック株式会社 | サステナポット | 再生ポリプロピレンに籾殻由来原料を配合した鉢。鉢物生産・園芸向けの関連製品として掲載。業務用の大量生産設備への適合は個別確認が必要です。 |
ポリ鉢・プラ鉢の参考動画
プラスチック製のスリット鉢が製造される工程を確認する際には、メーカーによる次の動画が参考になります。
カネヤ現場チャンネル 第2回 スリット鉢製造工場に潜入!
兼弥産業株式会社・カネヤ現場チャンネル
鉢の製造工程やメーカーの取り組みを紹介する動画です。製品の栽培性能を比較・検証する試験動画ではありません。
関連する資材分類・農業用語
参考資料
- 株式会社東海化成:ポリポット製品一覧
- 兼弥産業株式会社:スリットポット
- 日本ポリ鉢販売株式会社:製品情報・デジタルカタログ
- DICプラスチック株式会社:NPポットシリーズ
- 株式会社東海化成:TOポットインポット製品資料(PDF)
まとめ
ポリ鉢・プラ鉢は、野菜苗や花苗の育苗から鉢物・苗木生産、流通・販売まで使用される栽培容器です。
標準ポリポット、深型ポット、スリット鉢、硬質鉢、大型コンテナなどがあり、製品ごとに材質、容量、排水構造、耐久性が異なります。
選定では、作物と栽培期間、培地、灌水方式、トレーや機械との適合を確認します。
鉢の価格や形状だけで決めず、根域環境と生産工程に合う製品を選びます。