
密植(みっしょく)
密植(みっしょく)とは、農業において作物を通常よりも狭い間隔で植えることで、単位面積あたりの栽植(さいしょく)本数を多くし、生産効率や収穫量を高めることを目指す栽培技術です。
特に、苗床(なえどこ)での苗づくりや、収益性を重視した野菜類の露地・施設栽培、果樹類のわい化(わいか)栽培などに応用されます。
この方法は、空間の有効利用や地表の早期被覆による雑草抑制、管理コストの軽減といった複数の利点を持つ一方で、病害虫の多発や生育不良といった課題も抱えます。
特に、枝豆栽培やオクラ、トマトなどの野菜類、わい化栽培を行う果樹類(例:イチジク、リンゴ)などでは、目的に応じた密植設計が求められます。
同意語としては「狭植(きょうしょく)」「高密度栽植」などがあります。
密植の概要
密植は、作物の種類や栽培目的、気象条件、栽培地の土壌環境によって適用の是非が左右される手法です。
たとえば、雑草の生育を抑える目的では、葉の展開が早い作物や品種を選び、密植で地表を早期に被覆することで除草労力を軽減できます。
逆に、通気性や光条件が悪くなると病害が広がりやすくなるため、密植度合いの調整が重要になります。
密植の役割
- 収量の最大化
限られた土地でも単収を増やすことで、経済的利益を高める。 - 雑草抑制
密植で地面を早く覆うことで、日光を遮断し雑草の発芽・成長を抑える。 - 苗床効率の向上
限られた苗床面積でより多くの苗を育てることができる。
密植の課題と対策
- 病害虫の発生リスク
密植によって風通しが悪くなり、湿度が高く保たれることで、灰色かび病やうどんこ病、アブラムシなどの害虫が発生しやすくなります。
対策:品種選定で病気に強いものを選ぶ、適度な間引きや摘葉(てきよう)による通気性確保、防虫ネットや殺菌剤の適切な使用で対応します。 - 生育のばらつき
光や栄養が均等に行き渡らず、隣接する株と競合するために一部の株が生育不良になることがあります。
対策:初期段階での肥培管理と光条件の調整、均一な苗選び、苗間の微調整によって全体の生育を均等に保つ工夫が重要です。 - 作業性の低下
密植状態では管理作業(施肥、病害虫防除、収穫など)が困難になることがあります。
対策:作業導線を確保する配置、作業台車や支柱栽培の導入、わい化による樹高制御などで改善します。