ベと病(べとびょう)

ベと病(べとびょう)
べと病(べとびょう)は葉に症状が出る感染性病害で、生理障害ではありません。うどんこ病とは病原や発生条件が異なります。

べと病(べとびょう)の概要

べと病(べとびょう)とは、主に葉に症状が現れる感染性の病害で、肥料不足や水切れなどの生理障害ではありません。また、外観上は同じ「カビ」の病害に見えても、うどんこ病(粉状の菌そうが葉の表面に出やすい病害)とは病原の分類や発生条件が異なります。

べと病の病原は卵菌類(らんきんるい)に分類され、一般的な糸状菌病害とは性質が異なります。多湿条件が重なった場合に発生しやすく、葉に淡黄〜黄緑の病斑が現れた後、葉裏に灰紫色〜灰白色のかび状の胞子(ほうし)が確認できることが診断上の重要点です。

べと病は作物ごとに原因となる病原が異なることが多く、「べと病だから同じ対策でよい」と一般化すると、誤った防除判断や対応の遅れにつながります。なお、英語ではDowny mildew(ダウニー・ミルデュー)と呼ばれます。

べと病(べとびょう)の詳細説明

べと病は、主に葉に病斑(びょうはん)を形成して光合成(こうごうせい)能力を低下させ、その結果として生育停滞、収量低下、品質低下を引き起こす病害です。病原は作物群ごとに異なりますが、べと病は原則として卵菌類(らんきんるい)によって引き起こされる感染性病害であり、一般的な糸状菌(しじょうきん)病害とは分類・性質が異なります。そのため、見た目が似ていても、うどんこ病や灰色かび病と同じ前提で判断すると、対応を誤るおそれがあります。

発生の起点としては、圃場(ほじょう)内に残った罹病残渣(りびょうざんさ)や周辺の罹病株が主な感染源となり、そこから風雨や作業を介して胞子が広がります。また、苗の持ち込みによって病原が圃場に侵入する場合もあります。これらに、葉が濡れる時間が長い、夜間の湿度が高い、換気不足といった条件が重なると、発病とまん延が急速に進みやすくなります。

発生条件
多湿環境が最大の誘因で、葉のぬれが長時間続くこと、夜温差による結露(けつろ)、密植(みっしょく)で風通しが悪い状態などが重なると発生が助長されます。適温域は作物や病原によって幅がありますが、一般に涼しい〜温和な温度帯で湿度が高い条件下で問題化しやすく、施設栽培では夜間から早朝にかけての結露と換気不足が発生の引き金となります。

初期症状
葉表に淡黄〜黄緑色の不整形(ふせいけい)の斑点が現れ、作物によっては葉脈(ようみゃく)に区切られて角張った病斑となります。若い葉から広がる場合と、下葉から徐々に進行する場合があり、初期段階では栄養不足や生理的な黄化と誤認されやすい点に注意が必要です。

進行症状と見落としやすい兆候
湿り気のある条件下では、葉裏に灰紫色〜灰白色のかび状の胞子が形成され、早朝などに確認しやすくなります。進行すると病斑部は褐変(かっぺん)〜枯死し、葉の機能が大きく低下します。タマネギなどでは葉身(ようしん)が弱り、倒伏(とうふく)や球(きゅう)の肥大不良につながることがあります。なお、乾燥した時間帯に葉裏を確認して胞子が見えない場合でも、べと病を否定できるわけではなく、観察条件を変えて判断する必要があります。

べと病(べとびょう)が圃場で引き起こす影響

べと病は葉の健全面積を減らし、光合成量を低下させることで、生育遅延、着果(ちゃっか)や肥大の停滞、収量低下、外観品質の低下を引き起こします。特に発生時期が早いほど影響は大きく、生育初期に広がると株全体の立ち上がりが悪くなります。

作型の後半で葉が失われた場合でも、収穫量だけでなく糖度(とうど)や玉太り(たまぶとり)など品質要素に影響が残ることがあります。葉の枯れ込みが進むと防除による回復余地が小さくなり、作型の短縮、早仕舞い、更新といった判断が必要になる場合があります。

キュウリのべと病キュウリのべと病

べと病(べとびょう)の診断と判断基準

  • 経過観察でよい状態
    葉表の小斑点が少数で増加が鈍く、葉裏の胞子が確認できず、かつ結露・過湿条件が速やかに改善できている状態。ただし、べと病は環境が再び悪化すると急速に進行することがあるため、観察間隔を空けすぎないことが重要です。
  • 防除・対策が必要な状態
    病斑が増加している、同一株内で病斑面積が拡大している、葉裏に胞子が確認できる、隣接株へ広がり始めている状態。この段階では環境改善のみでは進行を抑えきれない場合が多く、対応の遅れが被害拡大につながります。
  • 回復困難・更新判断が必要な状態
    下葉から中位葉にかけて広範囲が枯死し、上位葉まで病斑が連続している状態で、株全体の同化能力が維持できない場合。防除を行っても収量・品質の回復が見込みにくく、作り直しや更新を含めた判断が現実的になります。

べと病(べとびょう)の防除対策

  • 耕種的防除(作期・管理による回避)
    換気によって夜間〜早朝の過湿を抑え、結露を切ることが基本となります。密植を避け、整枝(せいし)・摘葉(てきよう)によって風の通り道を確保します。罹病葉は早めに除去し、必ず圃場外へ持ち出して処理します(圃場内への放置は二次感染源となります)。連作や作型の重なりを避け、周辺の罹病株や作物残渣の管理を徹底することが、発生抑制の土台となります。
  • 物理的・環境的防除
    施設栽培では、夜間の湿度が上がり切る前に換気や循環(じゅんかん)を行い、葉のぬれ時間を短縮します。灌水(かんすい)は葉を濡らしにくい方法や時間帯を選びます。雨よけや被覆によって葉のぬれを減らす方法もありますが、作物や施設条件によって適否が異なるため、無条件に適用できる対策ではありません。
  • 化学的防除(適用条件・限界を必ず明示)
    登録のある薬剤を、作物名・病害名・使用時期・使用回数・収穫前日数などの条件を厳守して使用します。べと病は進行が速い場合があり、病斑が広がった後では散布しても進行を止めきれないことがあります。耐性(たいせい)発達を防ぐため、作用機作の偏りを避けたローテーションが必要です。なお、薬剤は湿度や結露といった発生環境そのものを改善することはできず、環境管理と組み合わせなければ再発を防げません。葉の枯死が進んだ状態では、散布を重ねても元の生育や品質に戻らない場合があります。

べと病(べとびょう)に関する留意点と課題

  • 典型的な誤判断①:黄化=肥料不足と決め打ちし、追肥だけで済ませる
    なぜ誤りか:べと病の初期は葉表の淡黄斑として始まり、栄養欠乏と見分けにくい場合がありますが、感染が進むと短期間で病斑が拡大し、追肥では進行を止められません。
    対処方法:葉裏の胞子の有無、病斑の拡大速度、葉脈で区切られる角張った病斑の出方、圃場内での分布(点在か、風下方向に広がるか)を判断軸とします。
  • 典型的な誤判断②:うどんこ病と同じ感覚で考え、乾いた昼間の観察だけで否定する
    なぜ誤りか:べと病の胞子は湿り気のある時間帯に確認しやすく、乾燥した時間帯だけの観察では見逃されやすくなります。見えないことを根拠に否定すると、初動が遅れます。
    対処方法:早朝や灌水後など、葉が軽く湿る時間帯も含めて観察し、葉裏確認を診断手順に組み込みます。
  • 典型的な誤判断③:べと病は「カビ」だから同じ薬で何でも効くと一般化する
    なぜ誤りか:べと病は作物ごとに病原が異なり、薬剤の登録範囲や効果も異なります。一般化した薬剤選定は、効果不足や耐性発達、適用外使用につながります。
    対処方法:必ず作物名と病害名で登録を確認し、作用機作の偏りを避け、結露・換気・栽植密度といった環境対策を併用します。
  • 典型的な誤判断④:罹病葉を取れば終わりとして圃場内に放置する
    なぜ誤りか:罹病葉は胞子源となり、圃場内に残すほど再感染を招きやすくなります。
    対処方法:罹病葉は速やかに回収し、圃場外で処理します。作業動線や手袋・器具の扱いも整理し、感染源の持ち回りを防ぎます。
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