T/R率とは
T/R率(てぃーあーるりつ)とは、植物の地上部(Top)と根(Root)の重量の比を表す指標です。「T/R比」「地上部/地下部比」「shoot/root ratio」などと表記されることもあります。
植物がつくった乾物を地上部と根へどのように配分しているかを比較する際に用いられ、植物生理の研究や育苗試験、品種・台木の比較、施肥・水分管理などの試験で利用されます。
多くの試験では、地上部と根を乾燥させて測定した乾物重を用い、次のように求めます。
T/R率(T/R比)= 地上部乾物重 ÷ 根乾物重
例えば、地上部乾物重が200g、根乾物重が100gであれば、T/R率は2.0です。これは「根の乾物重1に対して地上部の乾物重が2」という関係を示します。
T/R率は通常、百分率として表す指標ではありません。
「率」という名称からパーセント表示と誤解されることがありますが、研究資料では2.0、3.0などの比として示されるのが一般的です。資料によって測定方法や表記方法が異なる場合があるため、データを比較するときは算出方法を確認する必要があります。
T/R率の測定方法
T/R率を正確に求めるには、地上部と根の重量を同じ基準で測定します。研究や育苗試験では、一般に次のような手順が用いられます。
- 植物体を地上部と根に分ける
茎葉などの地上部と根を分離します。作物によって地下茎、塊茎、球根などを持つ場合があるため、どの器官を地上部・根として扱うかをあらかじめ定めます。 - 根から土や培地を除去する
根を洗浄するなどして付着した土壌や培地を取り除きます。細根が失われると根重が過小評価されるため、採取方法をそろえる必要があります。 - 乾燥後に重量を測定する
地上部と根を乾燥し、それぞれの乾物重を測定します。 - T/R率を計算する
地上部乾物重を根乾物重で割ります。
生体重を用いた調査もありますが、水分含量の違いによる影響を受けるため、異なる試験結果を比較するときは乾物重か生体重かを必ず確認します。
T/R率から分かること
T/R率を見ると、植物体の中で地上部と根のどちらに相対的に多くの乾物が存在しているかを把握できます。
T/R率が高い場合は、根に対して地上部の重量が相対的に大きい状態です。地上部の生育が旺盛になった場合だけでなく、根域制限や根の生育抑制などによって根重が小さくなった場合にも数値は高くなります。
T/R率が低い場合は、地上部に対して根の重量が相対的に大きい状態です。根の発達が良好な場合だけでなく、地上部の生育が抑制された結果として低くなる場合もあります。
したがって、T/R率の大小だけから「根が健全」「生育が悪い」などと判断することはできません。地上部乾物重と根乾物重の実数、生育段階、栽培条件などを合わせて評価します。
T/R率が利用される場面
T/R率は、植物の乾物分配や地上部と根系の関係を比較する研究指標として利用されています。
- 育苗試験:苗の地上部と根の発達状態を比較する。
- 品種・台木の比較:品種や台木による地上部と根への乾物分配の違いを調べる。
- 施肥試験:養分条件の違いによる地上部・根の生育反応を比較する。
- 水分管理試験:水分条件や水ストレスによる乾物分配の変化を調べる。
- 根域環境の研究:根域温度、根域容量、培地などの条件による影響を比較する。
例えば、カンキツ台木の研究では、T/R率と樹勢や根の水透過性との関係が調査されています。また、林業用コンテナ苗では、植栽時のT/R比と植栽後の成長との関係を調べた事例があります。
T/R率を見るときの注意点
T/R率には、すべての植物に共通する「適正値」はありません。
作物・樹種、品種、生育段階、栽培方式、根域容量、施肥条件、水分条件などによって値は変化します。ある作物で得られたT/R率を、別の作物の良否判定基準として使用することはできません。
特に注意したいのが、「T/R率が低ければ根張りが良く、良い植物である」という判断です。T/R率が低くても、単に地上部の生育が抑えられている可能性があります。逆にT/R率が高くても、地上部の生育が旺盛なために高くなっている場合があります。
評価するときは、T/R率だけでなく、地上部乾物重、根乾物重、根の分布や形態、根張り、葉面積、生育量などを併せて確認します。
また、圃場で植物を掘り取る場合は、細い根を完全に回収することが難しくなります。根が失われると測定した根重が実際より小さくなり、T/R率が実際より高く算出されるため、異なる調査結果を比較するときには採根方法にも注意が必要です。
「地下部」と「根」は同じとは限らない
T/Rの「R」はRoot、つまり根を意味します。植物体のうち土の中に存在する部分をすべて機械的に「R」とするわけではありません。
ジャガイモの塊茎、ショウガなどの地下茎、タマネギの鱗茎など、地下に形成されても植物学的には根ではない器官があります。また、試験目的によって果実や貯蔵器官をどちらに含めるかが異なることもあります。
研究結果や試験データを読む場合は、地上部と根をどの範囲で区分したのかを確認する必要があります。
T/R率と栽培管理
施肥、灌水、根域温度、根域容量などの条件を変えると、地上部と根の生育量や乾物分配が変化することがあります。そのため、T/R率は処理区間の違いを比較する試験指標として利用できます。
ただし、T/R率の変化だけを根拠に「肥料が多すぎる」「水が多すぎる」などと原因を特定することはできません。同じT/R率でも、地上部が増加した場合と根が減少した場合では意味が異なるためです。
施設園芸の実際の栽培管理では、T/R率だけで判断するのではなく、地上部の生育、根の状態、培地水分、EC、根域温度など、その作物と栽培方式に応じた情報を組み合わせて判断します。
関連する資材分類・農業用語
参考資料
- 林野庁「令和3年度 コンテナ苗生産技術等標準化に向けた調査委託事業 報告書 第4章 生産方法と苗木の品質」
- 農研機構「根の水透過係数とTR率によるカンキツ台木の早期選抜法」
- 日本森林学会誌「スギ挿し木コンテナ苗と裸苗の植栽後2年間の地上部成長と根系発達」
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